25 / 28
第25話
しおりを挟む
婚約してからー
毎日のように・・・いや、ほぼ毎日セラフィム子爵家に訪れる王太子殿下に、ニケは思わずため息が漏れる。
この人、ちゃんと仕事してるのかしら?
王太子である。まだ学園に通う前とはいえ、公務もある。
アシュタル王国は、第1王子が王太子になることが決まっている。
ちなみに、ケルドラード皇国も同じで、フォレスト王国は男女問わず第1子が後継となる。
だから、ニケの伯曾祖父はフォレスト王国の王太女の王配となった。
「何を考えているの?」
甘い笑みを浮かべ、手を取るラギトに、ニケはゆっくりとかぶりを振った。
「ラギト様。毎日訪れて下さるのはありがたいですが、ご無理されていませんか?」
婚約者を溺愛するあまりに仕事と疎かにする人間を、兄ノクスが許容するとは思えない。
ノクスは王太子殿下の側近なのだから、ラギトの仕事ぶりを見ているはずだ。
ということは、ラギトはニケと会って戻ってから仕事をしているということだ。
「愛しいニケと会うのに、無理なことなんて何もないよ」
(甘い。甘い!甘い!!あま~い!)
家族に溺愛されているニケである。優しくされることにも、甘やかされることにも慣れている。
だが、3年間のマグエルとの婚約で、婚約者に溺愛されることには慣れていないのである。
つまりは・・・現在のニケの顔は真っ赤だということだ。
「ああ!可愛い。そんな可愛い顔を見せられたら、我慢出来なくなる。だ、だが節度ある交際をしないとノクス殿に殺される」
ラギトがそんなニケの顔を見て、ブツブツと呟いているが、いくら兄でも殺しはしないと思うニケである。
父も兄も義兄も、全員がラギトとの婚約に顔をしかめ、まだ早いのではないかと不平をもらした。
そして全員がその妻、つまり母と義姉と姉に耳を引っ張られて連れ去られた。
セラフィム子爵家では、女性上位である。いや、みんな夫を立てているが、怒らせて怖いのは女性陣なのだ。
全員が妻を溺愛していることもあり、女性陣が認めた婚約を男性陣は渋々認めるしかなかった。
つまりは渋々とはいえ認めたのである。
どれだけ溺愛していようと、婚約者になったラギトを排除するようなことは、セラフィム子爵家の人間はしない。
もちろん、マグエルのようにニケを粗雑に扱えば話は変わるだろうが、それでもニケの判断なく手を出したりはしない。
マグエルの時のように、ニケが判断するまで待つだろう。
だが節度は保って欲しいと思う。
そしてその激甘な態度を、少々控えて欲しい。ニケ以外には冷酷腹黒らしいが、その場面を見ることのないニケにとっては、激甘溺愛王太子なのであった。
毎日のように・・・いや、ほぼ毎日セラフィム子爵家に訪れる王太子殿下に、ニケは思わずため息が漏れる。
この人、ちゃんと仕事してるのかしら?
王太子である。まだ学園に通う前とはいえ、公務もある。
アシュタル王国は、第1王子が王太子になることが決まっている。
ちなみに、ケルドラード皇国も同じで、フォレスト王国は男女問わず第1子が後継となる。
だから、ニケの伯曾祖父はフォレスト王国の王太女の王配となった。
「何を考えているの?」
甘い笑みを浮かべ、手を取るラギトに、ニケはゆっくりとかぶりを振った。
「ラギト様。毎日訪れて下さるのはありがたいですが、ご無理されていませんか?」
婚約者を溺愛するあまりに仕事と疎かにする人間を、兄ノクスが許容するとは思えない。
ノクスは王太子殿下の側近なのだから、ラギトの仕事ぶりを見ているはずだ。
ということは、ラギトはニケと会って戻ってから仕事をしているということだ。
「愛しいニケと会うのに、無理なことなんて何もないよ」
(甘い。甘い!甘い!!あま~い!)
家族に溺愛されているニケである。優しくされることにも、甘やかされることにも慣れている。
だが、3年間のマグエルとの婚約で、婚約者に溺愛されることには慣れていないのである。
つまりは・・・現在のニケの顔は真っ赤だということだ。
「ああ!可愛い。そんな可愛い顔を見せられたら、我慢出来なくなる。だ、だが節度ある交際をしないとノクス殿に殺される」
ラギトがそんなニケの顔を見て、ブツブツと呟いているが、いくら兄でも殺しはしないと思うニケである。
父も兄も義兄も、全員がラギトとの婚約に顔をしかめ、まだ早いのではないかと不平をもらした。
そして全員がその妻、つまり母と義姉と姉に耳を引っ張られて連れ去られた。
セラフィム子爵家では、女性上位である。いや、みんな夫を立てているが、怒らせて怖いのは女性陣なのだ。
全員が妻を溺愛していることもあり、女性陣が認めた婚約を男性陣は渋々認めるしかなかった。
つまりは渋々とはいえ認めたのである。
どれだけ溺愛していようと、婚約者になったラギトを排除するようなことは、セラフィム子爵家の人間はしない。
もちろん、マグエルのようにニケを粗雑に扱えば話は変わるだろうが、それでもニケの判断なく手を出したりはしない。
マグエルの時のように、ニケが判断するまで待つだろう。
だが節度は保って欲しいと思う。
そしてその激甘な態度を、少々控えて欲しい。ニケ以外には冷酷腹黒らしいが、その場面を見ることのないニケにとっては、激甘溺愛王太子なのであった。
308
お気に入りに追加
880
あなたにおすすめの小説
恋人が聖女のものになりました
キムラましゅろう
恋愛
「どうして?あんなにお願いしたのに……」
聖騎士の叙任式で聖女の前に跪く恋人ライルの姿に愕然とする主人公ユラル。
それは彼が『聖女の騎士(もの)』になったという証でもあった。
聖女が持つその神聖力によって、徐々に聖女の虜となってゆくように定められた聖騎士たち。
多くの聖騎士達の妻が、恋人が、婚約者が自分を省みなくなった相手を想い、ハンカチを涙で濡らしてきたのだ。
ライルが聖女の騎士になってしまった以上、ユラルもその女性たちの仲間入りをする事となってしまうのか……?
慢性誤字脱字病患者が執筆するお話です。
従って誤字脱字が多く見られ、ご自身で脳内変換して頂く必要がございます。予めご了承下さいませ。
完全ご都合主義、ノーリアリティ、ノークオリティのお話となります。
菩薩の如き広いお心でお読みくださいませ。
小説家になろうさんでも投稿します。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】
私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。
もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。
※マークは残酷シーン有り
※(他サイトでも投稿中)
あなたの妻にはなりません
風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から大好きだった婚約者のレイズ。
彼が伯爵位を継いだと同時に、わたしと彼は結婚した。
幸せな日々が始まるのだと思っていたのに、夫は仕事で戦場近くの街に行くことになった。
彼が旅立った数日後、わたしの元に届いたのは夫の訃報だった。
悲しみに暮れているわたしに近づいてきたのは、夫の親友のディール様。
彼は夫から自分の身に何かあった時にはわたしのことを頼むと言われていたのだと言う。
あっという間に日にちが過ぎ、ディール様から求婚される。
悩みに悩んだ末に、ディール様と婚約したわたしに、友人と街に出た時にすれ違った男が言った。
「あの男と結婚するのはやめなさい。彼は君の夫の殺害を依頼した男だ」
愛のゆくえ【完結】
春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした
ですが、告白した私にあなたは言いました
「妹にしか思えない」
私は幼馴染みと婚約しました
それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか?
☆12時30分より1時間更新
(6月1日0時30分 完結)
こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね?
……違う?
とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。
他社でも公開
──いいえ。わたしがあなたとの婚約を破棄したいのは、あなたに愛する人がいるからではありません。
ふまさ
恋愛
伯爵令息のパットは、婚約者であるオーレリアからの突然の別れ話に、困惑していた。
「確かにぼくには、きみの他に愛する人がいる。でもその人は平民で、ぼくはその人と結婚はできない。だから、きみと──こんな言い方は卑怯かもしれないが、きみの家にお金を援助することと引き換えに、きみはそれを受け入れたうえで、ぼくと婚約してくれたんじゃなかったのか?!」
正面に座るオーレリアは、膝のうえに置いたこぶしを強く握った。
「……あなたの言う通りです。元より貴族の結婚など、政略的なものの方が多い。そんな中、没落寸前の我がヴェッター伯爵家に援助してくれたうえ、あなたのような優しいお方が我が家に婿養子としてきてくれるなど、まるで夢のようなお話でした」
「──なら、どうして? ぼくがきみを一番に愛せないから? けれどきみは、それでもいいと言ってくれたよね?」
オーレリアは答えないどころか、顔すらあげてくれない。
けれどその場にいる、両家の親たちは、その理由を理解していた。
──そう。
何もわかっていないのは、パットだけだった。
拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】
僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる