拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな

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目的と手段。

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 キャリーヌ様の言葉に、シリルは苦笑いをしている。

 実子がいるのに養子を取るということを、ヨシとしている国や貴族は少ない。

 しかもキャリーヌ様のお姉様は、マキシミリオン王国の王太子妃。

 その実家が、実子の娘を領地に下がらせ、養子を取るなんてある意味醜聞だ。

 病気とかならともかく・・・

 だけど、私はそのことに嫌悪感は持たなかった。

 だって・・・

 うちも同じだもの。
私が貴族に嫁ぎたくないと言えば、お父様もお母様もお姉様も、私の望みを叶えてくれる。

 王族として正しくはなくても、私の望むようにと許してくれる。

 私がアルトナー王国の元婚約者様と婚約したのは、伯母様の策略があったからだけど、それでもお父様たちが頷いたのは婚約することを受け入れたから。

 だから、キャリーヌ様の希望を叶えようとするフェルゲン公爵ご夫妻の気持ちがよく分かった。

「僕も、心当たりを探してはいるんだけどね」

「五歳年上なら、お姉様と同年代の方ですわね。私もお姉様にお願いしてみますわ」

 私も五歳年上の方は、あまりよく知らない。

 でも、メルキオール帝国の華と呼ばれるお姉様なら、見つけられるかもしれないわ。

 ついでにアルトナー王国の方も、伯母様にお願いしようかしら。

「まぁ!ありがとうございます、クロエ様!ご助力いただく分、わたくしがクロエ様をお守りしますわ」

「僕もそばにいるけど、四六時中というわけにはいかない。その時はフェルゲン嬢と一緒にいて欲しい」

「・・・分かったわ」

 私はマキシミリオン王国のことは、あまり知らない。

 アルトナー王国では、伯母様が女王陛下だったから私の身の安全は保証されてたけど、私を見下す元婚約者様のような方もいた。

 友人として王女殿下がそばにいてくれたし、マトモな方々は、私に絡んでくることもなかったけど。

 シリルに想いを寄せるご令嬢は、私の存在を疎ましく思うだろう。

 キャリーヌ様は筆頭公爵家のご令嬢だし、お姉様は王太子妃。

 彼女に物申せる方は、ほとんどいないと思う。

 しかし、こうも警戒しているということは、絡んでくる可能性が高いということね。

 皇女と名乗れば、直接文句を言ってくる方はいないだろうけど、それじゃあ本心は分からないもの。

 まぁ普通の方は、私の容姿でメルキオール帝国の王族と気付かれると思うけど。

 そうじゃない方を知っておきたいのよ。

 シリルと婚約したということは、マキシミリオン王国で暮らす可能性もあるもの。

 危険分子を把握しておくことも大切だわ。

 
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