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第七話 本当に恐ろしい方なのかしら……?
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先程すでに訪れていた自室に戻ると、まだお話したことが無い女性の使用人の方々が、部屋の中でお出迎えをしてくださいました。
「はじめまして、シエル様。私はエレンと申します。あなた様の生活のお手伝いをさせていただきます。よろしくお願いいたします」
彼女達の中で、私とさほど歳が離れていなさそうなのに、一番落ち着きのありそうな雰囲気の女性が、とても丁寧にお辞儀をしました。
とても美人なお方ですわ……藍色のショートカットがとても似合っておりますわ。それに身長も高くて、シュッとした藍色の瞳からは、不思議な暖かさを感じます。
「よろしくお願いいたします、エレン様」
「私のような一介の使用人に、ご丁寧な対応をしていただけるのは、大変光栄でございますが、私のことは、エレンとお呼びください」
「わかりましたわ、エレン」
人様の事を呼び捨てにすることなんてないので、いざ実践するとなんだかムズムズします。
実家にいる時は、仕えているはずの使用人が相手でも、なぜか様呼びを強要されておりましたからね。
「彼女達には、私の補佐をしてもらいます。ただいまこちらで、お食事の用意をしておりますので、その間に入浴とお着替えを済ませていただきます」
「入浴って……あなた方と?」
「はい。でないと、お手伝いが出来ませぬゆえ……」
そ、そうでしたわ。貴族なら、普通は同性の使用人に体を洗ってもらったりしてもらうのは普通でしたわ。
私はちょっと普通とは違うので、入浴はいつも一人、それも使用人が使う小さめの浴場でした。
その後の食事も、いつも一人で……何をするにしても、私は一人でした。愛人の子として虐げられているのですから、これは当然のこととして、慣れてしまってます。
だから、逆に普通の貴族のような対応を取っていただくと、動揺してしまうというわけです。
「……あ、でも……」
冷静に考えると、私の体には、長い年月をかけてお父様達に付けられた無数の傷跡があります。これを見られてしまった結果、面倒事が起こって、この家に迷惑をかけてしまうのは、極力避けたいのが本音ですわ。
「お気持ちは嬉しいですが、やはり一人でお風呂はいただきますわ。着替えも、一人で出来ますわ」
「そういうわけにはまいりません。お手伝いをしないと、主様に叱られてしまいます」
「……俺が、どうかしたか?」
「ひゃっ!? い、いつの間に……ビックリしましたわ」
どうやってエレンを説得しよう考えていたら、いつの間にか部屋の中に入ってたエヴァン様に驚いて、思わずその場でピョンッと飛んでしまいましたわ。恥ずかしい……。
「様子を見にきたら、声が聞こえてな。何か不都合でもあるのか? それとも、我々に何か不手際があったか? 我々は何も気にしないから、何でも言ってほしい」
「気にしない……」
「俺を信じろという方が無理かもしれないが、俺にはそれしか言えない」
「…………」
エヴァン様のまっすぐな瞳。とても社交界で恐ろしいという噂が流れているお方には見えません。
そんな彼の目を見て、このお方はきっと大丈夫だと思い、私は腕をまくって、傷の一部をお見せしました。
「これは……」
「このような傷が、至る所にあるので、遠慮した次第でございます」
見た目は酷いかもしれませんが、私には聖女の力があるので、痛み自体はありません。
しかし、傷跡だけはどうしても消えないものもあって、こうして残ってしまっておりますの。
「……なるほど。この傷の件で、俺が君や家に問い詰めて、面倒ごとになるのを避けたかったのか」
「仰る通りでございますわ。実家の方は私の知ったことではありませんが、この家にはご迷惑をおかけしたくなくて」
「……大丈夫。君が望まない限り、その傷のことを、君の実家に聞いたりはしないし、大事にもしない。話したくなったら、いつでも話してくれ。さあ、ゆっくり湯に浸かって疲れを取るといい」
エヴァン様に送り出される形で、女性の使用人と一緒に浴場へと向かいはじめました。
さっきもそうでしたが、一体何が彼をああさせているのでしょうか? 私にはよくわかりませんわ……。
「あの腕……なんだか骨と皮だけだったような……シエル、ちゃんと食事を食べているのか……? あの傷から察するに……そういうことか。コックには栄養価の高いものを追加で用意するようにお願いしよう。あと服は……とりあえず今日の服は、一番肌に優しいものを用意して、他にも肌に優しい生地の物を増やしておいた方がいいか……」
****
「はぁ……気持ちいいですわ……」
エレンを中心に、使用人の女性に体を綺麗にしてもらった後、私は大浴場で足を延ばしてリラックスしていました。
体を綺麗にする際に、私の数々の怪我のことを考慮して、柔らかいスポンジを使ってくれたり、低刺激で良い匂いのするボディソープやシャンプーを使ってくれたりと、まさに至れり尽くせりでしたわ。
「ご満足いただけたようでなによりです。主様の命により、シエル様に少しでもリラックスしてもらうために、入浴剤やシャンプーといった品にリラックス効果がある物を選ばせていただきました」
まさか、そこまでしてくれるだなんて……一応、私はお姉様の身代わりで婚約させられた人間ですのよ? どう考えても、こんな歓迎を受けられる立場じゃないと思うのだけど……。
「シエル様、こちらでマッサージをさせていただきますので、うつ伏せで寝てください」
「ま、マッサージまでしてくれるのですか!?」
「はい。主様が用意した。とてもリラックスできる香りと効能のオイルがございます」
さすがにそこまでしてもらうのは申し訳ないと言おうとしましたが、あれよあれよとマッサージ用のバスローブを着せられて、うつ伏せで寝かせられてしまいました。
「痛かったら仰ってください」
「は、はい」
痛いだなんてとんでもない。エレンのマッサージはお世辞抜きで絶品でした。そのあまりにも気持ちいいマッサージは、すぐに睡魔を呼び寄せてしまうくらいでしたわ。
「はふぅ……」
「シエル様、遠慮せずにお休みになられても構いませんよ。終わり次第、起こしてさしあげますから」
「はい……ありがとう、ございます……」
この場で眠っても良いんだと思ったら、更に睡魔が強くなって……私はいつぶりかわからないくらい、安心しながら眠りにつきました。
「はじめまして、シエル様。私はエレンと申します。あなた様の生活のお手伝いをさせていただきます。よろしくお願いいたします」
彼女達の中で、私とさほど歳が離れていなさそうなのに、一番落ち着きのありそうな雰囲気の女性が、とても丁寧にお辞儀をしました。
とても美人なお方ですわ……藍色のショートカットがとても似合っておりますわ。それに身長も高くて、シュッとした藍色の瞳からは、不思議な暖かさを感じます。
「よろしくお願いいたします、エレン様」
「私のような一介の使用人に、ご丁寧な対応をしていただけるのは、大変光栄でございますが、私のことは、エレンとお呼びください」
「わかりましたわ、エレン」
人様の事を呼び捨てにすることなんてないので、いざ実践するとなんだかムズムズします。
実家にいる時は、仕えているはずの使用人が相手でも、なぜか様呼びを強要されておりましたからね。
「彼女達には、私の補佐をしてもらいます。ただいまこちらで、お食事の用意をしておりますので、その間に入浴とお着替えを済ませていただきます」
「入浴って……あなた方と?」
「はい。でないと、お手伝いが出来ませぬゆえ……」
そ、そうでしたわ。貴族なら、普通は同性の使用人に体を洗ってもらったりしてもらうのは普通でしたわ。
私はちょっと普通とは違うので、入浴はいつも一人、それも使用人が使う小さめの浴場でした。
その後の食事も、いつも一人で……何をするにしても、私は一人でした。愛人の子として虐げられているのですから、これは当然のこととして、慣れてしまってます。
だから、逆に普通の貴族のような対応を取っていただくと、動揺してしまうというわけです。
「……あ、でも……」
冷静に考えると、私の体には、長い年月をかけてお父様達に付けられた無数の傷跡があります。これを見られてしまった結果、面倒事が起こって、この家に迷惑をかけてしまうのは、極力避けたいのが本音ですわ。
「お気持ちは嬉しいですが、やはり一人でお風呂はいただきますわ。着替えも、一人で出来ますわ」
「そういうわけにはまいりません。お手伝いをしないと、主様に叱られてしまいます」
「……俺が、どうかしたか?」
「ひゃっ!? い、いつの間に……ビックリしましたわ」
どうやってエレンを説得しよう考えていたら、いつの間にか部屋の中に入ってたエヴァン様に驚いて、思わずその場でピョンッと飛んでしまいましたわ。恥ずかしい……。
「様子を見にきたら、声が聞こえてな。何か不都合でもあるのか? それとも、我々に何か不手際があったか? 我々は何も気にしないから、何でも言ってほしい」
「気にしない……」
「俺を信じろという方が無理かもしれないが、俺にはそれしか言えない」
「…………」
エヴァン様のまっすぐな瞳。とても社交界で恐ろしいという噂が流れているお方には見えません。
そんな彼の目を見て、このお方はきっと大丈夫だと思い、私は腕をまくって、傷の一部をお見せしました。
「これは……」
「このような傷が、至る所にあるので、遠慮した次第でございます」
見た目は酷いかもしれませんが、私には聖女の力があるので、痛み自体はありません。
しかし、傷跡だけはどうしても消えないものもあって、こうして残ってしまっておりますの。
「……なるほど。この傷の件で、俺が君や家に問い詰めて、面倒ごとになるのを避けたかったのか」
「仰る通りでございますわ。実家の方は私の知ったことではありませんが、この家にはご迷惑をおかけしたくなくて」
「……大丈夫。君が望まない限り、その傷のことを、君の実家に聞いたりはしないし、大事にもしない。話したくなったら、いつでも話してくれ。さあ、ゆっくり湯に浸かって疲れを取るといい」
エヴァン様に送り出される形で、女性の使用人と一緒に浴場へと向かいはじめました。
さっきもそうでしたが、一体何が彼をああさせているのでしょうか? 私にはよくわかりませんわ……。
「あの腕……なんだか骨と皮だけだったような……シエル、ちゃんと食事を食べているのか……? あの傷から察するに……そういうことか。コックには栄養価の高いものを追加で用意するようにお願いしよう。あと服は……とりあえず今日の服は、一番肌に優しいものを用意して、他にも肌に優しい生地の物を増やしておいた方がいいか……」
****
「はぁ……気持ちいいですわ……」
エレンを中心に、使用人の女性に体を綺麗にしてもらった後、私は大浴場で足を延ばしてリラックスしていました。
体を綺麗にする際に、私の数々の怪我のことを考慮して、柔らかいスポンジを使ってくれたり、低刺激で良い匂いのするボディソープやシャンプーを使ってくれたりと、まさに至れり尽くせりでしたわ。
「ご満足いただけたようでなによりです。主様の命により、シエル様に少しでもリラックスしてもらうために、入浴剤やシャンプーといった品にリラックス効果がある物を選ばせていただきました」
まさか、そこまでしてくれるだなんて……一応、私はお姉様の身代わりで婚約させられた人間ですのよ? どう考えても、こんな歓迎を受けられる立場じゃないと思うのだけど……。
「シエル様、こちらでマッサージをさせていただきますので、うつ伏せで寝てください」
「ま、マッサージまでしてくれるのですか!?」
「はい。主様が用意した。とてもリラックスできる香りと効能のオイルがございます」
さすがにそこまでしてもらうのは申し訳ないと言おうとしましたが、あれよあれよとマッサージ用のバスローブを着せられて、うつ伏せで寝かせられてしまいました。
「痛かったら仰ってください」
「は、はい」
痛いだなんてとんでもない。エレンのマッサージはお世辞抜きで絶品でした。そのあまりにも気持ちいいマッサージは、すぐに睡魔を呼び寄せてしまうくらいでしたわ。
「はふぅ……」
「シエル様、遠慮せずにお休みになられても構いませんよ。終わり次第、起こしてさしあげますから」
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