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第58.5話〜ジェレミー視点〜
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今日、本屋で僕に話しかけてくれた方がカリスタ伯爵家を訪れている。
セルコム伯爵家の方で、エリザベスお姉様と同い年の方だ。
エリザベスお姉様は、とても優秀でスキップ制度というのを利用して学園にはほとんど通っていらっしゃらない。
本当は・・・
通われてご友人をたくさん作りたかったはずだ。
それもこれも、僕の両親である元ブレンディ侯爵夫妻と、兄であるイーサンのせいだ。
兄があんな王女に現を抜かしたりしなければ。
いや、違う。
兄は婚約当初から、お姉様を下に見ていた。
兄があんな愚か者でなければ。
両親がちゃんと兄を叱っていれば。
お姉様は、毎日学園に通うことが出来たんだ。
セルコム伯爵令息様は、入学当初そんな兄と同じクラスだったそうだ。
お父様が言うには、入学試験の時に体調を崩していて、成績が振るわなかったのだそう。
その証拠に、学期末にはAクラスになられたと聞いた。
貴族にとって、あの学園での成績は『全て』だ。
学園での卒業時の成績で、その後就ける仕事も左右されるし、過去には婚約が解消されたこともあるらしい。
僕も四年後の学園入学に向けて、勉強に力を入れている。
僕は、カリスタ伯爵家を継ぐために養子になったんだ。
お父様やお母様、お姉様の期待を裏切らないようにしないといけない。
『本当に?』
ふと、セルコム伯爵令息様の声が頭の中に聞こえた気がした。
『自分だけで完結しては駄目だよ。確かに、養子縁組はカリスタ伯爵家の後継を得るためではあるだろうけど、本当にそれだけかな?君には、それだけの価値しかないのかな?君が後継に相応しくなければ、養子縁組は解消されるのかな?よく考えて、そして話し合ってごらん』
そうだ。
お父様もお母様もお姉様も・・・それから、セルコム伯爵令息様も、ちゃんと口にして相談をしろって言ったじゃないか。
言葉にしなければ、通じないこともあると教えてくれたじゃないか。
僕は。
僕は。
「僕は、セルコム様に僕の側近になって、ずっと導いて欲しいですっ!」
「・・・」
「・・・」
しまった。勢い余って、お父様たちがお話されている応接室に乱入してしまった。
どうしよう。
お父様たちの無言が辛い。
「ふっ、ははははは。だそうだよ、ラリー殿」
お父様がいきなり笑い出して、セルコム様の肩を叩いた。
叩かれたセルコム様は、僕に柔らかな視線を向ける。
「僕をそんなに評価してくれてありがとう」
「あ、その、すみません」
「謝罪は必要ないよ。僕は嬉しいと言っているんだから。そこの返答は、謝罪ではなく肯定の言葉かな。これから一緒に学んでいこうね。よろしく、ジェレミー様」
「!」
この日、僕は心から信頼できる側近を手に入れた。
セルコム伯爵家の方で、エリザベスお姉様と同い年の方だ。
エリザベスお姉様は、とても優秀でスキップ制度というのを利用して学園にはほとんど通っていらっしゃらない。
本当は・・・
通われてご友人をたくさん作りたかったはずだ。
それもこれも、僕の両親である元ブレンディ侯爵夫妻と、兄であるイーサンのせいだ。
兄があんな王女に現を抜かしたりしなければ。
いや、違う。
兄は婚約当初から、お姉様を下に見ていた。
兄があんな愚か者でなければ。
両親がちゃんと兄を叱っていれば。
お姉様は、毎日学園に通うことが出来たんだ。
セルコム伯爵令息様は、入学当初そんな兄と同じクラスだったそうだ。
お父様が言うには、入学試験の時に体調を崩していて、成績が振るわなかったのだそう。
その証拠に、学期末にはAクラスになられたと聞いた。
貴族にとって、あの学園での成績は『全て』だ。
学園での卒業時の成績で、その後就ける仕事も左右されるし、過去には婚約が解消されたこともあるらしい。
僕も四年後の学園入学に向けて、勉強に力を入れている。
僕は、カリスタ伯爵家を継ぐために養子になったんだ。
お父様やお母様、お姉様の期待を裏切らないようにしないといけない。
『本当に?』
ふと、セルコム伯爵令息様の声が頭の中に聞こえた気がした。
『自分だけで完結しては駄目だよ。確かに、養子縁組はカリスタ伯爵家の後継を得るためではあるだろうけど、本当にそれだけかな?君には、それだけの価値しかないのかな?君が後継に相応しくなければ、養子縁組は解消されるのかな?よく考えて、そして話し合ってごらん』
そうだ。
お父様もお母様もお姉様も・・・それから、セルコム伯爵令息様も、ちゃんと口にして相談をしろって言ったじゃないか。
言葉にしなければ、通じないこともあると教えてくれたじゃないか。
僕は。
僕は。
「僕は、セルコム様に僕の側近になって、ずっと導いて欲しいですっ!」
「・・・」
「・・・」
しまった。勢い余って、お父様たちがお話されている応接室に乱入してしまった。
どうしよう。
お父様たちの無言が辛い。
「ふっ、ははははは。だそうだよ、ラリー殿」
お父様がいきなり笑い出して、セルコム様の肩を叩いた。
叩かれたセルコム様は、僕に柔らかな視線を向ける。
「僕をそんなに評価してくれてありがとう」
「あ、その、すみません」
「謝罪は必要ないよ。僕は嬉しいと言っているんだから。そこの返答は、謝罪ではなく肯定の言葉かな。これから一緒に学んでいこうね。よろしく、ジェレミー様」
「!」
この日、僕は心から信頼できる側近を手に入れた。
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