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第二章
ジュディのお相手
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バーベンス公爵達の裁判が全て終わり、罪人達はそれぞれの刑罰を受ける為に城から移送された。長年に渡り我が国で栄えたバーベンス公爵家は取り潰しとなり、弟のバハム伯爵家も同様取り潰された上に、バハム伯爵は城の北側にある幽閉塔へと幽閉されたらしい。バーベンス公爵一族は炭鉱の町へと送り込まれて、そこで一生労働を強いられるそうだ。
また、バーベンス公爵に賛同して加担した貴族達も家の取り潰しは免れたものの降爵処分となった。だがキューバレー伯爵とワードナ―伯爵は公爵と一緒になって密輸を行っていた事も判明し、家の取り潰しだけでなく一族全員が領地を追われ、処罰を受ける事となった。
国一番大きかったバーベンス商会はそのままダッペラー商会へと統合吸収され、ダッペラー商会が国一番の商会へと成り上がった。それに伴い今回の事件の協力者でもあったダッペラー侯爵家が陞爵となり、新たな公爵家の一つとなる事が決定したらしい。順位としては公爵家の中では最下位となるが、それでも大きな飛躍だろう。
立て続けに国を揺るがす様な事件が起き国民達にも不安と動揺が走ったが、それも最近は徐々に落ち着きを取り戻して来ている様子だ。
そんな中、あたし達学園の生徒達は別の事でソワソワと浮足立つ日々を送っていた。もうすぐ上級生である三年生の生徒達が卒業式を迎えるのだ。卒業式の当日は式の後に夕方から卒業パーティが開催される。主役の三年生は勿論だが、下級生達が浮足立つのはパーティの同伴者として意中の相手からのお誘いがあるかもしれないからだった。特に婚約者の居ない生徒達は誰か同伴者を見つけなくてはならない為、誘う方も誘われるかもしれない方も落ち着かないのだった。
「お願いしますっ!!」
放課後になり、あたし達は馬車止めへと続く広い外廊下を歩いていた。その途中、一人の男性がジュディへとパーティへの同伴を願い出て来たのだ。目の前で頭を下げている彼は確かアムッサ伯爵家の四男だったかしら。タクトお兄様と時々一緒に居るのを見掛ける事があり、卒業後は近衛騎士団への所属が決まったと噂を聞いている。
「…………」
ジュデイは無言のまま相手を凝視している。侯爵家の令嬢に伯爵家の令息が申し込むのは勇気の要る事だろう。しかもイーグル侯爵家は筆頭侯爵家だ。どう返答するのだろう……と様子を見ているとジュディは抱えていた鞄を彼の方へ差し出した。
「……持って下さる? 詳しいお話は別の場所でお聞き致しますわ」
思わずロメリアンヌと顔を見合わせる。実は今迄も幾人もの殿方からお誘いされていたジュディ。断るなら即その場で断るジュディが「話を聞く」と言うのなら、それは即ちOKなのだろう。心なしかジュディの頬が少し赤らんで見える。
「も、勿論!!」
慌ててジュディから鞄を受け取るアムッサ伯爵令息。
「えっと……という訳ですので、ここで失礼致しますわね」
「ええ、ごきげんようジュディ」
「また明日ね」
あたし達へ軽く頭を下げたアムッサ伯爵令息がジュディを連れて廊下を引き返して行く姿を見送る。
「ティアナ様! あのジュデイがとうとう……」
「満更でもなさそうでしたものねジュディも」
大切な親友の一人の初めての恋バナが浮上して自分の事の事の様にドキドキしてはしゃいでしまうあたし達。明日のジュディからの報告がとても楽しみだ。
それぞれ馬車に乗り込み学園を後にし、自宅への道中はもっぱらジュディとさっきの彼との恋の行方をアレコレと勝手に妄想する。馴れ初めはどんな風だったのだろう。見た感じ初対面ではなさそうだったわ、とか。色々と思考を巡らせていると、ふとあたしも殿下に逢いたくなってしまった。
「やだわ、今朝もお昼もお会いしたのに……」
卒業前で生徒会の引継ぎなどもあり多忙な殿下だが、それでもあたしとの時間を作ってくださっている。王太子としての政務もあり、さすがに家まで来られる頻度は減ったがあたしにすら考えられない程忙しい筈なのに。
凄く大切にされていると分かっている。なのに、もっと、もっとお会いしたい。もっと一緒に居たいと思ってしまうなんて本当に我儘だな……と自分を叱責する。それなのにお慕いする心は止まらなくて胸が苦しくなる。
「殿下……」
素直に寂しいと言ったら困るだろうか。きっと困るだろうな、そして彼に余計な負担を掛けてしまうだろうな。あたしも王太子妃となるのだから、こんな事で迷惑を掛けてはいけないよね。婚姻したら一緒に居られる時間は増えるのだろうから今は我慢しなきゃだわ。
そう決心してあたしは自分の気持ちは心の奥へとしまい込んだ。
また、バーベンス公爵に賛同して加担した貴族達も家の取り潰しは免れたものの降爵処分となった。だがキューバレー伯爵とワードナ―伯爵は公爵と一緒になって密輸を行っていた事も判明し、家の取り潰しだけでなく一族全員が領地を追われ、処罰を受ける事となった。
国一番大きかったバーベンス商会はそのままダッペラー商会へと統合吸収され、ダッペラー商会が国一番の商会へと成り上がった。それに伴い今回の事件の協力者でもあったダッペラー侯爵家が陞爵となり、新たな公爵家の一つとなる事が決定したらしい。順位としては公爵家の中では最下位となるが、それでも大きな飛躍だろう。
立て続けに国を揺るがす様な事件が起き国民達にも不安と動揺が走ったが、それも最近は徐々に落ち着きを取り戻して来ている様子だ。
そんな中、あたし達学園の生徒達は別の事でソワソワと浮足立つ日々を送っていた。もうすぐ上級生である三年生の生徒達が卒業式を迎えるのだ。卒業式の当日は式の後に夕方から卒業パーティが開催される。主役の三年生は勿論だが、下級生達が浮足立つのはパーティの同伴者として意中の相手からのお誘いがあるかもしれないからだった。特に婚約者の居ない生徒達は誰か同伴者を見つけなくてはならない為、誘う方も誘われるかもしれない方も落ち着かないのだった。
「お願いしますっ!!」
放課後になり、あたし達は馬車止めへと続く広い外廊下を歩いていた。その途中、一人の男性がジュディへとパーティへの同伴を願い出て来たのだ。目の前で頭を下げている彼は確かアムッサ伯爵家の四男だったかしら。タクトお兄様と時々一緒に居るのを見掛ける事があり、卒業後は近衛騎士団への所属が決まったと噂を聞いている。
「…………」
ジュデイは無言のまま相手を凝視している。侯爵家の令嬢に伯爵家の令息が申し込むのは勇気の要る事だろう。しかもイーグル侯爵家は筆頭侯爵家だ。どう返答するのだろう……と様子を見ているとジュディは抱えていた鞄を彼の方へ差し出した。
「……持って下さる? 詳しいお話は別の場所でお聞き致しますわ」
思わずロメリアンヌと顔を見合わせる。実は今迄も幾人もの殿方からお誘いされていたジュディ。断るなら即その場で断るジュディが「話を聞く」と言うのなら、それは即ちOKなのだろう。心なしかジュディの頬が少し赤らんで見える。
「も、勿論!!」
慌ててジュディから鞄を受け取るアムッサ伯爵令息。
「えっと……という訳ですので、ここで失礼致しますわね」
「ええ、ごきげんようジュディ」
「また明日ね」
あたし達へ軽く頭を下げたアムッサ伯爵令息がジュディを連れて廊下を引き返して行く姿を見送る。
「ティアナ様! あのジュデイがとうとう……」
「満更でもなさそうでしたものねジュディも」
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それぞれ馬車に乗り込み学園を後にし、自宅への道中はもっぱらジュディとさっきの彼との恋の行方をアレコレと勝手に妄想する。馴れ初めはどんな風だったのだろう。見た感じ初対面ではなさそうだったわ、とか。色々と思考を巡らせていると、ふとあたしも殿下に逢いたくなってしまった。
「やだわ、今朝もお昼もお会いしたのに……」
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凄く大切にされていると分かっている。なのに、もっと、もっとお会いしたい。もっと一緒に居たいと思ってしまうなんて本当に我儘だな……と自分を叱責する。それなのにお慕いする心は止まらなくて胸が苦しくなる。
「殿下……」
素直に寂しいと言ったら困るだろうか。きっと困るだろうな、そして彼に余計な負担を掛けてしまうだろうな。あたしも王太子妃となるのだから、こんな事で迷惑を掛けてはいけないよね。婚姻したら一緒に居られる時間は増えるのだろうから今は我慢しなきゃだわ。
そう決心してあたしは自分の気持ちは心の奥へとしまい込んだ。
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