【完結】私を虐げる姉が今の婚約者はいらないと押し付けてきましたが、とても優しい殿方で幸せです 〜それはそれとして、家族に復讐はします〜

ゆうき

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第十七話 関所突破の策

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「あの、本日はご協力いただき、誠にありがとうございます」

「へっへっへ……なぁに、旦那には日頃から良くしてもらってやすからね。これくらい、お安い御用でっさ」

 キャビンの中から、御者を担当してくれている商人の男性に、お礼の言葉をお伝えしました。

 なんだか話し方に少し癖があるお方ですが、エヴァン様が言うには、とても顔の広い大商人だそうです。それに、少し話した感じでは、悪い人では無さそうですわ。

「エヴァン様、私の変装は大丈夫そうですか?」

「ああ、問題無い」

 今日の私は、エリンに手伝ってもらって、私だと気づかれないように変装をしております。

 髪は銀のロングヘアーではなく、真っ赤なショートヘアのウィッグをかぶせてもらい、服装も派手でフワフワなドレスではなくて、動きやすくて地味な感じのエプロンドレスにしてもらってます。

 いつもはあまりしないお化粧もしっかりしてもらい、かなり雰囲気も変えていただいたから、多分大丈夫だと思うのですが……。

 ちなみに、この変装は事前にエヴァン様にお伝えして、エレンに用意してもらいましたの。本当に、感謝しかありませんわ。

「いつものシエルもいいが、今日のシエルも違った魅力があるな」

「あ、ありがとうございます。エヴァン様も、とても素敵ですわ」

 エヴァン様も気づかれないように、ウィッグを被ることで、金色から純白の髪色になっている。
 いつもの金髪も素敵ですが、雪の様に白い髪も、とてもお似合いだと思います。

「ところで、お礼の件ですが……私は何をすればいいのでしょう?」

「ああ、それなんだが……」

 先程と同じように、少しだけ私の目から視線を落として、ジッと見つめて……きたと思ったら、更に視線を下げました。

 そこにあったのは、膝の上で重なっている私の手でした。

「私の手が、どうかしましたか?」

「…………」

 エヴァン様は何も答えないまま、私に手を差し出してきました。
 それを見て、私は確信しました。エヴァン様は、私と手を繋ぎたいのだと。

 お礼で手を繋ぎたいだなんて、とても可愛らしくてきゅんとしていますし、好きな人と触れあえるだなんて、ドキドキしてしまいますが……お礼がこれでいいのでしょうか?

「これでいいのですか?」

「ああ。俺は……こうしているだけでも、幸せだから」

「エヴァン様……ええ、私もですわ」

 微笑みながら幸せを噛みしめていると、突然馬車が止まり、外から声が聞こえてきました。

「止まれ。貴様、なにをしにここに来た」

「へい。これからこの先の村で、商売をする予定でして。これ、身分証明書です」

 エヴァン様とお話している間に、無事にフィルモート家の領地に到着したようですわね。今は、最初で最高の難所である、関所にいるのでしょう。

「……確かに。この先の貧乏な村で商売をするだなんて、変わった商人もいるものだな」

 ……!? ど、どうしてそんな他人事のように言えますの? そうした要因は、あなた達にあるというのに……!!

「落ち着くんだ。気持ちはわかるが、ここで動いてしまっては全てが水の泡だ」

「……はい」

 湧きあがる怒りを、自分の手のひらに爪をめり込ませる痛みでなんとか間際らしていると、嫌な会話が聞こえてきました。

「規則なんでな。荷物と同席者の確認をさせてもらう」

「どうぞどうぞ」

 外部から変なものが持ち込まれないように、フィルモート家の領地に出入りする際に、必ずこの検査が入ることはわかっておりました。
 だから、事前に変装して気づかれないようにする必要がありましたの。

「同席者は二人か」

「おい、早くしやがれ。うちらはあまり時間がねーんだよ!」

 あまりここにいると、ボロが出てしまう可能性から来る焦りと、彼らに対するいら立ちのせいで、思わず予定に無い発言をしてしまいました。

「こいつらは何者だ?」

「彼らはあっしの護衛として雇った傭兵でさあ。盗賊に襲われて商品を奪われた日には、あっしは終わりなもんで」

「傭兵? おい、身分証明書を出せ」

 身分証明書とは、この国で生活している人間なら、誰でも持っているものです。
 しかし、今の私とエヴァン様は変装している身なので、自分の身分証明書を出すことは出来ません。

 一見すると、大ピンチのように見えるかもしれませんが、これに関しては私もわかっていたことなので、対策を用意しております。

「……すまないが、俺達は色々な国を渡り歩く、流浪の傭兵なものでな。国が発行している身分証明証は持っていないんだ」

「なんだ、根無し草の傭兵だったのか。それにしては、少々腕っぷしが弱そうだが……本当に傭兵か?」

「疑うのか? なら、直々に証明してもいいが」

 エヴァン様は、手に持っていた剣を少しだけ鞘から抜き、鋭い目つきで関所の兵士を睨みつけました。

 なんでしょう、このぞくっとした感じは……これが俗に言う、殺気というものなのでしょうか?

「わかったわかった。ったく、傭兵ってのは血の気が多くてかなわねえ……荷物の確認も終わったし、さっさと行け」

 さっきまで威勢が良かったのに、エヴァン様に押されて気まずそうにした兵士から、無事に許可を貰えた私達は、フィルモート家の領地に入っていきました。

「ふう……なんとかなったか。シエル、俺の演技は大丈夫だったか?」

「はい! とっても素晴らしかったです! なのに私と来たら……余計なことを言ってしまって、申し訳ございません」

 私は、事前にこうなった時のために、エヴァン様にこうしてほしいというお願いをしておりました。それが、先程のエヴァン様の行動と台詞でした。

 エヴァン様のしてくれたことは完璧でしたのに、危うく私が自らそれを壊してしまうところでしたわ……本当に、私は一体何をしているのでしょうか? 自制心が無さすぎて、情けなくなります。

 いえ、落ち込むことは後ででも出来ますわ。今は前を向きませんと、エヴァン様や商人様に失礼ではありませんか。

「あれは仕方がない。俺が君の立場なら、もっと強く言っていただろう。あなたもそう思うでしょう?」

「へい、旦那の言う通りでさぁ。あっしら商人は舐められちゃおしまいでやすからね」

 まだ落ち込んでいると思ったいるお二人が、私を励ましてくれたおかげで、さらに元気が出ました。

「ありがとうございます。次はこんな失敗をしないように、気をつけます」

 深呼吸をして落ち着きを取り戻した私は、キャビンの窓から外を眺めました。

 久しぶりに来たフィルモート家の領地にある村は、驚く程寂れてしまっていて、人気も全然感じなくなっていました――
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