上 下
40 / 107

私は気にしないわ

しおりを挟む
 何故、他国の令嬢を婚約者にしたか。

 それはね、偽の婚約者なんて自国の令嬢に頼めないからよ。

 本人が納得の上で引き受けたとしても、ラーナと結ばれるときその令嬢はと周囲から見られる。

 だからロイドもサリフィルも、他国の令嬢を探した。

 そして同じように、他国の、王族に勝てる存在を探していた私と出会った。

 私とロイド、サリフィルは共犯者。
だからお互い裏切らないし、どんなことにも負けたり凹んだりしない。

 だから私は、にっこりとタチアナに微笑んで見せた。

 タチアナが息を呑んだのがわかる。

 ローズマリアの容姿は、トップクラスだからね。

 タチアナは自分に自信があったんだろうけど、残念。相手が悪かったわね。

 攻略ゲームのタイトルにもなったけど、清廉な聖女リリーシアは純白の百合。

 嫉妬と絶望で魔王になったローズマリアは漆黒の薔薇。

 白と黒、表と裏のリリーシアとローズマリアは、その立ち位置こそ違うけどどちらも優れた容姿をしているのだ。

 タチアナやヒルデ、ラーナも他の令嬢に比べれば華があるけど・・・

 そういや乙女ゲームって、みんな美形ばかりよね。モブは別としても。

 まぁ、どちらにしろメインキャラのローズマリアとリリーシアの容姿は特化してるから・・・

「確かバッカス侯爵家の・・・タチアナ様でしたかしら?アザリウム王国セニヨン公爵家が娘ローズマリアですわ」

 貴族の名乗りには、色々と決まりがある。

 他の国では違うところもあるが、アザリウム王国やザハード王国では、身分が下の者が名乗りをし、相手が名を名乗ったら家名に様をつけて挨拶するというものだ。

 まぁ、さっきのタチアナの発言を挨拶と呼べるのかは別として、一応名乗ったわけだから、と私も名乗ることにした。

 ちなみに、よく貴族ものの話で出てくるカーテシーだけど、まだ子供なこともあるし、相手が自分より下の身分なので、がっつりする必要はない。

 ああ。ロイドにはするべきね。
王族だし。

 ローズマリアはゲームと違って王太子のレオナルドの婚約者にはならなかったけど、オズワルドの両親はローズマリアを家から出す気しかなかったから、マナーとかの教育はある程度受けていた。

 その上、セニヨン公爵家の養女になってからは、お祖母様が結構なスパルタで・・・

 だからカーテシーはもちろん、淑女の笑顔アルカイックスマイルもおてのものである。

「ごきげんよう、殿下」

「ああ。迎えが遅れたようで、思いをさせなかったか?サリフィル殿もレーチェルが待ち侘びている」

「ふふっ。お気遣いありがとうございます。私は気にしておりませんわ。それでは、バッカス侯爵令嬢様、失礼しますわね」

 貴族はね、周囲に与える印象も大切よ。
 たとえそれが下位の貴族でも平民でも、敵にするより味方にした方が良いに決まってるわ。

ローズマリアはね、あの断罪でそれを学んだの。

 もっともっと、味方を増やしておけば生き延びれたかもしれなかった。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】名ばかりの妻を押しつけられた公女は、人生のやり直しを求めます。2度目は絶対に飼殺し妃ルートの回避に全力をつくします。

yukiwa (旧PN 雪花)
恋愛
*タイトル変更しました。(旧題 黄金竜の花嫁~飼殺し妃は遡る~) パウラ・ヘルムダールは、竜の血を継ぐ名門大公家の跡継ぎ公女。 この世を支配する黄金竜オーディに望まれて側室にされるが、その実態は正室の仕事を丸投げされてこなすだけの、名のみの妻だった。 しかもその名のみの妻、側室なのに選抜試験などと御大層なものがあって。生真面目パウラは手を抜くことを知らず、ついつい頑張ってなりたくもなかった側室に見事当選。 もう一人の側室候補エリーヌは、イケメン試験官と恋をしてさっさと選抜試験から引き揚げていた。 「やられた!」と後悔しても、後の祭り。仕方ないからパウラは丸投げされた仕事をこなし、こなして一生を終える。そしてご褒美にやり直しの転生を願った。 「二度と絶対、飼殺しの妃はごめんです」 そうして始まった2度目の人生、なんだか周りが騒がしい。 竜の血を継ぐ4人の青年(後に試験官になる)たちは、なぜだかみんなパウラに甘い。 後半、シリアス風味のハピエン。 3章からルート分岐します。 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。 表紙画像はwaifulabsで作成していただきました。 https://waifulabs.com/

ヒロインの味方のモブ令嬢は、ヒロインを見捨てる

mios
恋愛
ヒロインの味方をずっとしておりました。前世の推しであり、やっと出会えたのですから。でもね、ちょっとゲームと雰囲気が違います。 どうやらヒロインに利用されていただけのようです。婚約者?熨斗つけてお渡ししますわ。 金の切れ目は縁の切れ目。私、鞍替え致します。 ヒロインの味方のモブ令嬢が、ヒロインにいいように利用されて、悪役令嬢に助けを求めたら、幸せが待っていた話。

[完]巻き戻りの第二王太子妃は親友の幸せだけを祈りたい!

小葉石
恋愛
クワーロジット王国滅亡の日、冷酷なクワーロジット王太子は第二王太子妃を捨てた。 その日、捨てられたラシーリア第二王太子妃は絶対絶命の危機に面していた。反王政の貴族の罠に嵌り全ての罪を着せられ、迫り来る騎士達の剣が振り下ろされた時、ラシーリア第二王太子妃は親友であったシェルツ第一王太子妃に庇われ共に絶命する。 絶命したラシーリアが目覚めれば王宮に上がる朝だった… 二度目の巻き戻りの生を実感するも、親友も王太子も自分が知る彼らではなく、二度と巻き込まれなくて良いように、王太子には自分からは関わらず、庇ってくれた親友の幸せだけを願って……… けれど、あれ?おかしな方向に向かっている…? シェルツ   第一王太子妃 ラシーリア  第二王太子妃 エルレント  クワーロジット王国王太子

婚約破棄は踊り続ける

お好み焼き
恋愛
聖女が現れたことによりルベデルカ公爵令嬢はルーベルバッハ王太子殿下との婚約を白紙にされた。だがその半年後、ルーベルバッハが訪れてきてこう言った。 「聖女は王太子妃じゃなく神の花嫁となる道を選んだよ。頼むから結婚しておくれよ」

悪役令嬢予定でしたが、無言でいたら、ヒロインがいつの間にか居なくなっていました

toyjoy11
恋愛
題名通りの内容。 一応、TSですが、主人公は元から性的思考がありませんので、問題無いと思います。 主人公、リース・マグノイア公爵令嬢は前世から寡黙な人物だった。その為、初っぱなの王子との喧嘩イベントをスルー。たった、それだけしか彼女はしていないのだが、自他共に関連する乙女ゲームや18禁ゲームのフラグがボキボキ折れまくった話。 完結済。ハッピーエンドです。 8/2からは閑話を書けたときに追加します。 ランクインさせて頂き、本当にありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ お読み頂き本当にありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ 応援、アドバイス、感想、お気に入り、しおり登録等とても有り難いです。 12/9の9時の投稿で一応完結と致します。 更新、お待たせして申し訳ありません。後は、落ち着いたら投稿します。 ありがとうございました!

【完結】その令嬢は号泣しただけ~泣き虫令嬢に悪役は無理でした~

春風由実
恋愛
お城の庭園で大泣きしてしまった十二歳の私。 かつての記憶を取り戻し、自分が物語の序盤で早々に退場する悪しき公爵令嬢であることを思い出します。 私は目立たず密やかに穏やかに、そして出来るだけ長く生きたいのです。 それにこんなに泣き虫だから、王太子殿下の婚約者だなんて重たい役目は無理、無理、無理。 だから早々に逃げ出そうと決めていたのに。 どうして目の前にこの方が座っているのでしょうか? ※本編十七話、番外編四話の短いお話です。 ※こちらはさっと完結します。(2022.11.8完結) ※カクヨムにも掲載しています。

悪役令嬢なので舞台である学園に行きません!

神々廻
恋愛
ある日、前世でプレイしていた乙女ゲーに転生した事に気付いたアリサ・モニーク。この乙女ゲーは悪役令嬢にハッピーエンドはない。そして、ことあるイベント事に死んでしまう....... だが、ここは乙女ゲーの世界だが自由に動ける!よし、学園に行かなければ婚約破棄はされても死にはしないのでは!? 全8話完結 完結保証!!

完 あの、なんのことでしょうか。

水鳥楓椛
恋愛
 私、シェリル・ラ・マルゴットはとっても胃が弱わく、前世共々ストレスに対する耐性が壊滅的。  よって、三大公爵家唯一の息女でありながら、王太子の婚約者から外されていた。  それなのに………、 「シェリル・ラ・マルゴット!卑しく僕に噛み付く悪女め!!今この瞬間を以て、貴様との婚約を破棄しゅるっ!!」  王立学園の卒業パーティー、赤の他人、否、仕えるべき未来の主君、王太子アルゴノート・フォン・メッテルリヒは壁際で従者と共にお花になっていた私を舞台の中央に無理矢理連れてた挙句、誤り満載の言葉遣いかつ最後の最後で舌を噛むというなんとも残念な婚約破棄を叩きつけてきた。 「あの………、なんのことでしょうか?」  あまりにも素っ頓狂なことを叫ぶ幼馴染に素直にびっくりしながら、私は斜め後ろに控える従者に声をかける。 「私、彼と婚約していたの?」  私の疑問に、従者は首を横に振った。 (うぅー、胃がいたい)  前世から胃が弱い私は、精神年齢3歳の幼馴染を必死に諭す。 (だって私、王妃にはゼッタイになりたくないもの)

処理中です...