72 / 130
炙り出し。
しおりを挟む
「他国の伯爵令嬢風情が、王太子妃殿下の妹様で公爵令嬢のキャリーヌ様を差し置いて、シリル殿下と婚約だなんて!」
聞こえよがしに話す令嬢たちの声に、予定通りだと思えばいいのか、どこの国にもいるのかとため息を吐けばいいのか。
いずれにしても、愚かだと思う。
シリルが望み、キャリーヌ様が望まない関係を、他人がどうこうと邪推することを愚かと言わず何と言うのか。
本当に、私自身が伯爵令嬢だったとしても、シリルやキャリーヌ様の気持ちを代弁する権利は、彼女たちにはない。
アレらを全て排除すれば、マキシミリオン王国で暮らすこともできるけれど・・・
私は、自分が皇女らしいと自覚している。
人に傅かれ、大切にされることに慣れすぎている。
だから、そうでない相手への見切りが早い。
別に見切ったからといって、相手を罰したり貶めたりするつもりはない。
私が動かなくても、
お姉様が
お母様が
そしてシリルが絶対に動く。
そして私の大切な人たちに罰せられる人たちを、私は助けたりしない。
そんな慈悲深い人間じゃないから。
「あのぉ、そういうの、良くないと思います」
自分の思考の海に沈んでいると、不意にそんな声が聞こえた。
たまたまキャリーヌ様が不浄に行っている間、一人になったタイミングで聞こえて来た会話。
別にそう思われるだろうことは想像していたから、やっぱりねと思っただけだった。
周囲もそうなのか、そうでなくてもその言葉を咎めたりはしないと思っていたのだけど・・・
「っ!何よっ!男爵令嬢なんかが、侯爵家の私に文句をつけるつもりっ!」
「文句なんて・・・ただ、無関係なのに口を挟むのは良くないって思って」
「五月蝿いわねっ!私は別に間違ったことは言ってないわ!
「・・・クロエ、アレはなに?」
止めるべきか迷っていたら、キャリーヌ様が戻って来た。
「ええと・・・」
「ああ、理解ったわ。彼女が殿下の婚約について文句を言ったのね?で、あの子は?」
「彼女の発言は正しいことではないと言ったの。すごいわね。男爵令嬢だと言われてたけど、高位貴族に物申せるなんて」
貴族ばかりが通うこの学園で、男爵令嬢は最下位の位置付けだろう。
頂点に立つのが王族で、その次が公爵令嬢。
マキシミリオン王国には、王女殿下はいないから、筆頭公爵家の令嬢であるキャリーヌ様が頂点。
侯爵令嬢だと言う彼女も、男爵令嬢からすれば雲の上の人。
それなのに、苦言を呈することができるなんて。
怖いもの知らずというか。何も考えてない正義の味方というか。
貴族らしくない娘だと思った。
聞こえよがしに話す令嬢たちの声に、予定通りだと思えばいいのか、どこの国にもいるのかとため息を吐けばいいのか。
いずれにしても、愚かだと思う。
シリルが望み、キャリーヌ様が望まない関係を、他人がどうこうと邪推することを愚かと言わず何と言うのか。
本当に、私自身が伯爵令嬢だったとしても、シリルやキャリーヌ様の気持ちを代弁する権利は、彼女たちにはない。
アレらを全て排除すれば、マキシミリオン王国で暮らすこともできるけれど・・・
私は、自分が皇女らしいと自覚している。
人に傅かれ、大切にされることに慣れすぎている。
だから、そうでない相手への見切りが早い。
別に見切ったからといって、相手を罰したり貶めたりするつもりはない。
私が動かなくても、
お姉様が
お母様が
そしてシリルが絶対に動く。
そして私の大切な人たちに罰せられる人たちを、私は助けたりしない。
そんな慈悲深い人間じゃないから。
「あのぉ、そういうの、良くないと思います」
自分の思考の海に沈んでいると、不意にそんな声が聞こえた。
たまたまキャリーヌ様が不浄に行っている間、一人になったタイミングで聞こえて来た会話。
別にそう思われるだろうことは想像していたから、やっぱりねと思っただけだった。
周囲もそうなのか、そうでなくてもその言葉を咎めたりはしないと思っていたのだけど・・・
「っ!何よっ!男爵令嬢なんかが、侯爵家の私に文句をつけるつもりっ!」
「文句なんて・・・ただ、無関係なのに口を挟むのは良くないって思って」
「五月蝿いわねっ!私は別に間違ったことは言ってないわ!
「・・・クロエ、アレはなに?」
止めるべきか迷っていたら、キャリーヌ様が戻って来た。
「ええと・・・」
「ああ、理解ったわ。彼女が殿下の婚約について文句を言ったのね?で、あの子は?」
「彼女の発言は正しいことではないと言ったの。すごいわね。男爵令嬢だと言われてたけど、高位貴族に物申せるなんて」
貴族ばかりが通うこの学園で、男爵令嬢は最下位の位置付けだろう。
頂点に立つのが王族で、その次が公爵令嬢。
マキシミリオン王国には、王女殿下はいないから、筆頭公爵家の令嬢であるキャリーヌ様が頂点。
侯爵令嬢だと言う彼女も、男爵令嬢からすれば雲の上の人。
それなのに、苦言を呈することができるなんて。
怖いもの知らずというか。何も考えてない正義の味方というか。
貴族らしくない娘だと思った。
1,523
お気に入りに追加
5,579
あなたにおすすめの小説

[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで
みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める
婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様
私を愛してくれる人の為にももう自由になります

王子は婚約破棄を泣いて詫びる
tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。
目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。
「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」
存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。
王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。

【完結】婚約者様、王女様を優先するならお好きにどうぞ
曽根原ツタ
恋愛
オーガスタの婚約者が王女のことを優先するようになったのは――彼女の近衛騎士になってからだった。
婚約者はオーガスタとの約束を、王女の護衛を口実に何度も破った。
美しい王女に付きっきりな彼への不信感が募っていく中、とある夜会で逢瀬を交わすふたりを目撃したことで、遂に婚約解消を決意する。
そして、その夜会でたまたま王子に会った瞬間、前世の記憶を思い出し……?
――病弱な王女を優先したいなら、好きにすればいいですよ。私も好きにしますので。
(完結)婚約破棄から始まる真実の愛
青空一夏
恋愛
私は、幼い頃からの婚約者の公爵様から、『つまらない女性なのは罪だ。妹のアリッサ王女と婚約する』と言われた。私は、そんなにつまらない人間なのだろうか?お父様もお母様も、砂糖菓子のようなかわいい雰囲気のアリッサだけをかわいがる。
女王であったお婆さまのお気に入りだった私は、一年前にお婆さまが亡くなってから虐げられる日々をおくっていた。婚約者を奪われ、妹の代わりに隣国の老王に嫁がされる私はどうなってしまうの?
美しく聡明な王女が、両親や妹に酷い仕打ちを受けながらも、結局は一番幸せになっているという内容になる(予定です)

あなたの破滅のはじまり
nanahi
恋愛
家同士の契約で結婚した私。夫は男爵令嬢を愛人にし、私の事は放ったらかし。でも我慢も今日まで。あなたとの婚姻契約は今日で終わるのですから。
え?離縁をやめる?今更何を慌てているのです?契約条件に目を通していなかったんですか?
あなたを待っているのは破滅ですよ。

どうぞ、(誰にも真似できない)その愛を貫いてくださいませ(笑)
mios
恋愛
公爵令嬢の婚約者を捨て、男爵令嬢と大恋愛の末に結婚した第一王子。公爵家の後ろ盾がなくなって、王太子の地位を降ろされた第一王子。
念願の子に恵まれて、産まれた直後に齎された幼い王子様の訃報。
国中が悲しみに包まれた時、侯爵家に一報が。

学生のうちは自由恋愛を楽しもうと彼は言った
mios
恋愛
学園を卒業したらすぐに、私は婚約者と結婚することになる。
学生の間にすることはたくさんありますのに、あろうことか、自由恋愛を楽しみたい?
良いですわ。学生のうち、と仰らなくても、今後ずっと自由にして下さって良いのですわよ。
9話で完結

あなたには彼女がお似合いです
風見ゆうみ
恋愛
私の婚約者には大事な妹がいた。
妹に呼び出されたからと言って、パーティー会場やデート先で私を置き去りにしていく、そんなあなたでも好きだったんです。
でも、あなたと妹は血が繋がっておらず、昔は恋仲だったということを知ってしまった今では、私のあなたへの思いは邪魔なものでしかないのだと知りました。
ずっとあなたが好きでした。
あなたの妻になれると思うだけで幸せでした。
でも、あなたには他に好きな人がいたんですね。
公爵令嬢のわたしに、伯爵令息であるあなたから婚約破棄はできないのでしょう?
あなたのために婚約を破棄します。
だから、あなたは彼女とどうか幸せになってください。
たとえわたしが平民になろうとも婚約破棄をすれば、幸せになれると思っていたのに――
※作者独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる