「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな

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悪役令嬢回避編

強制的か否か2

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 マリウス殿下は、マリアが目を合わせようとしないから、自分は嫌われていると思っているみたいだけど、私はそうは思っていない。

 多分だけど、マリアはマリウス殿下のことを、ほんの少しだけど意識し始めてる気がする。

 それはおそらく、あの髪飾りを買ってもらったことが原因だと思う。

 私は、マリアのことが大好きだし、マリウス殿下のことも嫌いじゃない。
 どちらかというと、好きだと思う。
ただ、恋愛対象として見れるかというと、現在の時点ではあり得ないとしか言えない。

 私は、殿下のことは婚約者として見てはいるが、それはアニエスとして転生した宿命として受け入れているだけである。

 友達としての好意は持っているし、クランのことも家族として好きだ。

 もしかしたら、恋愛対象としての好きになるかもしれないが、今のところはないとしか言えない。

 だから、もしマリウス殿下とマリアがお互いを好きだと思ったのなら、私は速やかに婚約者の地位から下りるつもりだ。

 もちろん、平民のマリアが王妃になるにはとてつもなく多くの苦労があるだろう。

 いくら聖女といえど、王妃教育まで受けている私と比べたら、私をそのまま婚約者にと言う人たちも出てくるに違いない。

 まぁそこは、リリウム公爵であるお父様にお力を貸していただいて、私もマリアの力になるつもりだ。

 だからー
私はマリアの気持ちの変化を好ましく思っている。
 幸せになって欲しいと思う程度には、私はマリウス殿下のこともマリアのことも好きなのだから。

 苦労は多いかもしれないけど、マリウス殿下はきっと、マリアのことを誰よりも大切にしてくれるだろう。

 ラノベの中でだって、殿下はマリアのことを誰よりも愛していたのだから。

 もし、ちゃんとアニエスと婚約解消できていたなら、きっと幸せな夫婦になっていたに違いない。

 まぁ、マリウス殿下を大好きだったアニエスが了承したかどうかは、わからないけど。

「マリア様」

「あ。アニエス様!どうかされましたか?」

 マリアが満面の笑みで、声をかけた私の方に駆け寄ってくる。

 うーん。私に対しては、いつも通りなんだけどな。
 やっぱり、挙動不審はマリウス殿下限定なわけね。それってやっぱり、なんじゃないのかなぁ。

「マリ様が、マリア様に避けられてると嘆いておられましたわよ」

「・・・そ、そんなことは・・・」

「別に責めているのではありません。ですが、マリ様は心お優しいお方。どうか悲しませないで差し上げてくださいませね」

「・・・アニエス様は殿下のことが大切なのですね」

「そうですね。マリア様のことと同じくらいに大切ですわ」

 私の言葉に、マリアが目を見開く。
まさか、婚約者と同じくらいに、自分のことを大切だと言われると思わなかったのかな?

 でも、それは嘘偽りない、私の気持ちだ。
 アニエス、ごめんね。私は、マリウス殿下にもマリアにも、幸せになってもらいたいんだ。

 もちろん、殿下が私のことを好きでいてくれるなら、私もちゃんと向き合おうと思う。

 ただ・・・私は、善人じゃない。誰かの幸せのために、自分の幸せを捨てたりは出来ない。
 その選択で、誰かを悲しませるとしても。





 

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