上 下
98 / 236
第十章:その弱さを知ったとき

しおりを挟む
「沙良、あんまり無理しなくていいからね」

「えー、大丈夫ですよ」


 学園祭も近くなってきたということで、生徒会活動も忙しくなる。夜遅くまで残って作業するといことも少なくない。沙良の自宅で夕紀が一人で待っているということを知っている波折は、沙良を気遣っていた。とりあえず夕食の時間までに帰ればいいかな、と思っていた沙良は、もう少し残ることにしたのだが。


「高校の文化祭ってすごいんですね。前夜祭まであるんだ」

「――その前夜祭、おもろい噂あるぜ!」


 沙良と波折が話していると、間に鑓水が割って入ってくる。きょとんとした沙良に、鑓水がにやにやとしながら囁きかけた。


「前夜祭でな、花火があがるんだ。その花火を好きな人と一緒にみると両思いになれるんだってさ」

「――波折先輩! 一緒に見ましょう!」


 花火の話を聞いた瞬間、沙良は鑓水を押しのけて波折の手を掴みそう叫んだ。波折は突然誘われたからか驚いて固まってしまっている。弾き飛ばされた鑓水は沙良を押し返してまた自分も波折の肩を掴んだ。


「いや、俺と見ようぜ」

「先輩! 俺と!」


 そんな三人の様子を遠巻きに月守は「修羅場……」と呆れ顔だ。当事者である波折もそんな二人と同じような表情を浮かべていた。沙良と鑓水の手を払うと、ため息をつきながら言う。


「……花火あげてるときは、俺達は裏で仕事しているだろ」

「あっ」


 波折は「仕事しろ」とつぶやくと、沙良と鑓水から離れていって会計の二人のもとへいってしまった。取り残された二人は目を合わせて苦笑いしたのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

少年達は淫らな機械の上で許しを請う

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

処理中です...