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第二章
令嬢たちのたわいもないお喋り
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「エスメイジー王女殿下のあの態度。驚きましたわね、ティアナ様」
午後の授業を終えて、あたしは友人の公爵令嬢であるロメリアンヌ・エマーソンの邸へとお邪魔していた。去年まで続いていた王太子妃教育も無事に終わり、最近はこうして放課後を友人と過ごしたりする時間が持てるようになった。時には王都の街へ寄り道をして流行のスイーツを食べたり、買い物をしたり。
今日はロメリアンヌがお薦めの恋愛小説があるからと、学園帰りにそのまま彼女の邸へ寄り道だ。夕食も一緒に……とのお誘いを受けているので、こうしてゆっくりと談笑している。もう一人の仲良しの侯爵令嬢であるジュディ・イーグルも一緒だ。
今日の話題は昼間の食堂での出来事だ。あの騒動があった時、席は離れてはいたものの二人も食堂に居た。
「他国とはいえ、あのような振る舞いをされる方が王族だなんて……信じられませんわ」
ジュディも呆れたような顔をしながら溜息をついた。あたしは苦笑いしながら、一口サイズに切られたフロランタンを口へと運んだ。キャラメルとアーモンドの香ばしい味が口の中に広がる。
「それにしてもティアナ様も苦労が絶えませんわね、ミンスロッティ様の次はエスメイジー王女殿下だなんて」
「本当にね。アルスト殿下はおモテになられますものね……」
「ええ……殿下はお顔がとても良いですし……」
アルスト殿下を慕っているご令嬢は、エスメイジー王女だけではない。実際に行動には移されはしないけど、多くの女性が殿下を慕っておられる。幼少の頃よりあたしという婚約者が居るので、憧れの眼差しを向けられている方が殆どだ。夜会などでは、あたしとのファーストダンスを終えられると殿下の周りにはダンスを強請るご令嬢が取り囲む。王子として義務的にそのダンスは受けられるけれど、あの王子スマイルに皆倒れそうになられている。
三人で殿下の王子スマイルを思い浮かべ、ほぅ……と甘い感嘆の息を吐いた。
「素敵ですわ~」
蕩けたような顔で息を吐くジュディ。
「あの微笑だけでも大変ですのに、ティアナ様はもっと凄い笑顔を受けられますよね。わたしには絶対無理ですわ~倒れてしまいます」
ロメリアンヌも両手で頬を押さえながらうっとりとする。
「はぅ……本当にお顔が良すぎて困りますわ……」
あたしもドキドキと高鳴った胸に手を当てながら、殿下のあんな顔やこんな顔などもついでに思い浮かべてしまう。
「そういえば、ロメリアンヌ。あなた先日アーサー殿下と図書室でなにをお話されていたの?」
ふいにジュディがロメリアンヌへと問いかけた。アルスト殿下の弟で第二王子であるアーサー殿下は、今年からこの学園へと入学された。アルスト殿下と同じ淡い茶色のサラサラとした髪を肩先まで伸ばしている。瞳の色も同じくエメラルドグリーンで、さすがアルスト殿下の弟というべき美青年だ。
「えっ、あぁ……アーサー殿下が植物図鑑を探されていたの。図鑑も色々あるから、どれが良いか一緒に選んでいただけよ」
ロメリアンヌは非常に読書家で、本好きが高じてか学園の図書室で図書委員をやっている。
「それだけ? ロマンスに発展するような事は無かったの?」
「ええっ!? 無いわよ~アーサー殿下がわたしみたいな地味な令嬢に興味を持つ訳ないじゃないの」
ロメリアンヌは「無い、無い」と手を左右に振ってみせるけど、ロメリアンヌがいうほど地味ではないとあたしは思う。濃い橙色の髪はとても艶があって美しいし、ゴールドの切れ長の瞳は知的だ。顔だって美人だと思う。ただ本人の自己評価が低いのよね……。
「そうかしら……わたくしはお似合いだと思うのだけれど。ねぇ、そう思いません? ティアナ様」
「ええ。わたくしも同意見ですわ。ロメリアンヌは綺麗よ」
「やだ、二人してからかわないでよ」
頬を染めて恥ずかしがるロメリアンヌはとても可愛らしいと思うのになぁ……。
午後の授業を終えて、あたしは友人の公爵令嬢であるロメリアンヌ・エマーソンの邸へとお邪魔していた。去年まで続いていた王太子妃教育も無事に終わり、最近はこうして放課後を友人と過ごしたりする時間が持てるようになった。時には王都の街へ寄り道をして流行のスイーツを食べたり、買い物をしたり。
今日はロメリアンヌがお薦めの恋愛小説があるからと、学園帰りにそのまま彼女の邸へ寄り道だ。夕食も一緒に……とのお誘いを受けているので、こうしてゆっくりと談笑している。もう一人の仲良しの侯爵令嬢であるジュディ・イーグルも一緒だ。
今日の話題は昼間の食堂での出来事だ。あの騒動があった時、席は離れてはいたものの二人も食堂に居た。
「他国とはいえ、あのような振る舞いをされる方が王族だなんて……信じられませんわ」
ジュディも呆れたような顔をしながら溜息をついた。あたしは苦笑いしながら、一口サイズに切られたフロランタンを口へと運んだ。キャラメルとアーモンドの香ばしい味が口の中に広がる。
「それにしてもティアナ様も苦労が絶えませんわね、ミンスロッティ様の次はエスメイジー王女殿下だなんて」
「本当にね。アルスト殿下はおモテになられますものね……」
「ええ……殿下はお顔がとても良いですし……」
アルスト殿下を慕っているご令嬢は、エスメイジー王女だけではない。実際に行動には移されはしないけど、多くの女性が殿下を慕っておられる。幼少の頃よりあたしという婚約者が居るので、憧れの眼差しを向けられている方が殆どだ。夜会などでは、あたしとのファーストダンスを終えられると殿下の周りにはダンスを強請るご令嬢が取り囲む。王子として義務的にそのダンスは受けられるけれど、あの王子スマイルに皆倒れそうになられている。
三人で殿下の王子スマイルを思い浮かべ、ほぅ……と甘い感嘆の息を吐いた。
「素敵ですわ~」
蕩けたような顔で息を吐くジュディ。
「あの微笑だけでも大変ですのに、ティアナ様はもっと凄い笑顔を受けられますよね。わたしには絶対無理ですわ~倒れてしまいます」
ロメリアンヌも両手で頬を押さえながらうっとりとする。
「はぅ……本当にお顔が良すぎて困りますわ……」
あたしもドキドキと高鳴った胸に手を当てながら、殿下のあんな顔やこんな顔などもついでに思い浮かべてしまう。
「そういえば、ロメリアンヌ。あなた先日アーサー殿下と図書室でなにをお話されていたの?」
ふいにジュディがロメリアンヌへと問いかけた。アルスト殿下の弟で第二王子であるアーサー殿下は、今年からこの学園へと入学された。アルスト殿下と同じ淡い茶色のサラサラとした髪を肩先まで伸ばしている。瞳の色も同じくエメラルドグリーンで、さすがアルスト殿下の弟というべき美青年だ。
「えっ、あぁ……アーサー殿下が植物図鑑を探されていたの。図鑑も色々あるから、どれが良いか一緒に選んでいただけよ」
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「それだけ? ロマンスに発展するような事は無かったの?」
「ええっ!? 無いわよ~アーサー殿下がわたしみたいな地味な令嬢に興味を持つ訳ないじゃないの」
ロメリアンヌは「無い、無い」と手を左右に振ってみせるけど、ロメリアンヌがいうほど地味ではないとあたしは思う。濃い橙色の髪はとても艶があって美しいし、ゴールドの切れ長の瞳は知的だ。顔だって美人だと思う。ただ本人の自己評価が低いのよね……。
「そうかしら……わたくしはお似合いだと思うのだけれど。ねぇ、そう思いません? ティアナ様」
「ええ。わたくしも同意見ですわ。ロメリアンヌは綺麗よ」
「やだ、二人してからかわないでよ」
頬を染めて恥ずかしがるロメリアンヌはとても可愛らしいと思うのになぁ……。
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