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12 許されると思った距離より遠くの二人。
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月曜日、聖に挨拶をしたら思い出した。
ああ、すっかり忘れてた。
「ねえ、聖。あのね、村山君とマコトはどうかな?」
そう聞いた。
「はぁ?」
聖が思いっきり間の抜けた顔で、声で答えた。
「だから、金曜日にこっそり言われたんだよ。飲みに行こうって。」
「それで?」
「きっとこの間聖と話をして、ちょっとだけ手伝ってもらいたいのかなあって。」
「手伝いを、よりによって優に頼むの?」
よりによってって何?
だってマコトは聖の事をお願いねって最初は私に頼んだよ・・・・って教えないけど。
「もっと普通に優と飲みに行きたかったと思わないの?」
「まさか、そんな感じじゃなかったよ。」
そう言ったのに全く信じてもらえなかった。
「だいたい頼りになるのはどう判断しても優よりは私だし、私よりサジーだよね。」
はっきりきっぱり言われた。
それは・・・そうかもしれないけど・・・・・。
なにか私でもいい理由があったんじゃないかと、そうは思ってもらえない?
「まあ、そっちは任せて。探ってみる。多分勘違い。」
確かめる必要もないけどねって感じで、きっぱりと断言された気がした。
そんな・・・・・。
マコトが来た。
「おはよう、マコト。」
「おはよう。どうしたの?優が変な顔して睨んでるよ。」
「ああ、気にしないで。」
「まさかまた何かやったの?あ、違うか。まただったらきっと聖は小躍りしてるよね。」
「別に何もしてない。」
期待されるようなことは、だって金曜日も断ったし。
まあ、いいや。
やっぱり聖に任せた。佐島君がついてるしね。仲良くどうぞ。
そんな気持ちだった。
それから村山君と偶然会うこともなく、佐島君とも矢田君とも会わないで。
また週末はぼんやりとしそうな予感しかしない日々だった。
お兄ちゃんからは一応お礼の連絡が来た。
「優、あれから何か進展ないの?」
お母さんに聞かれた。
「ないよ。会ってもいない、すれ違ってもいない。」
「誘ってみれば。優からお詫びって言って誘えばいいのに。」
そんな時期はすっかり過ぎて、変に間が空いたから。おかしいよ。
「無理だよ。」
「そうか、残念。」
本当に残念そうに言うお母さん。
しょうがない、そればかりはどうにもこうにも不器用で。
聖もマコトも変わりなし。
私も変わりなし。
架純ちゃんと若菜ちゃんは変らず楽しそうな週末を過ごしてるみたいだ。
ゴロゴロと空を見て、ぼんやりと部屋にいる。
退屈だなあ。
どこか出かけようかなあ。
さあ、どこに行く?
別にいいか・・・・。
まあ、よくあるパターンで週末を過ごす。
本当に強制散歩かお母さんのお供で商店街かスーパーにいくだけ。
歩かない二日間。
二年目になって、来週から後輩が配属されて、いよいよ先輩になる。
ドキドキだ。
どんな子が来るんだろう。
私たちは三人も一緒に配属されて良かったけど、今机は一つしか空いてない。
もしかしたら一人かもしれない。
それは寂しいと思う。
一年前かあ、どんなだったかなあ?思い出せないけど必死だったと思う。
毎日緊張してたし、頑張って集中してた。
すっかり慣れてるなあ。成長だよね。
ぼんやりと声に出して空と喋る。
そんなぐうたらな週末はなかなか夜眠りにつけない。
やっぱり散歩してでも体は動かすべきなのに、そんな事も毎回思うのに。
月曜日あくび交じりの朝だった。
本当に眠れなかったから。
そしてやっぱり新人は一人だった。
今年は男性にしたらしい。
なかなか強そうな男性で、後輩という感じでもない。
そうなると何となく先輩風に面倒を見たり、声をかけることもなく挨拶だけ。
なんだかあんまり変わらない気分だった。
花音たちのところも少なくて二人だったらしい。
「今年は少ないみたいだね。」
「去年採り過ぎたのかな?」
「でも可愛い子がいるらしいじゃない?かなりザワザワしてるよ。お嬢様系の清楚系だって。」
「どこにいるの?」
「営業つき。」
「ふ~ん。そうなんだ。」
「サジーが喜んでる。鼻の下が伸びて口がどこかに行くって、みんなそう言ってるみたい。」
ちょっと怖いよ、聖。目がマジっぽいけど。
本人がそう馬鹿正直に言ったんだろうか?
というか、どうなってるの?
勝手に・・・というか一人前進してるの?
マコトを見たけど表情変らず。
「ボケボケッとしてたら矢田君の鼻の下も伸びるかもよ。」
変らない表情でそう言われた。
想像してみた。
伸びるのかな?どうかな?
「しばらくは噂の的だね。彼氏いるんだろうけど。」
「それがいないらしいよ。」
誰かが聞いたらしい。ここまで知れ渡ってるなら男性は既知のことだろう。
配属一週間もしないうちにここまで騒がれるなんてすごい。
仕事後、のんびりと駅に向かっていた。
どうせ駅に着くまでにバラバラになるから、用事がないときは終わったらそのまま一人で帰る。別にお互いを待ってたりはしない。
だから今日も一人だった。
夕飯なにかなあ?お腹空いたなあ。
まあ考えることはいつも同じ。いたって平和な日々。
「赤城さん。」
後ろから急に声をかけられた。
声で誰だかは分かる。さすがに分かる。
立ち止まって振り向いたらやっぱりそうで。
「お疲れ様、矢田君、早いね。」
「うん、今日は珍しくね。いつもこんな時間?」
「そう、早い日はだいたいこんな感じ。」
歩き出しながら話をする。
よく考えたら横並びに歩くこともなかった。
普通よりは大きい方だと思う。
昔が体育会系という印象はないけど、それなりに背は高いみたい。
「ちょっとの時間だけ付き合わない?」
そう誘われてびっくりした。
大掃除もない、でも平日、明日も仕事。
朝から眠くてさっさと帰って寝る、なんて宣言してたのに。
「うん。大丈夫。」
返事はそうなった。ちょっとの時間って言われたし。
「じゃあ、一杯くらいだったら飲む?」
「うん、限定すると選ぶのが余計に楽しくなるの。本当に大切に飲むし。」
「分かる気がする。でも前の濁り梅酒お代わりも嬉しそうに飲んでたけど。」
背後霊の日だ。
「あそこは美味しかったなあ。和室って落ち着くし、脚が楽なんだよね。」
普通に話が出来てる。
本当に普通に。
お店は矢田君が決めてくれて、そこについて行った。
「誰かと来るところ?」
「ううん、たまに一人でぼんやりするところ。気に入ったらどうぞ。」
「美味しかったら、週に一回くらい限定一杯のために寄り道しようかな、なんて。一人で飲むことはないなあ。」
「いつでも付き合うよ。」
そう言ってくれた。
「ありがとう。」
結局あれから一緒に飲むことはない。
聖は『サジー』ってあれからも呼んでるのを聞いてるし話しもしてる風なのに、本当に二人で会ってるんだろうか?
席についてお酒を選ぶ。
おすすめのフレッシュカクテルにする。
「優しい感じでお願いします。」
ついこの間を思い出して言った。
「あ、アルコール少な目で。」
言い直した。ちょっと笑顔になられた。
矢田君はビールだった。
大きめの重そうなジョッキに、美味しそうな泡が立ってる。
お父さんの缶ビールに比べて、何て美味しそうなんだろう。
「いつもビールなの?」
「いや・・・・。」
視線を外された。
何だろう?
別にいいのに。
本当にお酒メインで、料理はちょっとだけ。
お菓子のようなナッツと小さいクラッカー、あられが入った器が一緒に届いた。
皆につくお通しみたいなものらしい。
よくお兄ちゃんと全部ティッシュに広げて半分にしてた。
全種類半分づつ。
その頃は魚の形をしたクラッカーが入ってた袋をお母さんが皿に開けてくれていた。
一個の年の差があってもそこは平等で、いろんな魚のクラッカーを種類ごとに分けて、一個ずつ交互に取り分け合った。
仲良く分けて食べるのよ、そう言われたものはきちんと半分づつだった。
お兄ちゃんが優しくてズルをしなくて欲張らなくて、私も普通に半分がいいと思ってたんだろう。
「どうしたの?」
ジッと器を見ていたらそう言われた。
「ううん、何だかお腹空いてきた。」
「ああ、食事が出来るところが良かった?」
「大丈夫。帰ってから食べるから。」
カクテルは抜群に美味しかった。
本当に優しくてジュース。
あと二種類あったフレッシュカクテルも試したいって思うくらい。
「美味しい?」
「うん、すごく。また来たいなあ。」
「いつでも・・・・・。」
お互いにお酒を味わう時間。
周りも一人飲みが多いし静かで、大きなスピーカーからジャズが流れてくる。
壁を見るとお酒の瓶も並んでるけど、レコードも並んでた。
ぎっしりとビニールに入ったそれらがつまってる棚がある。
「ここはレコードなのかな?」
「そうらしい。オーナーの趣味なんだろうね。」
オーナーらしい人を見た。
レコードを選んでるところだった。
多分早めに仕事を辞めた感じの年齢。
退職金で開いたお店なんだろうか?
それとも引き継いだお店なんだろうか?
ただ雇われてるという可能性もあるけど、お酒とジャズが好きそうな雰囲気はある。
ゆっくり手をグラスに伸ばしたつもりだったけど、触れたのはもっと柔らかくて温かくてびっくりした。
また・・・・・って思ったけど、違った。
明らかに矢田君の手がかぶさってるし。
それを見て赤くなる。
急いで手を引いた。
「ごめんなさい。」
何故か謝った。
「・・・・・・この間はずっと握りしめられてたけど。」
言い訳は・・・・・・・えっと・・・・・。
そうそう。
「ちょっと村山君の話を聞きながら想像しながら考え事をしてて、本当に全く気がついてなかったの。あの時もごめんなさい。」
結局あの後謝罪の品はいいよとマコトには言い切った。
だからあれからは今が初めて謝る場だった。
「今のは僕が手を伸ばしたんだけど。」
そうだよね。わたしはグラスを探してたつもりだった。
あの時も何かを探してたんだろうか?
そうだとしても気がつくよね、私も・・・・。
「・・・・僕からだとそうやって逃げるんだ。」
だっていきなりでびっくりして。
今揶揄われてるの?顔が見れない。
「じゃあ・・・・じゃあ、今のが村山の手だったら逃げないの?」
へ?
なんで村山君。
さっき名前は出したけど。
「誘われたでしょう?」
ああ、確かに。
「あれは、ちょっと・・・・。」
確かに今日みたいに一人の時だったけど。
マコトだと思う。
だってあれから二度目の誘いはない。
だからきっとそうだと思ってる。
ほら、私の説が正しい!そう思って笑顔になった。
ああ、誘いは聖にあったのかな?佐島君にあったとか?
もしくはまっすぐマコトに?
「楽しかったんだ?」
ん?
「・・・・そうか。」
そう言って手はテーブルから消えた。
狭いテーブルだから、矢田君の手がないだけで随分スペースが空いた。
気がついたらガラスの器はすっかり残り僅かに。
私のグラスもあと少し。
「厄介な癖なんだね。周りの迷惑を考えたらお酒はやっぱりやめた方がいいね。」
「優しいお酒も本当に限定一杯までかもね。」
今、はっきり『迷惑』と言われた。
あの時は笑って許したけど、やっぱり変だよ、考えた方がいいよ、厄介で迷惑で無しにして欲しいって。
被害を受けた当人がそう思うくらいのことだったらしい。
許されてたと思ってたのに。
周りは楽しんで、でもやられた当人は・・・・少しも。
誰かに誤解されたとか、そういうこと以前に、もっと常識的に突飛すぎて『迷惑行為』らしい。
そうかも。
お兄ちゃんのあれはそうかも。
そして、私のもそうだったらしい。
さっきは飲みたいなら一緒にって言ってくれたのに。
限定一杯を喜んで選ぶ私じゃなくて、それ以上飲むなよって言う視線で見て、それで横にいるって言うの?
二度あることは三度あるから。
また『迷惑』をかけられたらって、嫌がってる?
ゴクリと音が続いて、ゴトッって重たい音がした。
別に・・・・男の人でも飲めない人はいると思う。
そんな人と飲みに行けばいい。
食事を楽しむ方で、ノンアルコールカクテルでも、普通にソフトドリンクでも飲んで。
むしろ、こんなお酒メインのお店に飲みに誘われるより、食事に誘われればいい。
急な誘いでもお母さんの買い物に間に合えばいいんだから。
前もって買ってることが多いけど、多分たいていの場合間に合う。
食事でも良かったのに。
「ごちそうさま。」
テーブルは空になり、美味しくお酒も頂いて、お金を置いて一礼して先にお店を出た。
また来たいなんて思ったけど、二度と来ない。
今まで誰も私にお酒は飲むなって言わなかったのに。
だって気をつけてたから、そこまで変になることもなかったけど。
マコトたちも一理さんまでも、飲めばいいのにって勧めてくれたのに。
被害を受けた人はやっぱり違う意見らしい。
すごく胸が痛い。
淡々と言われた初めての禁止令。
迷惑だから・・・・その言葉は重い。
お母さんもさなえさんも、そんなに呆れなかったんだと思ってた。
でも、それは最初からお母さんはお父さんの事を知ってたから。
何度か会ったり、食事をしたり。
だから隣で飲んだ日はもっとお互いに心の距離は近くて、だから変になっても心配してもらえて、気遣ってもらえて。結果いい感じになったんだから。
お兄ちゃんの場合は底なしになさえさんがいい人だったか、お兄ちゃんがいい奴だって分かってもらえたか。
二人とは全然違うのに、私も許されるだろうって思ってた。
私と矢田君に限っては違った。
だって本当に仲良しって訳じゃない。
ちょっとだけ知ってるくらいの関係だったから、ダメらしい。
矢田君はいい人なのに、それでもダメだったらしい。
そんな事何度も思ったのに。別に特別じゃないって。
だから何で自分が矢田君に背中を預けたり、手を伸ばしたりしたのか分からないと思ってた。
それは矢田君だって。
もっと知ってる関係だったら、何してるのって聞くよね?
全然仲良くなくて、逆にあからさまに嫌がる態度がとれなくてじっとしててくれたんだよね。
耐えていてくれたのに、勝手に優しさと勘違いしたのが間違い。
そして今度こそ、迷惑をかけてごめんなさいと心から反省して終わりにした。
電車はゆっくり自分の駅についた。
電車を降りて時間を見る。
本当にちょっとした寄り道だった。
『お母さん、ご飯はいらない。ちょっと頭が痛いから早く寝るね。』
『洗濯機のタイマーをお願いします。』
そうメッセージを送った。
間に合ったらしくて、お母さんが読んでくれたのが分かった。
バッグに携帯を入れて家に戻った。
さっさとお風呂に入り、直ぐに寝た。
携帯を見たら二人の心配するメッセージが入ってた。
『大丈夫。ちょっと疲れただけだと思う。まだまだ月曜日だし、今日は先に寝ます。』
『おやすみなさい。』
それ以外、誰からも連絡はなかった。
眠る前にもう一度見たけど、なかった。
ああ、すっかり忘れてた。
「ねえ、聖。あのね、村山君とマコトはどうかな?」
そう聞いた。
「はぁ?」
聖が思いっきり間の抜けた顔で、声で答えた。
「だから、金曜日にこっそり言われたんだよ。飲みに行こうって。」
「それで?」
「きっとこの間聖と話をして、ちょっとだけ手伝ってもらいたいのかなあって。」
「手伝いを、よりによって優に頼むの?」
よりによってって何?
だってマコトは聖の事をお願いねって最初は私に頼んだよ・・・・って教えないけど。
「もっと普通に優と飲みに行きたかったと思わないの?」
「まさか、そんな感じじゃなかったよ。」
そう言ったのに全く信じてもらえなかった。
「だいたい頼りになるのはどう判断しても優よりは私だし、私よりサジーだよね。」
はっきりきっぱり言われた。
それは・・・そうかもしれないけど・・・・・。
なにか私でもいい理由があったんじゃないかと、そうは思ってもらえない?
「まあ、そっちは任せて。探ってみる。多分勘違い。」
確かめる必要もないけどねって感じで、きっぱりと断言された気がした。
そんな・・・・・。
マコトが来た。
「おはよう、マコト。」
「おはよう。どうしたの?優が変な顔して睨んでるよ。」
「ああ、気にしないで。」
「まさかまた何かやったの?あ、違うか。まただったらきっと聖は小躍りしてるよね。」
「別に何もしてない。」
期待されるようなことは、だって金曜日も断ったし。
まあ、いいや。
やっぱり聖に任せた。佐島君がついてるしね。仲良くどうぞ。
そんな気持ちだった。
それから村山君と偶然会うこともなく、佐島君とも矢田君とも会わないで。
また週末はぼんやりとしそうな予感しかしない日々だった。
お兄ちゃんからは一応お礼の連絡が来た。
「優、あれから何か進展ないの?」
お母さんに聞かれた。
「ないよ。会ってもいない、すれ違ってもいない。」
「誘ってみれば。優からお詫びって言って誘えばいいのに。」
そんな時期はすっかり過ぎて、変に間が空いたから。おかしいよ。
「無理だよ。」
「そうか、残念。」
本当に残念そうに言うお母さん。
しょうがない、そればかりはどうにもこうにも不器用で。
聖もマコトも変わりなし。
私も変わりなし。
架純ちゃんと若菜ちゃんは変らず楽しそうな週末を過ごしてるみたいだ。
ゴロゴロと空を見て、ぼんやりと部屋にいる。
退屈だなあ。
どこか出かけようかなあ。
さあ、どこに行く?
別にいいか・・・・。
まあ、よくあるパターンで週末を過ごす。
本当に強制散歩かお母さんのお供で商店街かスーパーにいくだけ。
歩かない二日間。
二年目になって、来週から後輩が配属されて、いよいよ先輩になる。
ドキドキだ。
どんな子が来るんだろう。
私たちは三人も一緒に配属されて良かったけど、今机は一つしか空いてない。
もしかしたら一人かもしれない。
それは寂しいと思う。
一年前かあ、どんなだったかなあ?思い出せないけど必死だったと思う。
毎日緊張してたし、頑張って集中してた。
すっかり慣れてるなあ。成長だよね。
ぼんやりと声に出して空と喋る。
そんなぐうたらな週末はなかなか夜眠りにつけない。
やっぱり散歩してでも体は動かすべきなのに、そんな事も毎回思うのに。
月曜日あくび交じりの朝だった。
本当に眠れなかったから。
そしてやっぱり新人は一人だった。
今年は男性にしたらしい。
なかなか強そうな男性で、後輩という感じでもない。
そうなると何となく先輩風に面倒を見たり、声をかけることもなく挨拶だけ。
なんだかあんまり変わらない気分だった。
花音たちのところも少なくて二人だったらしい。
「今年は少ないみたいだね。」
「去年採り過ぎたのかな?」
「でも可愛い子がいるらしいじゃない?かなりザワザワしてるよ。お嬢様系の清楚系だって。」
「どこにいるの?」
「営業つき。」
「ふ~ん。そうなんだ。」
「サジーが喜んでる。鼻の下が伸びて口がどこかに行くって、みんなそう言ってるみたい。」
ちょっと怖いよ、聖。目がマジっぽいけど。
本人がそう馬鹿正直に言ったんだろうか?
というか、どうなってるの?
勝手に・・・というか一人前進してるの?
マコトを見たけど表情変らず。
「ボケボケッとしてたら矢田君の鼻の下も伸びるかもよ。」
変らない表情でそう言われた。
想像してみた。
伸びるのかな?どうかな?
「しばらくは噂の的だね。彼氏いるんだろうけど。」
「それがいないらしいよ。」
誰かが聞いたらしい。ここまで知れ渡ってるなら男性は既知のことだろう。
配属一週間もしないうちにここまで騒がれるなんてすごい。
仕事後、のんびりと駅に向かっていた。
どうせ駅に着くまでにバラバラになるから、用事がないときは終わったらそのまま一人で帰る。別にお互いを待ってたりはしない。
だから今日も一人だった。
夕飯なにかなあ?お腹空いたなあ。
まあ考えることはいつも同じ。いたって平和な日々。
「赤城さん。」
後ろから急に声をかけられた。
声で誰だかは分かる。さすがに分かる。
立ち止まって振り向いたらやっぱりそうで。
「お疲れ様、矢田君、早いね。」
「うん、今日は珍しくね。いつもこんな時間?」
「そう、早い日はだいたいこんな感じ。」
歩き出しながら話をする。
よく考えたら横並びに歩くこともなかった。
普通よりは大きい方だと思う。
昔が体育会系という印象はないけど、それなりに背は高いみたい。
「ちょっとの時間だけ付き合わない?」
そう誘われてびっくりした。
大掃除もない、でも平日、明日も仕事。
朝から眠くてさっさと帰って寝る、なんて宣言してたのに。
「うん。大丈夫。」
返事はそうなった。ちょっとの時間って言われたし。
「じゃあ、一杯くらいだったら飲む?」
「うん、限定すると選ぶのが余計に楽しくなるの。本当に大切に飲むし。」
「分かる気がする。でも前の濁り梅酒お代わりも嬉しそうに飲んでたけど。」
背後霊の日だ。
「あそこは美味しかったなあ。和室って落ち着くし、脚が楽なんだよね。」
普通に話が出来てる。
本当に普通に。
お店は矢田君が決めてくれて、そこについて行った。
「誰かと来るところ?」
「ううん、たまに一人でぼんやりするところ。気に入ったらどうぞ。」
「美味しかったら、週に一回くらい限定一杯のために寄り道しようかな、なんて。一人で飲むことはないなあ。」
「いつでも付き合うよ。」
そう言ってくれた。
「ありがとう。」
結局あれから一緒に飲むことはない。
聖は『サジー』ってあれからも呼んでるのを聞いてるし話しもしてる風なのに、本当に二人で会ってるんだろうか?
席についてお酒を選ぶ。
おすすめのフレッシュカクテルにする。
「優しい感じでお願いします。」
ついこの間を思い出して言った。
「あ、アルコール少な目で。」
言い直した。ちょっと笑顔になられた。
矢田君はビールだった。
大きめの重そうなジョッキに、美味しそうな泡が立ってる。
お父さんの缶ビールに比べて、何て美味しそうなんだろう。
「いつもビールなの?」
「いや・・・・。」
視線を外された。
何だろう?
別にいいのに。
本当にお酒メインで、料理はちょっとだけ。
お菓子のようなナッツと小さいクラッカー、あられが入った器が一緒に届いた。
皆につくお通しみたいなものらしい。
よくお兄ちゃんと全部ティッシュに広げて半分にしてた。
全種類半分づつ。
その頃は魚の形をしたクラッカーが入ってた袋をお母さんが皿に開けてくれていた。
一個の年の差があってもそこは平等で、いろんな魚のクラッカーを種類ごとに分けて、一個ずつ交互に取り分け合った。
仲良く分けて食べるのよ、そう言われたものはきちんと半分づつだった。
お兄ちゃんが優しくてズルをしなくて欲張らなくて、私も普通に半分がいいと思ってたんだろう。
「どうしたの?」
ジッと器を見ていたらそう言われた。
「ううん、何だかお腹空いてきた。」
「ああ、食事が出来るところが良かった?」
「大丈夫。帰ってから食べるから。」
カクテルは抜群に美味しかった。
本当に優しくてジュース。
あと二種類あったフレッシュカクテルも試したいって思うくらい。
「美味しい?」
「うん、すごく。また来たいなあ。」
「いつでも・・・・・。」
お互いにお酒を味わう時間。
周りも一人飲みが多いし静かで、大きなスピーカーからジャズが流れてくる。
壁を見るとお酒の瓶も並んでるけど、レコードも並んでた。
ぎっしりとビニールに入ったそれらがつまってる棚がある。
「ここはレコードなのかな?」
「そうらしい。オーナーの趣味なんだろうね。」
オーナーらしい人を見た。
レコードを選んでるところだった。
多分早めに仕事を辞めた感じの年齢。
退職金で開いたお店なんだろうか?
それとも引き継いだお店なんだろうか?
ただ雇われてるという可能性もあるけど、お酒とジャズが好きそうな雰囲気はある。
ゆっくり手をグラスに伸ばしたつもりだったけど、触れたのはもっと柔らかくて温かくてびっくりした。
また・・・・・って思ったけど、違った。
明らかに矢田君の手がかぶさってるし。
それを見て赤くなる。
急いで手を引いた。
「ごめんなさい。」
何故か謝った。
「・・・・・・この間はずっと握りしめられてたけど。」
言い訳は・・・・・・・えっと・・・・・。
そうそう。
「ちょっと村山君の話を聞きながら想像しながら考え事をしてて、本当に全く気がついてなかったの。あの時もごめんなさい。」
結局あの後謝罪の品はいいよとマコトには言い切った。
だからあれからは今が初めて謝る場だった。
「今のは僕が手を伸ばしたんだけど。」
そうだよね。わたしはグラスを探してたつもりだった。
あの時も何かを探してたんだろうか?
そうだとしても気がつくよね、私も・・・・。
「・・・・僕からだとそうやって逃げるんだ。」
だっていきなりでびっくりして。
今揶揄われてるの?顔が見れない。
「じゃあ・・・・じゃあ、今のが村山の手だったら逃げないの?」
へ?
なんで村山君。
さっき名前は出したけど。
「誘われたでしょう?」
ああ、確かに。
「あれは、ちょっと・・・・。」
確かに今日みたいに一人の時だったけど。
マコトだと思う。
だってあれから二度目の誘いはない。
だからきっとそうだと思ってる。
ほら、私の説が正しい!そう思って笑顔になった。
ああ、誘いは聖にあったのかな?佐島君にあったとか?
もしくはまっすぐマコトに?
「楽しかったんだ?」
ん?
「・・・・そうか。」
そう言って手はテーブルから消えた。
狭いテーブルだから、矢田君の手がないだけで随分スペースが空いた。
気がついたらガラスの器はすっかり残り僅かに。
私のグラスもあと少し。
「厄介な癖なんだね。周りの迷惑を考えたらお酒はやっぱりやめた方がいいね。」
「優しいお酒も本当に限定一杯までかもね。」
今、はっきり『迷惑』と言われた。
あの時は笑って許したけど、やっぱり変だよ、考えた方がいいよ、厄介で迷惑で無しにして欲しいって。
被害を受けた当人がそう思うくらいのことだったらしい。
許されてたと思ってたのに。
周りは楽しんで、でもやられた当人は・・・・少しも。
誰かに誤解されたとか、そういうこと以前に、もっと常識的に突飛すぎて『迷惑行為』らしい。
そうかも。
お兄ちゃんのあれはそうかも。
そして、私のもそうだったらしい。
さっきは飲みたいなら一緒にって言ってくれたのに。
限定一杯を喜んで選ぶ私じゃなくて、それ以上飲むなよって言う視線で見て、それで横にいるって言うの?
二度あることは三度あるから。
また『迷惑』をかけられたらって、嫌がってる?
ゴクリと音が続いて、ゴトッって重たい音がした。
別に・・・・男の人でも飲めない人はいると思う。
そんな人と飲みに行けばいい。
食事を楽しむ方で、ノンアルコールカクテルでも、普通にソフトドリンクでも飲んで。
むしろ、こんなお酒メインのお店に飲みに誘われるより、食事に誘われればいい。
急な誘いでもお母さんの買い物に間に合えばいいんだから。
前もって買ってることが多いけど、多分たいていの場合間に合う。
食事でも良かったのに。
「ごちそうさま。」
テーブルは空になり、美味しくお酒も頂いて、お金を置いて一礼して先にお店を出た。
また来たいなんて思ったけど、二度と来ない。
今まで誰も私にお酒は飲むなって言わなかったのに。
だって気をつけてたから、そこまで変になることもなかったけど。
マコトたちも一理さんまでも、飲めばいいのにって勧めてくれたのに。
被害を受けた人はやっぱり違う意見らしい。
すごく胸が痛い。
淡々と言われた初めての禁止令。
迷惑だから・・・・その言葉は重い。
お母さんもさなえさんも、そんなに呆れなかったんだと思ってた。
でも、それは最初からお母さんはお父さんの事を知ってたから。
何度か会ったり、食事をしたり。
だから隣で飲んだ日はもっとお互いに心の距離は近くて、だから変になっても心配してもらえて、気遣ってもらえて。結果いい感じになったんだから。
お兄ちゃんの場合は底なしになさえさんがいい人だったか、お兄ちゃんがいい奴だって分かってもらえたか。
二人とは全然違うのに、私も許されるだろうって思ってた。
私と矢田君に限っては違った。
だって本当に仲良しって訳じゃない。
ちょっとだけ知ってるくらいの関係だったから、ダメらしい。
矢田君はいい人なのに、それでもダメだったらしい。
そんな事何度も思ったのに。別に特別じゃないって。
だから何で自分が矢田君に背中を預けたり、手を伸ばしたりしたのか分からないと思ってた。
それは矢田君だって。
もっと知ってる関係だったら、何してるのって聞くよね?
全然仲良くなくて、逆にあからさまに嫌がる態度がとれなくてじっとしててくれたんだよね。
耐えていてくれたのに、勝手に優しさと勘違いしたのが間違い。
そして今度こそ、迷惑をかけてごめんなさいと心から反省して終わりにした。
電車はゆっくり自分の駅についた。
電車を降りて時間を見る。
本当にちょっとした寄り道だった。
『お母さん、ご飯はいらない。ちょっと頭が痛いから早く寝るね。』
『洗濯機のタイマーをお願いします。』
そうメッセージを送った。
間に合ったらしくて、お母さんが読んでくれたのが分かった。
バッグに携帯を入れて家に戻った。
さっさとお風呂に入り、直ぐに寝た。
携帯を見たら二人の心配するメッセージが入ってた。
『大丈夫。ちょっと疲れただけだと思う。まだまだ月曜日だし、今日は先に寝ます。』
『おやすみなさい。』
それ以外、誰からも連絡はなかった。
眠る前にもう一度見たけど、なかった。
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