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6 義両親との再会

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 フワリと髪を撫でられる感覚に、深い眠りの淵からゆっくりと浮上した。

「ん……、お義母…様……?」

 瞼を開くと、私の顔を覗き込んでいたお義母様の優しい瞳と目が合った。

「あら、起こしちゃったかしら?」

「いえ…、少々寝過ぎてしまったみたいです。今、何時ですか?」

「もう少しで夕食の時間よ」

「すみません……」

 まだ眠い目を擦りながら、ノソノソと体を起こす。

「良いのよ。疲れていたのでしょう?
 夕食は一緒に食べられそう?」

「勿論です」

「じゃあ、お支度をしましょうね。
 ロメーヌ! ミシェルの身支度を手伝ってあげなさい」

「はい、奥様。喜んで」

 ニコニコ顔のロメーヌに促されて、ドレッサーの前に座ると、テキパキと髪を整えられ、薄化粧まで施された。
 そして用意された、シンプルな若草色のドレスに着替えさせられる。

「ねえ、コレって誰のドレス?」

 ガリガリに痩せてしまった私のサイズよりは、少しだけ大きめのドレス。
 流行も体型もあまり問わない様な、ゆったりとした形で、多少はサイズが違っていてもウエストのリボンで調節して、問題無く着用する事が出来た。
 お義母様の物にしては、少し若過ぎるデザインに見える。

 先程まで着ていた部屋着もそうだが、このドレスも何処からかロメーヌが持って来た物だった。

「いつ帰られても良い様にと、旦那様と奥様がご用意なさっていた、お嬢様用のドレスですよ」

「……私は本当に不義理をしていたのね」

 ここを出てから、頻繁に手紙の遣り取りはしていたが、忙しさにかまけて一度も帰って来なかったことを、改めて後悔した。

「そうお思いならば、今後は沢山親孝行をして差し上げて下さい」

「そうね。そうする」

 シャヴァリエ家は、三代前の頃に王家と揉めた事があるらしく、その確執は今もなお、根強く残っている。
 だから、義両親が王都の社交界に出てくる事は滅多に無く、お義母様にお会いしたのも、四年前に私に会いに来てくれた時以来だ。

 王太子の婚約者を、シャヴァリエ家の籍に入れたのは、両家の確執を和らげるという意図もあったのだろうと思うのだが……。
 残念ながら、あの馬鹿王太子のせいで、完全に逆効果になってしまった。

「さあ、お支度が整いましたよ」

 ロメーヌの声に、鏡の中へと視線を向ける。
 濃い隈は隠し切れていないが、先程までよりは幾分マシな姿の私が映っていた。



 ダイニングへ向かうと、既にお義父様とお義母様は席に着いていた。

「お待たせして申し訳ありません」

「我々も今来た所だよ。お帰り、ミシェル」

 厳めしいお顔のお義父様だが、笑うとほんの少し目尻が下がって優しそうな印象になる。

「よく帰って来てくれたわね、ミシェル」

「ただいま戻りました。お義父様、お義母様」

 ワインで乾杯し、和やかな食事の時間が始まった。

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