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お兄様

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「ただいま、ローズ」

 セニヨン公爵家嫡男、クリストフ・セニヨン様。

 銀髪に金の瞳をした、とても見目の麗しい方だ。

 叔母様譲りの銀髪は、すっきりと短めに整えられ、お祖母様譲りの金の瞳は切長。

 だけど、お優しい方だということは分かる。
 お手紙のやり取りはしたけど、初めて会う私にもとてもお優しい。

「おかえりなさいませ、クリスお兄様」

「ふふっ、抱きついてきてくれても良いのに」

「まぁ、お兄様。お祖母様に叱られてしまいますわ」

 お祖母様は私をとても可愛がってくれるし、親身になってくれるけど、マナーの面ではとても厳しい。

 がいるのに抱きついたりしたら、淑女として失格だと叱られてしまう。

「お初にお目もじいたします。ローズマリア・セニヨンと申します」

 お兄様の右隣には、空色の髪と空色の瞳をした男性、マハール王国筆頭公爵家嫡男サリフィル・ホリック様が。

 左隣には、燃えるような赤い髪に赤い瞳をした、ザハード王国第一王子殿下ロイド・ザハード殿下がいらっしゃる。

 私はカーテシーをして二人にご挨拶する。

 このカーテシー、前世の私の感覚から言うと、とてもしんどい。

 男は胸に手を当てて頭を下げるだけで良いのに、女性は片足を少し曲げて、もう片方を後ろに引き、背筋はスッと伸ばして・・・などという拷問のような体制を取らなきゃならない。

 しかも相手が格上の王族とかだと、勝手に顔もあげられないのよ。

 女性蔑視よね、この時代って。
女性が働くことも良くは見られないし、男の愛人は許されるのに、女性が婚約者がいながら別の男性と仲良く(不貞でなくても)してるだけで、婚約解消だの破棄だの言われて、慰謝料まで取られる。

 本当、嫌な時代に転生したわ。

 親に無視されていたとはいえローズマリアは公爵令嬢。
 王太子の婚約者にもなったから、マナーは学ばされている。

 でなきゃ、無理!
ある意味拷問!

「顔を上げてくれ。僕はまだ立太子していないから、ただの王子に過ぎない。それに彼も公爵令息で、立場は君と同じだ。会えて嬉しい、セニヨン嬢」

「お会いできて光栄です、セニヨン公爵令嬢。クリストフが羨ましいな、こんな可愛い妹がいて」

「ははっ。羨ましいだろ。やらないからな!婚約するとしてもだから!ローズを他国になんかやらないから!」

 もう!お兄様は何を言っているんだか。

 二人とも、好きな人がいるって話じゃない!
 だけど邪魔が入るから、隠れ蓑が欲しいんでしょ?

 でも・・・

 嬉しい。勇者に、聖女に、裏切られて傷ついたローズマリアの心が癒されていく気がする。





 
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