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カイル

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 ザハード王国へは、国から謝罪をするということは、ロイドの婚約者だという逃げ道は使えない。

 かといって、レオナルドの婚約者になるのは嫌。

 どうしてって言われても困るけど、生理的にとしか言いようがない。

「ローズ」

「はい、お祖母様」

 不意にお祖母様が真剣な口調で私を呼んだ。

 お祖母様は、両親とレオナルドとの婚約から逃げたかった私を助けてくれた、大切な家族。

 この家族に迷惑をかけたくない。

「以前、王太子殿下からの婚約をお断りするときに、婚約者になりたくないと言っていたけど、その気持ちに変わりはない?」

「はい、ありませんわ」

「ローズは、誰か想う人がいるのかしら?」

「ええと・・・」

 前世の私の推しはカイルだった。

 ローズマリアになって、やっぱり両親に疎まれて、セニヨン公爵家の養女になることにした。

 セニヨン公爵家に来てから、オズワルド公爵家にいた頃みたいに、カイルが私のことを全てすることはなくなった。

 他の騎士たちと訓練をしたり、家令に色々学んだりしているカイルを遠目で見ることが増えた。

 ロイドやサリフィルほどの想いじゃないけれど、カイルのことは好きだと思う。

 カイルはゲームの中と同じように、ずっと私を支えてくれた。

 セニヨン公爵家に来てからは、私を害する者がいないから、私から離れて鍛錬をしていたりするけど、オズワルド公爵家ではカイルがそばにいてくれることが、本当に救いだった。

 でも、それが恋かどうかが分からない。

 それにカイルの方は、単に主従関係でしかない、と思う。

 ゲームの中でも、カイルはローズマリアを大切にしていた。従者として。

 最終的には、レオナルドからローズマリアを守ろうとして殺されてしまうけど、最後までローズマリアのことを守ろうとしていた。

 この世界でも、カイルは侍従として私の側にいてはくれるけど、それは義務感じゃないのかな。

 孤児院から引き取ってもらったから、だから責任感で側にいてくれるんじゃないのかな。

「側にいて欲しい人は・・・います。でもそれは、クリストフお兄様のような激しい想いではないので・・・これが恋なのかもわからないのです。それに、相手の気持ちも分かりませんし」

 私は正直にお祖母様に伝えた。

 レオナルドとの婚約を回避するには、絶対にお祖母様の協力が必要だもの。

 どうしても無理だったら、ザハード王国かマハール王国へ平民として逃げるしかない。

 みんなに迷惑かけることになるけど、政略結婚と思ってでも嫌なんだから許して欲しいわ。
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