完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな

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第二章

令嬢たちのたわいもないお喋り②

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「それにわたしには一応、婚約者が居るしね」

 ロメリアンヌは少し悲しそうに笑って見せる。そう、ロメリアンヌには婚約者が居る。お相手はバーベンス公爵家の次男であるザッカリーだ。エマーソン家は前当主時代……つまりロメリアンヌのお祖父さまが幾つかの事業を失敗してしまった事から、バーベンス公爵家の援助を受けて持ち直した経緯がある。

 現在では受けた援助分の返済は済んでいるのだが恩義を感じているエマーソン家として何かお礼を出来ないかと話を持ちかけた所、これから生まれてくる孫同士を婚約させる事になったそうだ。エマーソン公爵家は娘であるロメリアンヌしか生まれなかった為、両家で相談をした結果次男であるザッカリーをエマーソン家へ婿入りさせる事になったそうだ。

「あんな人、婚約者として失格だわ。婚約なんて解消すれば良いじゃない」

 ジュディが怒るのも無理もない。あたしから見てもザッカリーは最低な殿方だった。婚約者であるロメリアンヌにいつも冷たい態度を取り、夜会などのエスコートすらしない。勿論、婚約者としての義務である交流の場としてのお茶会もいつも理由をつけてキャンセルをし、贈り物一つもしてきた事がなかった。

「わたしだって、それが出来るのならしたいけど……家同士の取り決めだし仕方ないわ」

 貴族である以上、家同士の繋がりはとても大事だ。政略結婚も当たり前の世界。あたしと殿下も政略結婚ではあるけど……とても恵まれた環境に居る事に感謝しかない。

「ティアナ様。ロメリアンヌの事……アルスト殿下にお願いしてどうにかなりませんか? このままあんな人と結婚だなんて可哀想だわ」
「うーん……こればかりは殿下にお話する訳にもいきませんわ」

 王族とはいえ、貴族同士のトラブルに簡単に首を突っ込む訳にはいかない。法を犯している訳でもなく、ただ婚約者として相応しくない態度を取っているだけなので難しい。

「ジュディってば、ティアナ様を困らせてはダメよ。わたしの事は良いのよ、幼い頃から決まっている話ですもの」
「そうは言っても……心配だわ」
「わたしの事よりも、ジュディこそ婚約者探しはどうなってるの?」
「わたくし? なかなか素敵と思えるような殿方に巡り会わないんですもの~」

 ジュディのご両親は貴族としては珍しく恋愛結婚を推奨しているらしく、本人がこんな風なのでなかなか相手が決まらないでいる。イーグル侯爵家の家督はジュディの兄であるジョナサンが継ぐので、ジュディ自身もあまり焦った感じがないように見える。

「あ……そういえば、今度我が家で久し振りに舞踏会を開くので近々招待状を送りますわ。素敵な殿方に出逢えると良いですわねジュディ」
「まぁ! それでは早速、ドレスを新調しなければいけませんわね」
「ドレスといえば最近の流行は……」

 あたしたち三人はいつもこうやって話題を変えながら、楽しくお喋りを楽しんでいる。ジュディが言うように、ロメリアンヌの結婚についてはあたしも心配をしている。二人とも大事な友人だし、出来る事なら幸せな家庭を築いて欲しい。今はこんな風だけど、結婚したらザッカリー様もロメリアンヌを大切にしてくれるように変わってくれるのだろうか。

◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆

「ザッカリー・バーベンスか。良い噂は聞かないな」

 夜、タクトお兄様のお部屋を訪ねてみるとスクトお兄様もご一緒だった。ロメリアンヌの事をそれとなく相談してみた。お兄様たちなら何か良い方法をご存知だったりするかもしれない。

「そもそもバーベンス公爵家自体が、きな臭いからな」
「ええ、それは存じております」

 オルプルート王国には全部で六つの公爵家がある。その中でも我がローゼン公爵家は群を抜いて秀でた軍事力と豊富な資金力、そして広大な領地を持っている為筆頭公爵家として追随を許さない位置に立っている。そして残り五つの公爵家の中で最も上の立場にあるのがバーベンス公爵家だ。

 ローゼン公爵家とバーベンス公爵家は昔から因縁の仲らしい。ザッカリーは同い年であるタクトお兄様に異常な敵対心を燃やしていると噂には聞くが、タクトお兄様は全く眼中に入れてない様子だ。ロメリアンヌのエマーソン公爵家はバーベンス公爵家よりも力が弱い為色々と面倒な状態だったりする。

「婚約解消をするとなると、相当な理由が無いと難しいと思うよ」
「そうですわね……」

 スクトお兄様も頭を悩ませる。

「まぁ……ロメリアンヌ嬢には僕もお世話になっているし、確かに幸せになって欲しい気持ちは分かるからなぁ……」

 スクトお兄様は王宮の図書館だけでなく、学園の図書室にもよく通われているので図書委員のロメリアンヌの事もよく知っている。

「ちょっとザッカリーを含めてバーベンス公爵家の事、調べてみるよ」
「あぁ、おれも別方向から探りをいれてみるよ」
「ありがとう御座います、タクトお兄様、スクトお兄様」

 あたしは二人にお礼を言って自室へと戻った。あたしに出来る事なんて限られてるだろうけど、少しでもロメリアンヌが幸せになれるのなら手伝いたい。去年ミンスロッティ様の件で悩んでいたあたしをロメリアンヌとジュディが支えてくれていた。二人が居なかったらあたしは、もっと辛い思いをしていた筈だから。
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