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再びやってきた悪役令嬢

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「ちょっと!私はバッカス侯爵家の娘なのよ!ラーナがいるでしょう!ピスエア子爵令嬢のラーナよ!出しなさい!」

 その声に、私は足を止めた。

 城外の声が、城内まで聞こえるというわけではない。

 たまたま城内を散歩中だったのだ。

 ロイドはラーナと、サリフィルはヒルデと、王太子の執務室で逢瀬を楽しんでいる。

 本来なら第一王子でしかないロイドが使える部屋ではないのだけど、国王陛下の計らいでお借りできた。

 現在使われていない場所でもあるので、王宮の使用人たちも近付かない。

 というか、通路に立ち入り禁止の立て札が立ってたわ。

 ロイドはラーナを見かけることくらいはできるだろうけど、妹の侍女に親しげに話しかけるわけにはいかない。

 サリフィルに至っては、ヒルデは他国の令嬢である私の侍女扱いだから、会うこともままならない。

 二人とも周囲を欺くためとはいえ、恋人と会話もままならないのは辛い。

 というわけで、王族が味方のこの国で短い逢瀬を楽しんでもらうことにしたのだ。

 二時間ほど暇ができたので、街に出かけようかと思って、レーチェル姫に馬車を借りたいとお願いしたんだけど、出かけるなら案内したいから一時間ほど待っていて欲しいと言われたのだ。

 仕方ないので、城内をウロウロと散策していたのだが・・・

 確かに、ここにラーナはいる。

 だけど、ラーナは現在レーチェル王女殿下の侍女。

 いくら身内だからといって、王女の許可なく呼び出せるものではない。

 えーと、前回の不思議理論といい、この人本当に侯爵令嬢?

 公爵家や侯爵家って、幼い頃から厳しい教育を受けている・・・はずよね?

 私はオズワルド公爵家では扱いだったけど、教育だけは受けていた。

 まぁ、政略結婚で嫁に出す際にオズワルド公爵家の娘が無教養では家の恥になるものね。

 その上、セニヨン公爵家の養女になってからは、お祖母様の指導が厳しかった。

 元々アザリウム王家の王女殿下であったお祖母様も、幼い頃から厳しい教育を受けていたのだろう。

 レーチェル殿下も、現在マナーのお勉強中である。
 だから、それが終わるまで待っていて欲しいと言ったのだ。

 つまりは、そういう教育はアザリウム王国に限ったわけではないということなんだけど・・・

 うん。大丈夫か?バッカス侯爵家。
娘があんなんで、お家取り潰しとか笑い事じゃないんだけど。

 ロイドが言って、王家からバッカス侯爵家に抗議が行ったはずなんだけど。

 え?無視なの?それとも言っても聞かないの?

 どっちにしろ、ここ王城なんだけど。
そこでそんな喚くって・・・

 侯爵家の教育って一体・・・
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