ラスボス魔王の悪役令嬢、モブを目指します?

みおな

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思い出さなくて良い

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「ローズさんは今日は辺境伯ここに泊まるの?」

 屈託ない笑顔。

 元々、リリーシアは言動だった。

 人を責めたり、貶めるような発言はしない。

 嫌なことをされても、文句を言ったり怒ったりしない。

 でも、今の笑顔を見て思った。

 子供のような笑顔。
嬉しい時は笑って、悲しい時は泣いて、腹がたった時は怒る。

 聖女の偽物の笑顔じゃない、心からの笑顔。

 今のリリーシアは

「いえ、私は・・・」

「どうぞ、泊まっていってください。お疲れでしょう」

「・・・お気遣いありがとうございます。では、今夜だけ」

 お祖母様たちとどうするべきか話し合う必要があるんだけど、私個人としてはこのまま記憶が戻らないままでいる方がいいんじゃないかって思う。

 どちらにしろレオナルドはフローレンス様との婚約が決まったし、リリーシアのことは病気静養としてあるけど、王太子との婚約が解消された令嬢と婚約したがる貴族なんて数少ない。

「ほんとっ?」

「レディ。私たちはまだ大切なお話があるから、そろそろお部屋に戻りなさい。ご令嬢とは後でお茶でもご一緒すれば良いだろう?」

「はぁい。じゃあ、ローズさん後で一緒にお茶を飲みましょうね」

 ニコニコと手を振って去っていくリリーシアの後ろで、夫人が深々と頭を下げてリリーシアの後を追って行った。

「無理を言って申し訳ありません。ですが、記憶を失ったあの子・・・いえ公爵令嬢様が望むことはできる限り叶えたくて・・・」

「あの子で結構ですわ。彼女は今、公爵令嬢で王太子殿下の元婚約者リリーシア・オズワルドではなく、レディという一人の女性なのですから」

「そう言っていただけると・・・」

「彼女の件は一旦持ち帰り、セニヨン公爵前夫人たちと相談したいと思います。ですので、王家やオズワルド公爵家への連絡はお控えください。今の彼女に、公爵令嬢としての振る舞いは無理でしょう」

 以前のリリーシアにも屈託のなさはあったけど、生まれながらの公爵令嬢として振る舞いはある程度出来ていた。

 オズワルドの両親もリリーシアには甘かったけど、それと教育は別物で、キチンと躾けられていた。

 だから、屈託なく手を振られて・・・
 前世の記憶があるから、手を振る行為に違和感なく受け入れてしまったけど、アレは貴族令嬢の振る舞いじゃないわ。

 それでも、嫌だとは思わなかった。

 今まで見た・・・ゲームの中のリリーシアや今世で出会ったどのリリーシアよりも、リリーシアらしい、そう思えた。
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