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お断りします

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「その、少し席を外してもらえないか、セニヨン前公爵夫人。令嬢と話があるんだ」

 本当にローズマリアは、こんな男のどこが良かったんだろうか。

 仮にも王族が、こんな発言をするなんて。

「それは出来かねますわ、殿下。私は孫に頼まれて同席していますのよ」

 答えるお祖母様の目にも、蔑みが見える。

 今のレオナルドは、貴族として正しくない発言をしている。

 先触れも出さずに公爵家を訪れ、令嬢の名を婚約者でもないのに呼び捨てで呼び、そして二人きりで話したいと言う。

 どれだけ自分の株を下落させたいのだろうか。

「どうぞ、お話ならここでお話下さい。私は殿下と二人きりでお話するつもりはありません」

「ッ!分かった。なら言おう。ローズマリア嬢。俺と婚約して欲しい」

「謹んで・・・お断りさせていただきます」

「何故っ!」

 いや、何故って。
あなたと婚約したくないから養子縁組までお願いしたというのに、どうして婚約しなきゃならないのよ。

 それこそ、何故よ。

 ああ。
今までローズマリアが自分を慕ってくれてるような態度だったから?

 だから、申し込めば受け入れてくれると思った?

 残念。
ローズマリアならいざ知らず、私は聖女もだけど勇者のことも大嫌いなの。

 愛しい愛しい聖女様と婚約すればいいじゃない。

 ローズマリアは気付いてなかったけど、ゲームをプレイしていた私は知ってるのよ。

 ローズマリアと婚約する前から、レオナルドはリリーシアのことをいつも見ていたわよね?

 リリーシアと婚約したいと思ってたわよね?

 でも、リリーシアがオズワルド公爵家を継ぐから・・・

 リリーシアとの縁を切らないためと、リリーシアに好印象を持ってもらうために、ローズマリアと婚約したわよね?

 こんな男に愛を求めていたなんて、ね。

 ローズマリアが、それだけオズワルド公爵家で孤独だったということか。

 というか、セニヨン公爵令嬢となった私は、例えレオナルドを好きだとしても婚約者にはなれないわよ?

 公爵家が持ち回りで王家と縁を結ぶのは、血が近くなりすぎるのと、権力が偏りすぎるのを防ぐためなんだから。

 今回は、オズワルド公爵家の番。

 良かったじゃない。
愛しい聖女様と婚約できるわよ。

「殿下。ローズマリアはセニヨン公爵家の娘です。殿下と婚約することはできませんよ」

「わ、分かっている。だが、養女になど・・・」

「国王陛下の許可も得ている養子縁組です。オズワルド公爵家にはリリーシア様がいらっしゃいます。リリーシア様と婚約なさればよろしいのでは?」

 あなたはそれを望んでいたでしょう?
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