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私は気にしないわ

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 何故、他国の令嬢を婚約者にしたか。

 それはね、偽の婚約者なんて自国の令嬢に頼めないからよ。

 本人が納得の上で引き受けたとしても、ラーナと結ばれるときその令嬢はと周囲から見られる。

 だからロイドもサリフィルも、他国の令嬢を探した。

 そして同じように、他国の、王族に勝てる存在を探していた私と出会った。

 私とロイド、サリフィルは共犯者。
だからお互い裏切らないし、どんなことにも負けたり凹んだりしない。

 だから私は、にっこりとタチアナに微笑んで見せた。

 タチアナが息を呑んだのがわかる。

 ローズマリアの容姿は、トップクラスだからね。

 タチアナは自分に自信があったんだろうけど、残念。相手が悪かったわね。

 攻略ゲームのタイトルにもなったけど、清廉な聖女リリーシアは純白の百合。

 嫉妬と絶望で魔王になったローズマリアは漆黒の薔薇。

 白と黒、表と裏のリリーシアとローズマリアは、その立ち位置こそ違うけどどちらも優れた容姿をしているのだ。

 タチアナやヒルデ、ラーナも他の令嬢に比べれば華があるけど・・・

 そういや乙女ゲームって、みんな美形ばかりよね。モブは別としても。

 まぁ、どちらにしろメインキャラのローズマリアとリリーシアの容姿は特化してるから・・・

「確かバッカス侯爵家の・・・タチアナ様でしたかしら?アザリウム王国セニヨン公爵家が娘ローズマリアですわ」

 貴族の名乗りには、色々と決まりがある。

 他の国では違うところもあるが、アザリウム王国やザハード王国では、身分が下の者が名乗りをし、相手が名を名乗ったら家名に様をつけて挨拶するというものだ。

 まぁ、さっきのタチアナの発言を挨拶と呼べるのかは別として、一応名乗ったわけだから、と私も名乗ることにした。

 ちなみに、よく貴族ものの話で出てくるカーテシーだけど、まだ子供なこともあるし、相手が自分より下の身分なので、がっつりする必要はない。

 ああ。ロイドにはするべきね。
王族だし。

 ローズマリアはゲームと違って王太子のレオナルドの婚約者にはならなかったけど、オズワルドの両親はローズマリアを家から出す気しかなかったから、マナーとかの教育はある程度受けていた。

 その上、セニヨン公爵家の養女になってからは、お祖母様が結構なスパルタで・・・

 だからカーテシーはもちろん、淑女の笑顔アルカイックスマイルもおてのものである。

「ごきげんよう、殿下」

「ああ。迎えが遅れたようで、思いをさせなかったか?サリフィル殿もレーチェルが待ち侘びている」

「ふふっ。お気遣いありがとうございます。私は気にしておりませんわ。それでは、バッカス侯爵令嬢様、失礼しますわね」

 貴族はね、周囲に与える印象も大切よ。
 たとえそれが下位の貴族でも平民でも、敵にするより味方にした方が良いに決まってるわ。

ローズマリアはね、あの断罪でそれを学んだの。

 もっともっと、味方を増やしておけば生き延びれたかもしれなかった。





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