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第十章:その弱さを知ったとき

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 生徒会の活動のあいだ、鑓水はじっと波折を見つめていた。今日は前夜祭について、美術部員と話し合いをするのだが……美術部員はまじめに話をしながらも、明らかに波折のことを意識していた。女子はもちろん、男子も尊敬の眼差しをバシバシと波折に向けている。

 波折は本当に理想の生徒会長像だ。そして、唯一の自分の上をいく存在。そんなところに、自分は惹かれた。そう思っていたが……波折と触れ合うことが多くなってから、違うところも見るようになってきた気がする。

 波折はド淫乱で、セックスには積極的。だからセックスのときは自分に甘えてくるが、普段はわりと冷たい。かといって本性が冷たいのかといえばそうではない。朝食をつくってくれたり、会話の最中で笑顔をみせたり。なにより……こっちが落ち込んでいるときは、真剣に心配してくれる。

 本当は優しい奴だ。なぜかそれを見せないように本人はしているようだが、その本性がぽろりとでてしまったとき……たまらない愛おしさを感じる。


「……鑓水先輩?」

「……波折可愛いよなあ……」

「はいっ!?」


 隣でぎょっとしたような声が聞こえて鑓水が驚いてそちらを見てみれば、沙良が唖然と口をあけていた。


「……あれ? 俺なんか言った?」

「……いえ。あ、あの……ちょっとぼんやりしていたので大丈夫かなって思って」

「あ、ああ、大丈夫」

「そうですか……」


 なにか変なことを自分が口走ったような気がしたが、鑓水は気にせずにまた波折の観察を始めた。隣で沙良が引きつったような笑みを浮かべているのは、視界にも入らなかった。
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