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名乗り出るべきか、それが問題です。

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「ふふっ。お優しい公爵令息様」

「あ、ああ。コンラッド公爵家を継ぐ僕との婚約がなくなれば、まともな嫁ぎ先は見つからないだろう。あ、愛妾、いや、第二夫人として可愛がってやる」

「ちょっ、ちょっと!クライヴ!何言っているのよっ!」

 目の前で広げられているくだらない寸劇に、名乗り出るべきか真剣に迷う。

 元婚約者様は、完全にお姉様の美貌に参ってしまったみたい。

 まぁ、お姉様の容姿がタイプでない方でも、ほとんどの人は見惚れるものね。

 街を歩けば、すれ違う男性の視線を釘付けにして、お隣にいる婚約者や奥様の不興を買うまでがワンセット。

 中には顔見知りですらないのに、いきなり求婚してくる強者もいたそうよ。

 基本的には馬車を使うけど、学園時代にお友達と出かける時とかはいつもそうで、ご令嬢の中では有名な一幕なのだとか。

 でも、元婚約者様はお隣のファンティーヌ様みたいなタイプがお好きだったのでは?

 お姉様とファンティーヌ様は、完全に真逆のタイプだと思うけど。

 お姉様がお美しいことは分かってるし、元婚約者様には興味がないから私嫉妬もしないけど、ファンティーヌ様はそうはいかないみたいね。

「どういうことっ?第二夫人だなんてっ!」

「ち、父上が決めた婚約者なんだし、やっぱり破棄は良くないだろ?ファンティーヌだって、彼女がいれば面倒な公爵夫人の仕事もしないで済むし。なっ?」

 そのお父上は、もう表情が抜け落ちているわよ。

 ご夫人に至っては、今にも倒れそう。

 まぁ確かに今日この日をもって、ファンティーヌ様は女男爵となられるわけで、公爵家を継ぐだった元婚約者様と婚姻することは可能だけど・・・

 すでにコンラッド公爵様は、ご子息の廃籍をお決めになられてるから、婚姻したらファンティーヌ女男爵様の夫にはなれるけど、貴族ではなくなるわよ?

 しかし、まぁ、を放置して話が盛り上がっているわね。

「だけど、第二夫人だなんて!ねぇ!この人と夜を共にしたりしないわよねっ?単に仕事をさせるためだけよねっ?」

「え、あ、それは・・・」

「クライヴっ!私のこと好きって言ったじゃない!子爵令嬢なんか公爵夫人に相応しくないって言ったじゃない!」

 あらあら。
痴話喧嘩は他所でやって欲しいのだけど。

 そんな二人をよそに、お姉様は楽しそうにコロコロと笑っている。

「ほほほ。本当にコンラッド公爵令息様は、ご冗談がお上手ですこと。ですが、私はすでに人妻ですから第二夫人にはなれませんわ」

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