あなたなんて大嫌い

みおな

文字の大きさ
上 下
7 / 28

第7話

しおりを挟む
「セラフィム子爵家から婚約解消の申し出があった。マグエル。お前有責だ」

 父親であるロートレック侯爵の言葉に、マグエルは目を丸くする。

「ち、父上?何をおっしゃっているのですか?子爵家風情が侯爵家である我が家に婚約解消の申し出?僕有責などと・・・」

「はぁぁぁ。お前はそこまで愚かだったのだな。リオルが出て行ったためにお前を嫡子とするべく結ぼうとした婚約の意味も、セラフィム子爵家の価値も理解していなかったとは」

 リオルの教育にばかり力を入れすぎて、マグエルを甘やかせたことをつくづく後悔する。

「お義父様?マグエルお義兄様を愚かだなんて、どうしてそんな酷いことをおっしゃるの?」

「ミリィ。お前は確かに体が丈夫ではない。だが、婚約者を蔑ろにしても付いていなければならないほどの病気ではないのだ」

「父上っ!!何故、そんな酷いことをミリィに言うのですかっ!」

 マグエルの反論に、父親である侯爵は頭を抱えてしゃがみ込みたい気持ちになった。侯爵としてそんな無様な真似はしたくない。したくないが、こんな愚息を後継にしなければならないのかと絶望感に襲われたのだ。

「ち、父上?」

「お前に継がせて没落させるわけにはいかん。リオルを探すか、見つからねば遠縁からでも養子にもらうしかあるまい」

「兄上を探す?な、何をおっしゃっているのですか?」

 セラフィム子爵家がもし力を貸してくれるなら見つけることはできるだろう。
 本人が戻ると言うかどうかは分からないが。

 もしかしたら、男爵家や子爵家という身分の低い令嬢と恋仲だったのかもしれないし、もしかしたら平民なのかもしれない。
 リオルが望むくらいなら、身分は低くとも優れた令嬢なのだろう。

 愚息に跡を継がせるくらいなら、平民の娘を貴族の養女にして、リオルの妻にした方がマシである。

 マグエルは、セラフィム子爵家の怒りを買っているのだ。
 このまま侯爵家に置いておくわけにはいかない。

「マグエル。2択だ。このまま大人しく家を出て、伯爵家のエリンと共に暮らすか、それとも平民になるか。どちらでも好きな方を選べ」

「は?エリン?平民?父上?」

「お前は廃籍だ。3日だけ待ってやる。それから、ミリィ。お前もこのまま病気だと言って部屋から出ないのであれば、教会の診療所に入れる。病弱ながらもキチンと侯爵家の令嬢として振る舞えるなら、縁談を探してやろう。お前も3日待つから良く考えて決めなさい」

 ロートレック侯爵の言葉に、マグエルもミリィも言葉を発することが出来ない。

 特にマグエルは、侯爵家の後継の座からいきなり廃籍などと言われ、呆然とするしかなかった。
 
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

恋人が聖女のものになりました

キムラましゅろう
恋愛
「どうして?あんなにお願いしたのに……」 聖騎士の叙任式で聖女の前に跪く恋人ライルの姿に愕然とする主人公ユラル。 それは彼が『聖女の騎士(もの)』になったという証でもあった。 聖女が持つその神聖力によって、徐々に聖女の虜となってゆくように定められた聖騎士たち。 多くの聖騎士達の妻が、恋人が、婚約者が自分を省みなくなった相手を想い、ハンカチを涙で濡らしてきたのだ。 ライルが聖女の騎士になってしまった以上、ユラルもその女性たちの仲間入りをする事となってしまうのか……? 慢性誤字脱字病患者が執筆するお話です。 従って誤字脱字が多く見られ、ご自身で脳内変換して頂く必要がございます。予めご了承下さいませ。 完全ご都合主義、ノーリアリティ、ノークオリティのお話となります。 菩薩の如き広いお心でお読みくださいませ。 小説家になろうさんでも投稿します。

誰にも信じてもらえなかった公爵令嬢は、もう誰も信じません。

salt
恋愛
王都で罪を犯した悪役令嬢との婚姻を結んだ、東の辺境伯地ディオグーン領を治める、フェイドリンド辺境伯子息、アルバスの懺悔と後悔の記録。 6000文字くらいで摂取するお手軽絶望バッドエンドです。 *なろう・pixivにも掲載しています。

許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください> 私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

【完結】ある公爵の後悔

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
王女に嵌められて冤罪をかけられた婚約者に会うため、公爵令息のチェーザレは北の修道院に向かう。 そこで知った真実とは・・・ 主人公はクズです。

初恋の相手と結ばれて幸せですか?

豆狸
恋愛
その日、学園に現れた転校生は私の婚約者の幼馴染で──初恋の相手でした。

婚約解消は君の方から

みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。 しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。 私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、 嫌がらせをやめるよう呼び出したのに…… どうしてこうなったんだろう? 2020.2.17より、カレンの話を始めました。 小説家になろうさんにも掲載しています。

あなたの妻にはなりません

風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から大好きだった婚約者のレイズ。 彼が伯爵位を継いだと同時に、わたしと彼は結婚した。 幸せな日々が始まるのだと思っていたのに、夫は仕事で戦場近くの街に行くことになった。 彼が旅立った数日後、わたしの元に届いたのは夫の訃報だった。 悲しみに暮れているわたしに近づいてきたのは、夫の親友のディール様。 彼は夫から自分の身に何かあった時にはわたしのことを頼むと言われていたのだと言う。 あっという間に日にちが過ぎ、ディール様から求婚される。 悩みに悩んだ末に、ディール様と婚約したわたしに、友人と街に出た時にすれ違った男が言った。 「あの男と結婚するのはやめなさい。彼は君の夫の殺害を依頼した男だ」

さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】 私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。 もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。 ※マークは残酷シーン有り ※(他サイトでも投稿中)

処理中です...