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第十一章:彗星のように
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しおりを挟む生徒会が終わって、メンバーがバラバラと帰ってゆく。波折は鑓水と二人で昇降口まで向かっていたが、終始無言だった。鑓水に話しかけられても、薄い反応しか返せなかった。
靴を履いて、外に出る。校舎からでてしばらく歩いたところで――ぽつ、と頬に何かがあたった。
「……あれ、雨? やべえ俺傘もってねえかも」
「……慧太」
「ん?」
「……ごめん、今日一人にして」
「え? あっ、ちょっ」
空から落ちてきたのは、雨粒だ。鑓水が折りたたみの傘が鞄にはいっているか確かめようとした瞬間に、波折が走りだす。鑓水は追いかけようと一歩足を踏み出したが、波折のあまりにも陰鬱な表情を思い出して、脚がすくんでしまった。
自分とは無関係のことで人が酷く悲しんでいると、どうしてもそこに踏み込んでいくという行為に躊躇してしまうもの。鑓水も例にもれず波折を追いかけることができなかった。
「……くそっ、」
ざあざあと突然のようにバケツをひっくり返したような雨が降り始める。波折が走りだしてそれほど経っていない、きっと彼はまだ駅についていないから、この雨を浴びているだろう。一人で、この叩きつけるような雨のなかを走っているのだろう。
……それを思うと、一瞬でも波折を追いかけることを躊躇った自分が莫迦に思えた。こんなに冷たい雨のなか、波折を一人にさせた自分を殴りたいと思った。
「……波折、一人で泣くなよ」
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