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第1章

3話―ご飯が……不味くて耐えられません!!

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 私はどうしようか迷った挙げ句、全てを打ち明けることにした。

 日本という国から来たこと、そこがこことは違う別の世界であること、死んでしまっているためにもう戻る事が出来ないということ、女神様に会い彼女がここへ転生させてくれたこと等、包み隠さず話したのだ。
 もし、信じて貰えなくて、頭のおかしな奴だと思われたらどうしようかと思ったが、アルクさんは驚く程すんなり受け入れてくれた。
 どうやら、私から不思議な魔力を感じるらしく、只者でないと思っていたのだそうだ。
 そして、更に驚く事に行くところが無いならここに居ればいいと言ってくれた。

「いいんですか?」

 そう言った私の顔がとても不安そうだったらしく、アルクさんは笑いながら頭をポンポンしてくれた。

「かまわないよ。これもきっと何かの縁だ。部屋はたくさんあるんだし、えみさえ良ければニホンの話を聞かせて欲しい。ただ、上には報告させてもらうよ」

 なんと、アルクさんはお城に勤める騎士だと言うのだ。レンくんもそこで騎士見習いの修行中だと言う。
 アルクさんは今、長期の休暇中で実家へ帰省しており、レンくんの身元引受人であったために一緒に帰ってきているのだそうだ。
 イケメンは仕事までイケメンだ。
 勝手に騎士の姿を妄想してまた一人悶えるのであった。

 当分の衣食住のうち、衣と住は確保した。
 だが、最大の問題点は食だった。
 よりによって食!!私が生きていく上で最も大切にしているものだ!
 部屋の扉がノックされ、メイドの少女、メアリがやってくる。

「昼食の準備が出来ました」

 来た……
 このお屋敷に来て最初に食べたお粥のような食事。病人食かと思ったらどっこい、まさかの主食でした。
 朝昼晩と全てにおいてもれなく登場し、しかも美味しくない。
 食べられるのだが、まぁ味が無い。何をどう作ればこうなるのか、教えて欲しいくらい。その他にメインやサラダが出てくるのだが、どれもこれも美味しくない。食べられるんだよ?  でも美味しくない!!
 流石に耐えきれなくなった私は、アルクさんに直接訴えた。

「今晩の夕食を、私に作らせて貰えませんか?」

 アルクさんは初め困った顔をしていた。
 しかし、私のいた国のご飯がとてつもなく美味しかったので、お世話になっているお礼も込めてご馳走したいと力説すると、わかったと了承してくれた。
 あのお粥もどきを食べなくていいと思った途端に心がウキウキする。そして何を食べようかとあれこれ考える。
 その様子が面白かったようで、アルクさんに今までの顔が嘘みたいに楽しそうだと笑われてしまった。
 アルクさん曰く、私は表情に全て出ているらしく、百面相は見ていて飽きないのだそう。
 見てて飽きないだなんて、赤ちゃんかペットくらいでしょう?
 私はペットのような感覚なのか?
 そう思ったが、深く考える事を放棄して、さっそくメアリにキッチンへ連れて行って貰った。
 アルクさんは休暇中とはいえ、仕事があるらしく、私の夕食を楽しみにしているからと笑顔で送り出してくれた。
 未だにあの殺人級の笑顔には慣れていない。

 メアリと一緒に厨房へ行くと、そこにはふくよかな女性と三人のコックが待っていた。
 メアリが「ハンナ様」と驚きの声をあげる。
 ハンナさんは人の良さそうな笑みを浮かべてこちらへ歩み寄ると、握手を交わす。

「メイド長のハンナです。アルク様よりえみを手伝うようにと言われて待っていたのよ」

 そう言うと、今夜使う筈だった食材と料理の説明をしてくれた。
 メニューは、いつものお粥もどきと野菜スープ、それから肉を焼いてメインにするという話だった。
 お粥もどきに使われている穀物は、日本でいうところの米のようなものだと思った。
 大きさは知っている米より少し大粒だが、見た目はそっくりだ。
 これはリゾットにしようと思っていた。お粥もどきよりは随分ましな筈だ。
 野菜スープは味付けを変えればいいとして、問題はメインの肉料理だ。
 生肉の塊は、見ただけでは何の肉でどの部位なのかなんてさっぱりわからない。わからないなら味見しかない。
 そう考えて、ナイフを借り少量を切り取り、火を通して食べてみる。
 なんとなく豚肉に近いように感じた。しかし、筋があり、焼くと固くて食べにくい。
 それならと思いついた調理をするべく、器具を探して厨房内を歩き回るのだった。
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