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第1章
幕間:その頃の第2王子
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「どこへ行く?サイード」
かけられた声にビクッとしながら、ゆっくりと振り返った。
サイラス・エトワール。
カムシーナ王国の第1王子であり、僕の2歳年上の兄上だ。
国王陛下である父上とよく似た、その鋭い洞察力を持つ兄上のことが、僕は苦手だった。
尊敬はしている。
兄上は、努力の人だ。座学も剣も魔法も、常に上を目指して努力されている。未来の国王に相応しい方だと思う。
だけど、勉強も剣も魔法も、パッとしない僕からしたら、そのあまりにも真面目すぎる兄上の存在は、負担でしかなかった。
いつも比較される。
優秀な第1王子と平凡な第2王子。
僕は座学も剣も魔法も平凡だ。王族だから魔力量は多いが、ただそれだけ。
自分でも理解っている。
何をしても兄上には敵わないということは。
だから、兄上がいずれ立太子したとしても、何の不服もない。
それでも、僕は誰かに認めて欲しかったのだと思う。
「お前はよくやっている」と。「頑張っている」と言われたかったのだと思う。
だから、「サイード様はすごいと思います。むしろ頑張りすぎです」と言ってくれるキャンディのことが、どうしようもなく愛しく思えるのだ。
ヴィヴィ嬢は・・・
婚約者であるヴィヴィ・ヴァレリア公爵令嬢は、そんな風に言ってくれたことはなかった。
彼女は兄上と同じで優秀で、どんなことにも弱音も吐かない彼女のことを守りたいとも愛しいとも思えなかった。
彼女が僕を頼ってくれたことなどない。
彼女は、ヴィヴィ・ヴァレリア公爵令嬢は、1人でも平気な女性だ。
「ゔぁ・・・ヴァレリア公爵家に婚約者に会いに行きます」
「・・・そうか。ヴァレリア嬢はお元気か?」
「・・・は、はい」
ヴィヴィ嬢と会ったのは、いつだっただろうか。
定期的に開かれるお茶会に、前回は行かなかった。
本来なら、その後にお詫びに行くべきところをそのまま放置した。
ヴィヴィ嬢からは手紙も来ず、何も言ってこない。
王城でヴァレリア公爵と会っても何も言われなかったから、彼女は何も公爵に伝えていないのだろう。
このままでは駄目なことはわかっている。
ヴィヴィ嬢との婚約は、父上が決められた王命だ。解消することなどできない。
平民であるキャンディを、婚約者にすることができないことも理解している。
だけど、どうしてもキャンディが愛しいのだ。キャンディに側にいて欲しいのだ。
「あ、兄上。それでは、急ぎますので」
「ああ。ヴァレリア嬢によろしくな」
兄上の声を背中に聞きながら、僕は逃げるようにその場を後にした。
かけられた声にビクッとしながら、ゆっくりと振り返った。
サイラス・エトワール。
カムシーナ王国の第1王子であり、僕の2歳年上の兄上だ。
国王陛下である父上とよく似た、その鋭い洞察力を持つ兄上のことが、僕は苦手だった。
尊敬はしている。
兄上は、努力の人だ。座学も剣も魔法も、常に上を目指して努力されている。未来の国王に相応しい方だと思う。
だけど、勉強も剣も魔法も、パッとしない僕からしたら、そのあまりにも真面目すぎる兄上の存在は、負担でしかなかった。
いつも比較される。
優秀な第1王子と平凡な第2王子。
僕は座学も剣も魔法も平凡だ。王族だから魔力量は多いが、ただそれだけ。
自分でも理解っている。
何をしても兄上には敵わないということは。
だから、兄上がいずれ立太子したとしても、何の不服もない。
それでも、僕は誰かに認めて欲しかったのだと思う。
「お前はよくやっている」と。「頑張っている」と言われたかったのだと思う。
だから、「サイード様はすごいと思います。むしろ頑張りすぎです」と言ってくれるキャンディのことが、どうしようもなく愛しく思えるのだ。
ヴィヴィ嬢は・・・
婚約者であるヴィヴィ・ヴァレリア公爵令嬢は、そんな風に言ってくれたことはなかった。
彼女は兄上と同じで優秀で、どんなことにも弱音も吐かない彼女のことを守りたいとも愛しいとも思えなかった。
彼女が僕を頼ってくれたことなどない。
彼女は、ヴィヴィ・ヴァレリア公爵令嬢は、1人でも平気な女性だ。
「ゔぁ・・・ヴァレリア公爵家に婚約者に会いに行きます」
「・・・そうか。ヴァレリア嬢はお元気か?」
「・・・は、はい」
ヴィヴィ嬢と会ったのは、いつだっただろうか。
定期的に開かれるお茶会に、前回は行かなかった。
本来なら、その後にお詫びに行くべきところをそのまま放置した。
ヴィヴィ嬢からは手紙も来ず、何も言ってこない。
王城でヴァレリア公爵と会っても何も言われなかったから、彼女は何も公爵に伝えていないのだろう。
このままでは駄目なことはわかっている。
ヴィヴィ嬢との婚約は、父上が決められた王命だ。解消することなどできない。
平民であるキャンディを、婚約者にすることができないことも理解している。
だけど、どうしてもキャンディが愛しいのだ。キャンディに側にいて欲しいのだ。
「あ、兄上。それでは、急ぎますので」
「ああ。ヴァレリア嬢によろしくな」
兄上の声を背中に聞きながら、僕は逃げるようにその場を後にした。
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