拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな

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一つ間違えれば親子。

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 まさかキャリーヌ様が十二歳も年上の方から婚約を打診され・・・

 それをこんなに喜ぶだなんて。

 年上の方がいいとは聞いていたけど、親と変わらないというか、叔父と言ってもおかしくない年齢よ?

「あの・・・本当によろしいのですか?ご両親であるフェルゲン公爵夫妻は納得されていますの?」

 いくらメルキオール皇帝妃とアルトナー女王陛下からの紹介とはいえ、もし不満があるのなら私からお断りしてもいいわ。

 だって、キャリーヌ様のお姉様はマキシミリオン王国の王太子妃。

 これ以上、権力にこだわる必要はないもの。

 自分とさほど年齢の変わらない相手に、娘を嫁がせたくはないはずよ。

「ご心配は無用ですわ。両親もとてもくれていますから」

「そ、そうなのですか?」

「両親は、わたくしが歳の離れた方にしか興味を持てないことを、よく知っているのです。ですが、そうそうそんなお相手は見つかるわけありません。今回、ご紹介いただいたこと、心から感謝しておりますのよ」

 キャリーヌ様ご自身も、それからご家族も納得されているのなら、私がどうこういうことではないけれど。

「近く、侯爵様がご挨拶に来てくださるそうなのです」

「確か、ご両親を事故で亡くされたので爵位を継がれたのでしたね」

「領地に向かう途中での、馬車の事故だったみたいです。それから、婚約者ですけど・・・どうやら他に好いた殿方がいたみたいで、駆け落ちしたらしいです」

 伯母様は、侯爵様の調査書も一緒にフェルゲン公爵家に送っていたそうだ。

 そこには、侯爵家を継いだ時期や、普段の仕事ぶり。
 領地の状態。何故婚約者がいないのか、など細々と書かれていたそうだ。

「もちろん、わたくしが子供過ぎて、アチラからお断りされるかもしれませんけど」

「そんなことはないですわ。だって、もしそうなら先にお断りしていると思いますわ。婚約の打診をして来たということは、侯爵はキャリーヌ様の年齢を理解した上で婚約を望んだということですわ」

「ふふっ。クロエ様、ありがとうございます」

 もちろん、婚約しても婚姻するのは十八歳になってからだけど。

「婚約の公表はしない予定ですから、リグレスト侯爵令嬢のように殿下に関わろうとする人間がいても、わたくしが防波堤になりますわ。ですから、クロエ様はクロエ様のスピードで殿下と過ごされて下さいね」

「ありがとうございます、キャリーヌ様」

 リグレスト侯爵令嬢のように、明確に敵意を向けてくる相手なら平気だけど、あの男爵令嬢のように何を考えているのか分からないタイプもいるから、心強いわ。

 
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