拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな

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間違ってはないけど間違っています。

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「「は?人妻?」」

 あら?元婚約者様とファンティーヌ様が、仲良く固まっているわ。

「まぁ、驚くだろうね」

「ええ。自分の婚約者だと思ってらっしゃるのでしょうからね」

 想像通り、元婚約者様は激昂した。

「おっ、お前はっ!僕という婚約者がいながら、不貞していたのかっ!子爵令嬢風情がっ!コンラッド公爵になるこの僕をコケにするなんてっ!絶対に許さないぞ!その相手はどこの誰だ!ソイツからも慰謝料を取ってやる!」

「慰謝料?何故ですの?私が婚姻したのは三年も前でしてよ」

「は?」

「ですから、私が婚姻したのは三年前ですわ。ハァ。もう飽きましたわ。もう終わらせてもよろしくて?王配殿下。それとコンラッド公爵」

 あら、お姉様ってば飽きてしまわれたのね。

 先ほどまでノリノリだったのに。

「ちっ、父上?」

「ご迷惑をおかけしました、メルキオール様。どうぞお好きなように」

「父上?何をおっしゃっているのです?ルーベンス子爵令嬢でしょう?メルキオールとは何ですか?まさか嫁ぎ先の家名?」

「ここまでお前が愚かだとは思わなかった。アドルファスが王太女殿下に望まれたのもあるが、お前が後継候補になれたのは、ルーベンス子爵令嬢が婚約者になるというのが条件だったのだ。その婚約者を蔑ろにした挙げ句、こんな茶番を卒業パーティーで繰り広げるとはな」

 元婚約者様はお父上の言葉に不満そうだけど、まさしく茶番よね。

 せめて相手にやって欲しかったわ。

「父上っ!茶番とはどういうことですか!それに何故、子爵令嬢との婚約にそんなにこだわるのです?」

「お前はまだ気付かないのか?メルキオール様は先ほど何とおっしゃった?三年前に婚姻されているとおっしゃったのだぞ?何故その方が、ルーベンス子爵令嬢ではないと分からない?」

「「は?」」

 いや、周囲をご覧なさいよ?
皆様の方が「は?」という表情よ?

 私も人のことは言えないけど、婚約者の顔が分からないなんて、一年もの婚約者期間なにしてたんだ?と思われてるわよ。

 他人・・・身内ではあるけど、他人に婚約破棄を突きつけるなんて。

 しかも、第二夫人になれだなんて。

 おかわいそうに。
公爵夫人なんて、今にも倒れそうよ。

「え?子爵令嬢・・・ではない?でも、え?黒髪黒目で・・・」

「世の中に黒髪黒目のご令嬢が、ルーベンス子爵令嬢だけだとでも思っているのか!そもそも、婚約者の顔すらわからないとはどういうことだ!私は何度も何度も言ったはずだ。婚約者とちゃんと交流をしろと!婚約者を大切にしろと!どういうことか説明してみろ!」
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