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第二十九話 賑やかなパーティー
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「す、すごい……」
同日の夜、全ての仕事を片付けた私達ギルドの面々は、ラフな格好で向かった会場……クラヴェル家の庭に広がる光景に、驚きの表情を隠せなかった。
様々な料理にお酒にジュースと、多くのものが用意されている。まるで貴族がたくさん参加するパーティーなのではないかと錯覚しそうだわ。
「みんな、今日は来てくれてありがとう! 俺とうちのコックが腕によりをかけて用意したから、ぜひ楽しんでいってくれ!」
招待してくれたサイラス様にお礼を言いながら、それぞれが好きな料理や飲み物を取りに行き始めた。
どうやら、今日はビュッフェ形式を採用しているみたいね。私も早く取りにいかないと、食べたいものが無くなってしまうわね。
「エリシア、こっちこっち」
「サイラス様? ちょ、ちょっと……」
料理を取りにいこうとしていると、突然サイラス様がやってきて、私の手を掴んで近くの席に座らせてきた。
う、うん……席までリードしてくれるのは嬉しいけど、これではせっかく用意してもらった料理が食べられないわ。
「ちょっと待っててな」
「サイラス様?」
「はい、どうぞ」
私が困惑している間に、サイラス様はテキパキと料理を皿に乗せて、私の前に静かに置いてくれた。
それは、ステーキや魚料理、サラダにスイーツといった、私の大好物ばかりが並んでいた。
「エリシアが好きなのを持ってきたから、好きなだけ食べてくれ!」
「私の好きなものなんて、よく覚えていたわね……」
「学生時代に色々聞いたり、食べてるのを見たりしてるからな。これくらい余裕さ!」
学生の時に互いに好きな食べ物や飲み物の話はしたことがあるけど、それを完璧に覚えているなんて、嬉しいようなビックリなような……。
あ、でも私もサイラス様の好きな食べ物なら、覚えているわね……。
「ありがとう、サイラス様。お礼に、私もあなたの好きなものを取ってきてあげるわ」
「な、なんだって!? エリシアが俺のために……それに、俺の好物を覚えて……? か、感動で前が見えない……!」
「ちょ、そのままの勢いで抱きつかないでよね! ギルドのみんながいるんだから!」
ただでさえ、最近みんなが私達の会話を見ている視線が生暖かいし、たまにきゃ~! なんて黄色い声も聞こえたりして、恥ずかしいことこのうえない。
「なんだよ~、俺はいつでもエリシアのことを想ってるんだぜ? そのご褒美に、多少は抱きついても良いじゃないか!」
「あ、それなら私が代わりにどうですか?」
「……えっ……?」
ギルドの職員の中でも小柄で可愛らしい子が、甘えた声でサイラス様に近づいてくる。どうやらすでに結構飲んだ後のようで、頬がかなり紅潮している。
「そうかい? それは光栄なんだが、俺がしたいのはエリシアだけなんだ。ごめんな」
「残念です……あーあ、アリシアさんが羨ましいですねぇ。まあいいや、今日はやけ酒じゃい!」
女の人は、一瞬だけこちらを向いてから、まだたくさんあるお酒を取りに行った。
……あの女の人がサイラス様に言い寄ろうとした時、自分でも驚いてひっくり返ってしまいそうなくらい、胸の奥にどす黒いなにかが渦巻いていた。
たぶん……これって嫉妬よね? あんまりそういうのって無いのだけど、サイラス様のことになると別みたい。
そんなことを思っていると、足元がおぼつかないレージュ様がやってきた。
「うぅ……ぐすっ……サイラスはいっつもいっつも僕に心配ばかりかけてぇ! お前を待っているときぃ……どれだけ心配したか、わかってるのかぁ!?」
ここに来たと思ったら、乱暴に椅子に座り、手に持っていたジョッキの中身を一気に飲み干した。
「本当に悪かったって!」
「唯一の親友を失ったら……ぼ、ぼくはぁ……」
「ほら、これでも飲んで元気出せって!」
「ごくっごくっ……ぷはー!」
レージュ様って、お酒を飲むとこんな感じなのね……普段の冷静沈着なのを知ってると、ギャップが凄い。
「エリシアさまもぉ! 無茶はしないでくださいよぉ! こいつの未来のお嫁さんにぃ、なにかあったら……ぼくはぁ、死んでも死に切れませんよぉ!」
「お、お嫁さん!?」
「あなたのようなぁ……素晴らしい女性は、この世に絶対にいませんっ! わたしはぁ……ひっく。断言しちゃいますよぉ! 器量も良くてぇ……行動力もあってぇ……サイラスに一途でぇ……はぁ……僕も、エリシア様のような妻が……ほしぃ……」
なんか、後半部分に聞き捨てならないセリフがあったような気がするのだけど……??
「ほらほら、俺達の真の友情と、未来のお前の嫁さんを祝して、かんぱーい!」
「もうっ、乾杯じゃないわよ! あなたも酔っぱらってきているでしょう!? あとそこと、そことそこの人も! ニヤニヤしてないで助けてくださいー!」
私の必死の呼びかけに答えてくれる人は誰もおらず、結局そのままレージュ様が酔いつぶれるまで、二人は私との結婚式はどんなものがいいのかとか、後の生活の妄想とかを、ずっと楽しそうに話していた。
おかげで、サリューを採りに行った時よりも、精神的に疲れた……。
「いやー笑った笑った! それに、こんなに酒を飲んだのも久しぶりだな!」
「そ、そう……楽しかったなら、なによりだわ……」
「エリシア、耳まで真っ赤だぞ? エリシアも酔っぱらったか?」
「誰のせいだと思っているのよ、もう……」
目の前で散々一方的に愛情をぶつけられ続けたのだから、真っ赤にもなるわよ……サイラス様のばかっ。
「も、もしかして……顔が真っ赤になるほど怒らせちゃったのか!? 俺、さすがに調子に乗り過ぎたか!?」
「怒ってないわよ。別に嫌ってわけでもないし……むしろ、嬉しいというか……」
私も、多少は酔っぱらっているのかしら。いつもだったら、そんなわけないでしょ! もうっ! とか言ってそうな場面なのに、なんともしおらしいことを言ってしまった。
うぅ、この胸の奥がムズムズするような感覚はなに? もしかして、これが恋心なの……? 駄目だ、私も多少お酒を飲んだせいか、頭が回っていない。変なことを言う前に、休んだほうがいいかもしれない。
同日の夜、全ての仕事を片付けた私達ギルドの面々は、ラフな格好で向かった会場……クラヴェル家の庭に広がる光景に、驚きの表情を隠せなかった。
様々な料理にお酒にジュースと、多くのものが用意されている。まるで貴族がたくさん参加するパーティーなのではないかと錯覚しそうだわ。
「みんな、今日は来てくれてありがとう! 俺とうちのコックが腕によりをかけて用意したから、ぜひ楽しんでいってくれ!」
招待してくれたサイラス様にお礼を言いながら、それぞれが好きな料理や飲み物を取りに行き始めた。
どうやら、今日はビュッフェ形式を採用しているみたいね。私も早く取りにいかないと、食べたいものが無くなってしまうわね。
「エリシア、こっちこっち」
「サイラス様? ちょ、ちょっと……」
料理を取りにいこうとしていると、突然サイラス様がやってきて、私の手を掴んで近くの席に座らせてきた。
う、うん……席までリードしてくれるのは嬉しいけど、これではせっかく用意してもらった料理が食べられないわ。
「ちょっと待っててな」
「サイラス様?」
「はい、どうぞ」
私が困惑している間に、サイラス様はテキパキと料理を皿に乗せて、私の前に静かに置いてくれた。
それは、ステーキや魚料理、サラダにスイーツといった、私の大好物ばかりが並んでいた。
「エリシアが好きなのを持ってきたから、好きなだけ食べてくれ!」
「私の好きなものなんて、よく覚えていたわね……」
「学生時代に色々聞いたり、食べてるのを見たりしてるからな。これくらい余裕さ!」
学生の時に互いに好きな食べ物や飲み物の話はしたことがあるけど、それを完璧に覚えているなんて、嬉しいようなビックリなような……。
あ、でも私もサイラス様の好きな食べ物なら、覚えているわね……。
「ありがとう、サイラス様。お礼に、私もあなたの好きなものを取ってきてあげるわ」
「な、なんだって!? エリシアが俺のために……それに、俺の好物を覚えて……? か、感動で前が見えない……!」
「ちょ、そのままの勢いで抱きつかないでよね! ギルドのみんながいるんだから!」
ただでさえ、最近みんなが私達の会話を見ている視線が生暖かいし、たまにきゃ~! なんて黄色い声も聞こえたりして、恥ずかしいことこのうえない。
「なんだよ~、俺はいつでもエリシアのことを想ってるんだぜ? そのご褒美に、多少は抱きついても良いじゃないか!」
「あ、それなら私が代わりにどうですか?」
「……えっ……?」
ギルドの職員の中でも小柄で可愛らしい子が、甘えた声でサイラス様に近づいてくる。どうやらすでに結構飲んだ後のようで、頬がかなり紅潮している。
「そうかい? それは光栄なんだが、俺がしたいのはエリシアだけなんだ。ごめんな」
「残念です……あーあ、アリシアさんが羨ましいですねぇ。まあいいや、今日はやけ酒じゃい!」
女の人は、一瞬だけこちらを向いてから、まだたくさんあるお酒を取りに行った。
……あの女の人がサイラス様に言い寄ろうとした時、自分でも驚いてひっくり返ってしまいそうなくらい、胸の奥にどす黒いなにかが渦巻いていた。
たぶん……これって嫉妬よね? あんまりそういうのって無いのだけど、サイラス様のことになると別みたい。
そんなことを思っていると、足元がおぼつかないレージュ様がやってきた。
「うぅ……ぐすっ……サイラスはいっつもいっつも僕に心配ばかりかけてぇ! お前を待っているときぃ……どれだけ心配したか、わかってるのかぁ!?」
ここに来たと思ったら、乱暴に椅子に座り、手に持っていたジョッキの中身を一気に飲み干した。
「本当に悪かったって!」
「唯一の親友を失ったら……ぼ、ぼくはぁ……」
「ほら、これでも飲んで元気出せって!」
「ごくっごくっ……ぷはー!」
レージュ様って、お酒を飲むとこんな感じなのね……普段の冷静沈着なのを知ってると、ギャップが凄い。
「エリシアさまもぉ! 無茶はしないでくださいよぉ! こいつの未来のお嫁さんにぃ、なにかあったら……ぼくはぁ、死んでも死に切れませんよぉ!」
「お、お嫁さん!?」
「あなたのようなぁ……素晴らしい女性は、この世に絶対にいませんっ! わたしはぁ……ひっく。断言しちゃいますよぉ! 器量も良くてぇ……行動力もあってぇ……サイラスに一途でぇ……はぁ……僕も、エリシア様のような妻が……ほしぃ……」
なんか、後半部分に聞き捨てならないセリフがあったような気がするのだけど……??
「ほらほら、俺達の真の友情と、未来のお前の嫁さんを祝して、かんぱーい!」
「もうっ、乾杯じゃないわよ! あなたも酔っぱらってきているでしょう!? あとそこと、そことそこの人も! ニヤニヤしてないで助けてくださいー!」
私の必死の呼びかけに答えてくれる人は誰もおらず、結局そのままレージュ様が酔いつぶれるまで、二人は私との結婚式はどんなものがいいのかとか、後の生活の妄想とかを、ずっと楽しそうに話していた。
おかげで、サリューを採りに行った時よりも、精神的に疲れた……。
「いやー笑った笑った! それに、こんなに酒を飲んだのも久しぶりだな!」
「そ、そう……楽しかったなら、なによりだわ……」
「エリシア、耳まで真っ赤だぞ? エリシアも酔っぱらったか?」
「誰のせいだと思っているのよ、もう……」
目の前で散々一方的に愛情をぶつけられ続けたのだから、真っ赤にもなるわよ……サイラス様のばかっ。
「も、もしかして……顔が真っ赤になるほど怒らせちゃったのか!? 俺、さすがに調子に乗り過ぎたか!?」
「怒ってないわよ。別に嫌ってわけでもないし……むしろ、嬉しいというか……」
私も、多少は酔っぱらっているのかしら。いつもだったら、そんなわけないでしょ! もうっ! とか言ってそうな場面なのに、なんともしおらしいことを言ってしまった。
うぅ、この胸の奥がムズムズするような感覚はなに? もしかして、これが恋心なの……? 駄目だ、私も多少お酒を飲んだせいか、頭が回っていない。変なことを言う前に、休んだほうがいいかもしれない。
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