26 / 39
第二十六話 トラルキル家の末路
しおりを挟む
「あ、主様! シエル様!」
無事に屋敷に帰ってきた私達の元に、エレンが血相を変えて飛んできました。
「どうかしたのか?」
「ルネ様が、目を覚まされたのです!」
「本当ですの!? エヴァン様、早く行きましょう!」
急いでルネがいる客間へと向かうと、そこにはボーっと天井を眺めているルネの痛々しい姿がありました。
「ルネ、目が覚めたのですね。私のこと、わかりますか?」
「……シエ、ル……様……」
ゆっくりと震える手を私に伸ばしてきたルネの目からは、一筋の涙が流れ落ちました。
それにつられて私の涙を流しながら、ルネの手を優しく握りました。
「本当に無事で良かったですわ……右手は動きそうですか?」
「…………」
ルネは小さく首を横に振りました。
やはり、右手はもう治らないということですのね……もっと私に力があれば……。
「私……どうして……ここは……?」
「ここは、シャルディー家の屋敷ですわ。あなたはフィルモート家の領地にある森に倒れていたところを、領民が助けて……色々あってここに運ばれてきたのですわ」
本当は、もっと詳しく事情を説明してさしあげたいけど、まだルネはぼんやりしているみたいなので、細かい話を理解出来なさそうですわ。
「ルネ殿、俺達は先程、廃虚となったトラルキル家の屋敷に行ってきた。そこで、ローラン殿が残してくれた、フィルモート家の罪の証拠を見つけたんだが……屋敷でなにがあったかまではわからなかった。もし話せるようなら、何があったか話してくれないか?」
エヴァン様のお願いに頷いたルネは、ゆっくりと話し始めてくださいました。
「私も……詳しいことは、わかりません。ローラン様が亡くなられて……屋敷が混乱していた時に……突然襲われました」
「襲われたですって? それは、一体どこの誰ですの?」
「わかりません……ただ、兵の中には……国の軍に所属している人間もいたので……おそらく、国の兵だと思います」
国の兵士? どうして国がトラルキル家の屋敷を襲って……そうですわ、確かフィルモート家は国に賄賂を渡して、その見返りとして国は悪事を見逃していたのでした。
それを、残った人達に広められるのを恐れて、襲ったのですね!
「その指示をしていた人物が……ステイシー様と……アイシャ様……でした……」
「お義母様とお姉様が!?」
「私は……ローラン様から、彼女達について少し聞いてましたが……まさか、あそこまで残忍とは……」
一体何をしたのでしょう……聞くのが怖いですが、現実から目を背けていては、何も解決しませんわ。
「お二人は、一体何を……?」
「逃げ惑う人間、立ち向かう人間……平等に亡くなるまで徹底的に……いたぶったのです。生かす条件として、口に出すのも憚れるような……おぞましいことをさせて、最後は殺した時のあの笑顔は……まさに悪魔でした」
「っ……!!」
なんですの、それ……トラルキル家の方々が、一体何をしたというんですか!? 全て、悪事を働いていたフィルモート家と国が悪いのに……!!
「トラルキル家の人間は……全員殺されました。私は、なんとか隙を突いて逃げだして、何とか川に飛び込んで……気が付いたら、どこかの岸に流れ着きました。そこからまた逃げたのですが……」
「力尽きてしまったと。それを、フィルモート家の領民が見つけたのか」
それが、トラルキル家が崩壊していた理由だったのですね……ああ、頭が……体が、怒りでどうにかなってしまいそう。
「事情はわかった。病み上がりなのに、無理をさせて申し訳ない」
「こちらこそ……看病などさせてしまって、申し訳ございません」
「人として、当然のことをしているだけだ。では、俺達はそろそろ失礼する。なにかあったら、我が家の使用人に遠慮なく声をかけてほしい。シエル、行こう」
「……はい。お大事にしてください」
私はエヴァン様に連れられて、客間を後にしました。
あのままでは、私はあそこで怒りを爆発させてしまったかもしれません。
そんなことをすれば、ルネに余計な負担をかけてしまうかもしれませんでした。話を終わらせてくれたエヴァン様には、感謝しかございません。
「人様の家族のことを、どうこう言う趣味はないが……あまりにも酷い。本当に、同じ人間のすることなのか……?」
「あの方々は、そういう人なのです。このままでは、いつ犠牲者が増えるか……早速行動をしようと思います」
「それは構わないが、何か方法があるのか?」
「はい」
お父様、お義母様、お姉様の三人への復讐。そのうちの二人への復讐方法は、頭に浮かんでおります。
ただ、この方法を取るには、協力者を得なければいけません。
「エヴァン様、以前ご協力いただいた商人様のご連絡先を、教えていただけないでしょうか?」
「彼の力をまた借りるのか?」
「厳密に言うと、彼の商人仲間とお話をしたいのですが、それを円滑に進めるために、まず彼とお話したいのです。なので、私から文書を送ろうと思った次第です」
「俺が送ろうか?」
「お気持ちは嬉しいですが、私がしたいことのためですから、私からお願いするのが筋ですわ」
「わかった。それじゃあ、一旦俺の部屋に行って、そこで教えよう」
……さあ、ここからやっと私の復讐が始まる。絶対に、今まで犠牲になってしまった方々の敵を、そして私の積年の恨みを晴らしてさしあげますわ。
無事に屋敷に帰ってきた私達の元に、エレンが血相を変えて飛んできました。
「どうかしたのか?」
「ルネ様が、目を覚まされたのです!」
「本当ですの!? エヴァン様、早く行きましょう!」
急いでルネがいる客間へと向かうと、そこにはボーっと天井を眺めているルネの痛々しい姿がありました。
「ルネ、目が覚めたのですね。私のこと、わかりますか?」
「……シエ、ル……様……」
ゆっくりと震える手を私に伸ばしてきたルネの目からは、一筋の涙が流れ落ちました。
それにつられて私の涙を流しながら、ルネの手を優しく握りました。
「本当に無事で良かったですわ……右手は動きそうですか?」
「…………」
ルネは小さく首を横に振りました。
やはり、右手はもう治らないということですのね……もっと私に力があれば……。
「私……どうして……ここは……?」
「ここは、シャルディー家の屋敷ですわ。あなたはフィルモート家の領地にある森に倒れていたところを、領民が助けて……色々あってここに運ばれてきたのですわ」
本当は、もっと詳しく事情を説明してさしあげたいけど、まだルネはぼんやりしているみたいなので、細かい話を理解出来なさそうですわ。
「ルネ殿、俺達は先程、廃虚となったトラルキル家の屋敷に行ってきた。そこで、ローラン殿が残してくれた、フィルモート家の罪の証拠を見つけたんだが……屋敷でなにがあったかまではわからなかった。もし話せるようなら、何があったか話してくれないか?」
エヴァン様のお願いに頷いたルネは、ゆっくりと話し始めてくださいました。
「私も……詳しいことは、わかりません。ローラン様が亡くなられて……屋敷が混乱していた時に……突然襲われました」
「襲われたですって? それは、一体どこの誰ですの?」
「わかりません……ただ、兵の中には……国の軍に所属している人間もいたので……おそらく、国の兵だと思います」
国の兵士? どうして国がトラルキル家の屋敷を襲って……そうですわ、確かフィルモート家は国に賄賂を渡して、その見返りとして国は悪事を見逃していたのでした。
それを、残った人達に広められるのを恐れて、襲ったのですね!
「その指示をしていた人物が……ステイシー様と……アイシャ様……でした……」
「お義母様とお姉様が!?」
「私は……ローラン様から、彼女達について少し聞いてましたが……まさか、あそこまで残忍とは……」
一体何をしたのでしょう……聞くのが怖いですが、現実から目を背けていては、何も解決しませんわ。
「お二人は、一体何を……?」
「逃げ惑う人間、立ち向かう人間……平等に亡くなるまで徹底的に……いたぶったのです。生かす条件として、口に出すのも憚れるような……おぞましいことをさせて、最後は殺した時のあの笑顔は……まさに悪魔でした」
「っ……!!」
なんですの、それ……トラルキル家の方々が、一体何をしたというんですか!? 全て、悪事を働いていたフィルモート家と国が悪いのに……!!
「トラルキル家の人間は……全員殺されました。私は、なんとか隙を突いて逃げだして、何とか川に飛び込んで……気が付いたら、どこかの岸に流れ着きました。そこからまた逃げたのですが……」
「力尽きてしまったと。それを、フィルモート家の領民が見つけたのか」
それが、トラルキル家が崩壊していた理由だったのですね……ああ、頭が……体が、怒りでどうにかなってしまいそう。
「事情はわかった。病み上がりなのに、無理をさせて申し訳ない」
「こちらこそ……看病などさせてしまって、申し訳ございません」
「人として、当然のことをしているだけだ。では、俺達はそろそろ失礼する。なにかあったら、我が家の使用人に遠慮なく声をかけてほしい。シエル、行こう」
「……はい。お大事にしてください」
私はエヴァン様に連れられて、客間を後にしました。
あのままでは、私はあそこで怒りを爆発させてしまったかもしれません。
そんなことをすれば、ルネに余計な負担をかけてしまうかもしれませんでした。話を終わらせてくれたエヴァン様には、感謝しかございません。
「人様の家族のことを、どうこう言う趣味はないが……あまりにも酷い。本当に、同じ人間のすることなのか……?」
「あの方々は、そういう人なのです。このままでは、いつ犠牲者が増えるか……早速行動をしようと思います」
「それは構わないが、何か方法があるのか?」
「はい」
お父様、お義母様、お姉様の三人への復讐。そのうちの二人への復讐方法は、頭に浮かんでおります。
ただ、この方法を取るには、協力者を得なければいけません。
「エヴァン様、以前ご協力いただいた商人様のご連絡先を、教えていただけないでしょうか?」
「彼の力をまた借りるのか?」
「厳密に言うと、彼の商人仲間とお話をしたいのですが、それを円滑に進めるために、まず彼とお話したいのです。なので、私から文書を送ろうと思った次第です」
「俺が送ろうか?」
「お気持ちは嬉しいですが、私がしたいことのためですから、私からお願いするのが筋ですわ」
「わかった。それじゃあ、一旦俺の部屋に行って、そこで教えよう」
……さあ、ここからやっと私の復讐が始まる。絶対に、今まで犠牲になってしまった方々の敵を、そして私の積年の恨みを晴らしてさしあげますわ。
660
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
学園では婚約者に冷遇されていますが、有能なので全く気になりません。〜学園でお山の大将されてても、王宮では私の方が有能ですから〜
織り子
恋愛
王都カラディナにある国立魔術学園では、満十六歳の生徒たちの社交界デビューを兼ねた盛大なパーティーが開かれていた。
侯爵令嬢タレイア・オルトランは、婚約者である第二王子アスラン・オグセリアの迎えを待つも、結局ひとりで会場へ向かうことになる。
学園では身分の差がないとはいえ、アスランが公然とタレイアを侮辱し続けてきたことで、彼女は生徒たちから冷笑と蔑視の的となっていた。しかしタレイアは、王城で政務を担ってきた聡明さと矜持を失わず、毅然と振る舞う。
〖完結〗醜い聖女は婚約破棄され妹に婚約者を奪われました。美しさを取り戻してもいいですか?
藍川みいな
恋愛
聖女の力が強い家系、ミラー伯爵家長女として生まれたセリーナ。
セリーナは幼少の頃に魔女によって、容姿が醜くなる呪いをかけられていた。
あまりの醜さに婚約者はセリーナとの婚約を破棄し、妹ケイトリンと婚約するという…。
呪い…解いてもいいよね?
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
[完結]だってあなたが望んだことでしょう?
青空一夏
恋愛
マールバラ王国には王家の血をひくオルグレーン公爵家の二人の姉妹がいる。幼いころから、妹マデリーンは姉アンジェリーナのドレスにわざとジュースをこぼして汚したり、意地悪をされたと嘘をついて両親に小言を言わせて楽しんでいた。
アンジェリーナの生真面目な性格をけなし、勤勉で努力家な姉を本の虫とからかう。妹は金髪碧眼の愛らしい容姿。天使のような無邪気な微笑みで親を味方につけるのが得意だった。姉は栗色の髪と緑の瞳で一見すると妹よりは派手ではないが清楚で繊細な美しさをもち、知性あふれる美貌だ。
やがて、マールバラ王国の王太子妃に二人が候補にあがり、天使のような愛らしい自分がふさわしいと、妹は自分がなると主張。しかし、膨大な王太子妃教育に我慢ができず、姉に代わってと頼むのだがーー
〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。
貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ
凜
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます!
貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。
前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる