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悪役令嬢回避編
事件
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マリアのぎこちなさは、まだ残っているものの、マリウス殿下をあからさまに避けることはなくなった。
まぁ、あの避けてる行動自体が、意識してます!って感じだったけど、そのことがマリウス殿下に伝わっていなければ意味がない。
それに、本当にマリアがマリウス殿下のことを嫌っていたり、好意を抱いていないなら、無理強いするつもりはない。ただ、そうじゃないのなら、仲良くなれたらいいと思っている。
だって、ラノベの中のマリウス殿下は、マリアのことを本当に好きだったから。
もちろん、今のマリウス殿下とラノベのマリウス殿下が同じでないことは、私も理解している。
2人に乙女ゲームやラノベの展開を押し付けるつもりはない。
だから、まぁ避けるのだけはやめてもらって、あとは成り行きに任せるつもりだった。
しかし、強制力なのか何かの因縁なのか、事件は起こった。
魔獣の襲来である。
本来、この世界に住んでいるのは、人間だけではない。
魔法というものが存在するこの世界には、魔獣や魔物というものが存在するのだ。
ただ、我が国と、それらの暮らす国とは距離があり、どちらかが侵略しなければ、ほとんど遭遇することはない。
だけど、それは起こった。
その日、マリアが1人でいるときにご令嬢達に絡まれ、そこにたまたまマリウス殿下が通りかかった。
そして、そこに魔獣が現れたのだ。
学園内は、王太子殿下といえど護衛は付いていない。
そのために、未来の側近候補達がいて、殿下をお守りする役目を担っている。
だから、当然のことながら、レイノルドもルビスもニコラスも、そして教師たちもその場に駆け付けた。
「殿下っ!」
「ちょっ・・・なんで怪我してんのっ!」
私たちが、魔獣の気配に気づき、裏庭に駆けつけたとき、右肩に傷を負い地に膝をついたマリウス殿下と、それを支えるように寄り添うマリア、そしてその遥か後方で真っ青になって震えているご令嬢達がいた。
レイノルドと魔法科の教師たちは魔獣と対峙し、ニコラスと騎士科の教師たちは、ご令嬢たちとマリウス殿下をお守りするように展開する。
ルビスは状況把握のために、マリウス殿下の元に跪いた。
「殿下。一体、何があったのですか?」
「・・・マリア嬢が・・・彼女たちに何かを言われていたところ・・・に通りかかった。そうしたら、いきなり空気が澱んで・・・魔獣が・・・」
息も絶え絶えに、言葉を繋ぐマリウス殿下の傷口をルビスが応急処置していく。
だけど、マリウス殿下の右肩は血で真っ赤に染まり、流れた血が足元に血溜まりを作り始めていた。
これ以上、出血したら、命に関わる。
私は、マリウス殿下を支えていたマリアの肩に触れた。
「あ、アニエス様・・・どうして、こんな危険な場所に」
「わたくしは大丈夫です。それよりもマリア様。どうか聖なる癒しの力をマリウス殿下に」
「だめ・・・なんです。さっきから何度も血を止めようと祈ったのに、全然止まらなくて・・・聖女だなんて言われても、私は何も出来ない・・・」
まぁ、あの避けてる行動自体が、意識してます!って感じだったけど、そのことがマリウス殿下に伝わっていなければ意味がない。
それに、本当にマリアがマリウス殿下のことを嫌っていたり、好意を抱いていないなら、無理強いするつもりはない。ただ、そうじゃないのなら、仲良くなれたらいいと思っている。
だって、ラノベの中のマリウス殿下は、マリアのことを本当に好きだったから。
もちろん、今のマリウス殿下とラノベのマリウス殿下が同じでないことは、私も理解している。
2人に乙女ゲームやラノベの展開を押し付けるつもりはない。
だから、まぁ避けるのだけはやめてもらって、あとは成り行きに任せるつもりだった。
しかし、強制力なのか何かの因縁なのか、事件は起こった。
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ただ、我が国と、それらの暮らす国とは距離があり、どちらかが侵略しなければ、ほとんど遭遇することはない。
だけど、それは起こった。
その日、マリアが1人でいるときにご令嬢達に絡まれ、そこにたまたまマリウス殿下が通りかかった。
そして、そこに魔獣が現れたのだ。
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そのために、未来の側近候補達がいて、殿下をお守りする役目を担っている。
だから、当然のことながら、レイノルドもルビスもニコラスも、そして教師たちもその場に駆け付けた。
「殿下っ!」
「ちょっ・・・なんで怪我してんのっ!」
私たちが、魔獣の気配に気づき、裏庭に駆けつけたとき、右肩に傷を負い地に膝をついたマリウス殿下と、それを支えるように寄り添うマリア、そしてその遥か後方で真っ青になって震えているご令嬢達がいた。
レイノルドと魔法科の教師たちは魔獣と対峙し、ニコラスと騎士科の教師たちは、ご令嬢たちとマリウス殿下をお守りするように展開する。
ルビスは状況把握のために、マリウス殿下の元に跪いた。
「殿下。一体、何があったのですか?」
「・・・マリア嬢が・・・彼女たちに何かを言われていたところ・・・に通りかかった。そうしたら、いきなり空気が澱んで・・・魔獣が・・・」
息も絶え絶えに、言葉を繋ぐマリウス殿下の傷口をルビスが応急処置していく。
だけど、マリウス殿下の右肩は血で真っ赤に染まり、流れた血が足元に血溜まりを作り始めていた。
これ以上、出血したら、命に関わる。
私は、マリウス殿下を支えていたマリアの肩に触れた。
「あ、アニエス様・・・どうして、こんな危険な場所に」
「わたくしは大丈夫です。それよりもマリア様。どうか聖なる癒しの力をマリウス殿下に」
「だめ・・・なんです。さっきから何度も血を止めようと祈ったのに、全然止まらなくて・・・聖女だなんて言われても、私は何も出来ない・・・」
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