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最終章

創造された世界

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 何も無い真っ白な空間が広がっている。 
 何処まで行っても白く、どこを見ても何も無い。 
 虚無の空間だ。 
 其処にあるのは己のみ。何をするでも無い、ただ在るだけだ。 
 
 最初に生み出したのは、陰と陽。 
 バランスを取る為には切り離す事の出来ない二つだ。 
 陰の性質をもつ魔族を、陽の性質をもつ精霊を、世界に解き放った。 
 魔族には様々な種を、精霊には四つの元素を用いた。 
 何もなかった世界に色が生まれた。 
 
 しかしそれだけだ。 
 陰と陽が相見える事は無く、何の変化も無いまま時だけが流れていく。 
 
 
 別世界から人なるものを持ってきた。 
 正しくは似せて生み出したのだ。複雑で脆いそれらの性質上、魔族よりも精霊の方に関わりやすいよう調整を加えながら。 
 
 面白いもので、魔族とも精霊とも違うそれは、一人一人に力が無い代わりに知恵があった。知恵を出し合い僅かな力を合わせる事で、徐々に陰と陽とは違う大きな力を持つようになっていった。 
 
 急激に数を増した人は、人同士で徒党を組み群れごとに生活するようになっていく。 
 数が増えると、より力と知恵のあるものが群れのリーダーとして君臨するようになっていった。 
 やがて群れは村となり、街へと発展し、人が人を統治するようになると国が生まれた。 
 
 
 が、最初に精霊と関わらせたのは間違いだったかもしれない。 
 
 
 時が経つと、人の中に強い魔力をもつものが生まれるようになったのだ。 
 より強い力を求めた人は、精霊と契約を結ぶ事でその力を行使するようになっていった。 
 精霊の頭として四聖獣を置き、彼らに精霊の管理をさせたが、時は既に遅かった。 
 
 やがて人同士で争いが起こるようになる。 
 より良い土地を求めて、より強い力を求めて、争いはやがて精霊だけでなく魔族をも巻き込んで大きく大きくなっていった。 
 
 
 人と精霊の力が大きく強くなれば、陰の力が弱くなる。 
 世界のバランスが崩れてしまう。 
 するとそれを修正するかのように、今度は魔族の中に特に力の強いものが生まれるようになった。 
 魔族の力が大きくなれば、陽の力が弱くなる。 
 世界のバランスが崩れてしまう。 
 それを繰り返すようになっていったのだ。 
 
 長い長い年月をかけてそんなシーソーゲームを繰り返すうちに、陰の器と陽の器はいっぱいになっていく。 
 
 しかしそんな均衡は陰の器が決壊する形で終わりを告げた。 
 ある時、魔族の中に突然変異種が生まれたのだ。 
 何よりも強い力を持って生まれたそれは、生まれた瞬間に王となる。 
 王の誕生に魔族が一気に活性化。対抗しようとした人と精霊がことごとく粛清されていった。 
 
 決壊した陰の力が、器ごと陽を呑み込もうとしたのだ。 
 
 
 
 このままでは全てが失われてしまう。 
 世界が再び無に帰り、長い時間をかけて作り上げてきたものが壊れてしまう。 
 
 苦渋の決断で人型を模した自らの一部を世界に解き放った。 
 
 四属性全ての精霊を駆使し、強大な陰の力を打ち消さんとするそれを、人々は勇者と呼んだ。 
 魔族の王の力を相殺する為だけに作られたそれは、魔王と共に力を失い朽ちていく。 
 魔王と勇者が消え、強大な力が相殺されると世界は元の姿に戻っていった。 
 
 
 しかしこれは始まりに過ぎない。 
 あまりにも長く悲しい無意味な理不尽の始まりに過ぎなかったのだ。
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