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13 何もない週末は青い空が話し相手になってくれます。
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朝、すごくよく寝たと思って目が覚めた。
それでもスッキリなんて背伸びをする気にもなれない。
お腹は空いてる。昨日ちょっとお菓子のようなものを齧っただけだし。
へこむくらいにお腹は空いてる。
ササっと準備をして洗濯物を干した。
今日はいい天気だから。
キッチンでコーヒーをいれてたらお母さんが起きてきた。
「優、具合はどう?」
「大丈夫。何だったんだろう。ちょっと週末ぐうたらで眠れなかったからかもしれない。昨日は一日眠かったし。」
「そう、すっきりしたなら良かった。」
そう見えてるなら私も安心。
朝ご飯の準備をしてたらお父さんが起きてきた。
朝は忙しいからトーストとヨーグルト、他に自分で食べたいならシリアルもあるし、気分でどうにでも。
お腹は空いてるのに、口の中でパサパサとパンが重たく感じる。
ため息をつかないように頑張ってモグモグと口を動かして飲み込んだ。
部屋で化粧を仕上げたけど、やっぱりスッキリという表情じゃないと思う。
気のせいかな?
元気になるように気合を入れて頬を叩く。
さあ、まだまだ火曜日だし。
「優、おはよう。」
「おはよう。」
「朝から難しい顔して、考え事?」
「ううん、別に何も考えてなかった。何だろう?」
「優が分からないなら私はもっとわからない。」
そう言って笑われた。
ランチの時間、探し物があると言って一人で駅の方へ行った。
そんなに食欲がない。
お昼を軽くすれば夕飯が美味しいかもしれない。
適当に駅ビルの中のお店を見る。
適当に手に取るけど、何を買う予定もない。
見つからなかったから、ちょっと他を探すと言えば明日も一人になれるだろうか?
二日くらいはそう言って離れてもいい。
時間には戻り、考えていた言い訳を言った。
「明日また探そうかな。」
何を探してるの?と聞かれることもなかった。
聞かれたら『さなえさんへのお礼』とか何とか言えばいい。
そう思ってはいた。
「探し物は見つかった?」
水曜日のお昼後に聞かれた。
「やっぱり今一つ。週末に探すことにした。」
「そう。」
お昼をちゃんと食べないと本当に夕食が美味しい。
本当にモリモリと食べてるように見えてると思う。
お腹は空くから、あとは口に入れたものを機械的に咀嚼して飲み込む。
今まで意識してなくても出来たことが、意識した途端、何だか不器用な動きになる気もする。
あと二日・・・・・。
週末が待ち遠しい。
また空と会話してぼんやり部屋で過ごしても許される。
そんな時間が必要だと思う。
「金曜日、食事しない?」
聖が誘ってきた。
「今週はダメなんだ。ごめんね。」
そう言ったら二人がこっちを見た。
「早く帰って家族会議。お兄ちゃんの事でいろいろと議題があって。」
今まで普通に話題に出てたから全然不自然じゃない流れで断ることが出来た。
「そうなの?」
「なんだ、せっかくサジ―と一緒に張り切ってたのに。優がいないと矢田君が物足りないって言うんじゃないかな~?」
「そんな訳ないじゃない。」
自分でも否定する気持ちしかなかった。
冗談でも返せなかったかもしれない。
そう響いた。
二人もそう思ったと思う。何も言われなかった。
「楽しんで来てね。」
急いで付け加えた。
仕事が終わったらさっさと立ち上がった金曜日。
本当に逃げるように家に帰った。
今週のことなのに、もう随分前のことのように思える記憶。
最初はちょっと楽しかったのに。
最後は少しも楽しくなかった。
そんな月曜日は今週のことなのに、忘れたいと思ったからなのか、あの時の会話も何もかもがずっと遠くに行った。
「優。」
お母さんに起こされた。部屋で座りこんだまま寝てたみたい。
「ああ、ごめんなさい。いつのまにか寝てたみたい。手伝うね。」
「まだ大丈夫よ。お風呂先に入ってもいいし。」
「うん、そうする。」
今頃楽しく盛り上がってるかなあ?
誰がいるんだろう。
私だけがいない四人かもしれない、もしかしたら全く違う子が誘われたかもしれない。
楽しかったら今度からその子も誘われるかもしれない。
皆が横一列に飲めるくらいの子かもしれない。
矢田君も安心して油断できるくらいに。
「優、どうかしたの?」
またぼんやりとしてた。テレビを見てたはずなのに。
誰が何をしゃべってたか全く覚えてない。
「疲れてるみたい。新しい人が入るとちょっとづついろんなしわ寄せがくるみたい。」
「そんな事言って、去年の今頃三人分大きなしわを寄せてたんでしょう?」
「そうだよね。今年は一人だしね。」
「何か報告したいことはない?」
「ないよ。」
「うれしいことは、ちょっとくらい恥ずかしくて内緒にしたいって気持ちも分かるからいいけど、悲しいことは内緒にしないでね。全然知らされないと親として寂しいからね。」
何か感じてる?
「うん、今はどっちもないよ。」
そう言った。
晴れた空に独り言を聞いてもらった週末。
それでも午後は散歩した。
携帯はポケットに入ってる。
飲み会の報告は全くないから、どんな風だったのかは知らない。
『いないんだな。』ってちょっとホッとされたんだろうか?
それとも、少し言い過ぎたかなって思ってくれただろうか?
途中の公園のベンチに座った。
野良猫の住みついてる公園。
餌を与えないでくださいと書かれてて、残念だけどあげてない。
だから近寄っても来てくれない。
今もどこかの藪の中から見てるかもしれない。
邪魔だ!なんて思わないでね。少し休憩してるだけだから。
餌をもらわなくても逞しくて痩せてもいない野良猫たち。
色んな野良がいて、家系図が難しいくらいの毛色ミックスの猫がいる。
毛の色と尻尾の形。
時々綺麗な猫が生まれてるみたい。
斑の毛色のミックスもなく、尻尾もまっすく伸びてる子。
愛想が良かったら誰か連れて帰ってくれるかもしれない。
家はどうだろう?
今まで犬猫を飼ったことがない。
昼間は誰もいないから、やっぱり寂しいかもしれない。
家に帰ってから癒される手触りと、カーテンや部屋の中がぐちゃぐちゃの現実と。
やっぱり大変だと思う。
誰かが家にいる家の方がいいのは確実だ。
のんびり公園の周りも歩いて、緑の影の中を横切る小さな生き物を呼び止めて、失敗して、今日も撫でるのは諦めて帰ってきた。
「ただいま。」
「お帰り、優。」
お母さんが首を伸ばしてこっちを見て、じっと見てきた。
「もう少し部屋にいる。夕飯の準備は呼んでね。」
「分かった。」
部屋にいても特にすることはない。
相変わらずごろんとなり、空と会話をするくらい。
伏せていた携帯が鳴った。
マコトからだった。
「もしもし。」
大きく仰向けのごろんとした姿勢だった。
『優、家?』
「そう、部屋。」
一人でのんびり休日を過ごしてます。
「マコト・・・・楽しかった?金曜日。」
「金曜日?・・・・ああ、中止したよ。もう、協力してよ。せっかく聖と佐島君を寄せてるのに、優がいないとバランスが悪いじゃん。」
もう放っといても大丈夫だと思うのに。
まだ安心できない状態なの?
だって他にサジーなんて呼んでる人知らないけど。
「マコト、聖はもういいでしょう?」
「後少し位手伝ってよ。」
無理かも。それは私には無理かも。
「ねえ、優、聖は話してくれるまで待つって言ってたけど、私は隣だからさ、気になって仕方ないんだよね。」
「何?」
「優が隠してる事。」
「別に隠してることはないよ。」言ってないだけ。
「今週元気なかったし。」
「ちょっと週末から睡眠のペースを乱して、それが尾を引いてたの、それだけだよ。」
「どうしても、言いたくないんだ。」
「別に。」
「矢田君に優の連絡先教えたから。」
「どうして?」
「頼まれたから。」
だからって。
でもいつ?
知らない相手から連絡はない。
そんなことを言われたら携帯が鳴るたびに・・もしかしてって思うじゃない。
「謝りたいって言ってた。」
「逆だと思う。私が謝り過ぎたから、もういいよって、そんな事じゃない?」
空とぼけてみた。
「まだ連絡ないんだね。」
「・・・・別にない。」
「そうか、分かった。じゃあね。来週聞くから。」
「別に何もないよ。」
「その時は矢田君に聞く。」
嘘でしょう?
でも知らない。私は知らない。
マコトとの電話を終わりにしてからもずっと手にしていた携帯。
気になって来るじゃない。
ずっとこんな感じで明日も連絡を待つの?
そんなのはやめて欲しい。
謝っても、だから何?
迷惑だと思われてたんだから、もう隣では飲まない、一緒には飲まない、多分そんな機会はないから。
聖と佐島君は自分達で何とかなってください!
携帯は手放した。
「優、食事よ。降りてきて。」
「は~い。」
起き上がって携帯を見る。
どうしようかと迷って、手にしてポケットに入れた。
お母さんを手伝い、夕食の準備をして。
「お腹空いてないから少しでいい。ご町内の散歩くらいじゃあお腹空かなかった。」
「どうせ部屋でもゴロゴロしてたんじゃないの?」
「だって何もすることないんだもん。空がきれいだから、空を見てた。」
「だったらお父さんの相手をすればいいのに。」
「そうだね。」
でも、そんな気分じゃない事だってあるの。
お父さんが悪い訳じゃないのに。
本当にお腹空かなくて、おかずだけにした。
ポケットの携帯は静かなまま。
お風呂に入ってベッドに入っても何も伝えてくれないままだった。
自由な週末を持て余す。
ゴロンと横になって電気を消して目を閉じても眠気が来ない。
まだ早い時間だから、しょうがない。
話し相手の空はもう真っ暗で、カーテンを開けても何も見えないだろう。
私も目は閉じてるし。
真っ暗な部屋、いきなり光と音が存在を放った。
ちょっとびっくりした。
表示されたのは知らない人からの電話番号だった。
いきなり電話だったらしい。
それを教えられたんだろう、それしかないか・・・・。
「はい。」
『いきなりでごめん、矢田ですが、赤城さんですか?』
そうだった。
「はい、赤城です。」
『矢田です。番号は親切な友達に教えてもらったんだ。このまま少し話をしてもらっても大丈夫?』
「はい。大丈夫です。」
目を閉じたまま。横になったまま。
『この間は言い過ぎた、ごめん。』
「大丈夫です。当然だし、気にしないで。私も気をつけようと思ってるし。」
そう言ったら黙られた。
目を開けた。暗い部屋しか見えない。
そのまま静かに時間が過ぎて。
電話中なのを忘れそうなくらい。
「あの・・・・本当に気にしないで。この間は本当にお酒の料金しか置いて来なかったけど、足りなかったよね。すみません、そこに思い至らなくて。」
あのクラッカーの料金が入ってないと思う、ついでに消費税はどうなってたんだろう?
まあ、いいか。足りないのは同じだ。
『僕が誘ったから、いい。怒らせたんだし、お金も返すべきだから。』
「怒ってはないです。大丈夫です。怒るのは矢田君だし。私は反省するのみ。」
明るく言ってみた。
冗談に聞こえたらそれでもいいって思った。
でもまた会話が途切れて。
「本当に大丈夫。マコトが何か言ったの?ちょっと勝手にいろいろ考えてるみたいだから、気にしないでね。もう・・・・本当にお節介なの。」
やっぱり冗談にした。
息苦しい。
終わりにしたい。
「あの、もう寝てたの。ごめん、このまま寝そう・・・・・。」
『ごめん。本当に。』
「ううん、じゃあ、お休み。楽しい週末を。」
『うん。お休み。』
そう言われたのを聞いて、電話を終わりにした。
目は閉じたまま、ちょっと力が入る。
大丈夫。謝ってもらえたから、それで満足する、そして気を付ける、それは言った通り。
大きく息をついて、携帯を頭の上に置いた。
眠気はゆっくりやってきた。
「あ~、お腹空いた。」
目が覚めて一番にそう思った。
やっぱりご飯を食べないとお腹が空くみたい。
今日は出かけよう。
何でもいい、どこでもいい、出かけよう。
いつもより早めに下に降りて一人で準備した。
コーヒーの香りに誘われてお父さんが起きてきた。
いつもよりは早い。
「おはよう、お父さん。昨日ご飯食べなかったからお腹空いた~。」
お父さんの分のパンも焼いてあげる。
コーヒーが落ち切ったタイミングでお母さんも起きてきた。
「優、出かけるの?」
「うん。お昼もいらない。夕方には戻ってくるから。」
「はいはい。」
結局いつものように皆が揃って朝ごはんになった。
お腹空いたと言っても普通にいつもの分で満足はする。
どこに行くか、決めずに行ってもいいだろう。
それでも定期の範囲で、どこかで降りる。
ゆっくりと買う気のない物を見ている。
洋服だと店員さんが話しかけて来るけど、そうじゃないお店では遠巻きに見てもらえる。
買う気がないお客様は分かるんだろう。
だって本当に無い。
家具なんて、自宅暮らしの私には本当に必要がない。
お兄ちゃんの部屋はどうなってるんだろう?
元々最小限で一人暮らしを始めたから、さなえさんと一緒に選んだものが並んでるんだろう。一度も招待されたことがない。だから全然分からない。
大きなダイニングテーブルに手をついて周りを見たら、やっぱり二人組のお客様が多いのに気がついた。一人暮らし用だったらもっと違うお店でもいいのかもしれない。
ソファもテーブルも、大きな家族仕様だった。
だったらそうなるよね。
それでもクッションカバーやエアプランツなどの植物やちょっとしたアクセントの物だったら私の部屋でも全然いける。
その辺りもサラリと見て、でも本気買いの人の邪魔をしないように、そっと隣の店舗に移動する。
お腹を空かせるために歩いてるみたい。
ぐるぐる回って、ゆっくりフロアを移動して、上から降りてくる。
荷物は増えないまま。
結局お腹は空かないのに足が疲れたので、デザートを買って早めに帰ることにした。
電車の中でお母さんに連絡をする。
『楽しみに待ってる。』
そう言われたからいい。
「ただいま~。」
「お帰り~、待ってたのよ~。」
「私じゃなくてデザートでしょう?」
「デザートを持って帰ってくる優をよ。」
そう言ってお母さんと箱を空けて、さっそく紅茶を入れてもらう。
三種類の見た目も綺麗なデザートを買ってきた。
じゃんけんで好きなものを選ぶけど、結局スプーンを持った手は交差して、ちょっとづつ食べ合う。そんな感じがいい。
「もう、余計なカロリーが足されたから、遠回りして買い物しなきゃ。」
「一緒に行く。散歩と買い物にしよう。」
荷物持ちに立候補した。
お昼は食べてない。
それでもデザートを食べたし、夕食も美味しく食べられそうだった。
また昨日の公園に行った。
遠回りと言いながらベンチで休憩したお母さん。
やっぱり今日も猫たちは姿を隠してる。
「ねえ、優。最近元気ない。お父さんも心配してるわよ。」
「大丈夫、先週だけちょっと元気なかっただけ。もう元気でしょう?」
「男の子は単純で良かったなあ、優はお兄ちゃんより分かりにくい。」
「お兄ちゃんが分かりやすいだけだよ。」
一緒にしないでよと笑って言う。
丸わかりのお兄ちゃんだったから。
「必要なら友達でも、先輩でも、お父さんでもお母さんでも、誰でもいいから相談してね。」
「何もないよ。順調です。あ、何もなさ過ぎて、何もないのか。」
「じゃあ、何かあったら相談してね、報告でもいいけど。」
「もちろん、私も隠せないかもよ、丸わかりかもよ。」
「そうかもね。」
両手いっぱいの荷物を買いこんだ。
私が立候補しなかったらお父さんを付き合わせるつもりだったらしい。
お米と牛乳と、洗剤などの液体と、ずっしりとくるものが両手にぶら下がる。
本当に生活するって大変。
特別なことはなくても、生きてるだけでもいろんなものが必要だ。
お母さんはずっと大学の頃からこんなことをやっているんだから。
お父さんだってそう。
田舎から出てきて一人暮らしをして、ずっと結婚するまでは一人でやっていた。
でも皆もそうだ。
私だけがちょっと甘えてるくらい。
お祖母ちゃんも一人でやってるのに。
それでもスッキリなんて背伸びをする気にもなれない。
お腹は空いてる。昨日ちょっとお菓子のようなものを齧っただけだし。
へこむくらいにお腹は空いてる。
ササっと準備をして洗濯物を干した。
今日はいい天気だから。
キッチンでコーヒーをいれてたらお母さんが起きてきた。
「優、具合はどう?」
「大丈夫。何だったんだろう。ちょっと週末ぐうたらで眠れなかったからかもしれない。昨日は一日眠かったし。」
「そう、すっきりしたなら良かった。」
そう見えてるなら私も安心。
朝ご飯の準備をしてたらお父さんが起きてきた。
朝は忙しいからトーストとヨーグルト、他に自分で食べたいならシリアルもあるし、気分でどうにでも。
お腹は空いてるのに、口の中でパサパサとパンが重たく感じる。
ため息をつかないように頑張ってモグモグと口を動かして飲み込んだ。
部屋で化粧を仕上げたけど、やっぱりスッキリという表情じゃないと思う。
気のせいかな?
元気になるように気合を入れて頬を叩く。
さあ、まだまだ火曜日だし。
「優、おはよう。」
「おはよう。」
「朝から難しい顔して、考え事?」
「ううん、別に何も考えてなかった。何だろう?」
「優が分からないなら私はもっとわからない。」
そう言って笑われた。
ランチの時間、探し物があると言って一人で駅の方へ行った。
そんなに食欲がない。
お昼を軽くすれば夕飯が美味しいかもしれない。
適当に駅ビルの中のお店を見る。
適当に手に取るけど、何を買う予定もない。
見つからなかったから、ちょっと他を探すと言えば明日も一人になれるだろうか?
二日くらいはそう言って離れてもいい。
時間には戻り、考えていた言い訳を言った。
「明日また探そうかな。」
何を探してるの?と聞かれることもなかった。
聞かれたら『さなえさんへのお礼』とか何とか言えばいい。
そう思ってはいた。
「探し物は見つかった?」
水曜日のお昼後に聞かれた。
「やっぱり今一つ。週末に探すことにした。」
「そう。」
お昼をちゃんと食べないと本当に夕食が美味しい。
本当にモリモリと食べてるように見えてると思う。
お腹は空くから、あとは口に入れたものを機械的に咀嚼して飲み込む。
今まで意識してなくても出来たことが、意識した途端、何だか不器用な動きになる気もする。
あと二日・・・・・。
週末が待ち遠しい。
また空と会話してぼんやり部屋で過ごしても許される。
そんな時間が必要だと思う。
「金曜日、食事しない?」
聖が誘ってきた。
「今週はダメなんだ。ごめんね。」
そう言ったら二人がこっちを見た。
「早く帰って家族会議。お兄ちゃんの事でいろいろと議題があって。」
今まで普通に話題に出てたから全然不自然じゃない流れで断ることが出来た。
「そうなの?」
「なんだ、せっかくサジ―と一緒に張り切ってたのに。優がいないと矢田君が物足りないって言うんじゃないかな~?」
「そんな訳ないじゃない。」
自分でも否定する気持ちしかなかった。
冗談でも返せなかったかもしれない。
そう響いた。
二人もそう思ったと思う。何も言われなかった。
「楽しんで来てね。」
急いで付け加えた。
仕事が終わったらさっさと立ち上がった金曜日。
本当に逃げるように家に帰った。
今週のことなのに、もう随分前のことのように思える記憶。
最初はちょっと楽しかったのに。
最後は少しも楽しくなかった。
そんな月曜日は今週のことなのに、忘れたいと思ったからなのか、あの時の会話も何もかもがずっと遠くに行った。
「優。」
お母さんに起こされた。部屋で座りこんだまま寝てたみたい。
「ああ、ごめんなさい。いつのまにか寝てたみたい。手伝うね。」
「まだ大丈夫よ。お風呂先に入ってもいいし。」
「うん、そうする。」
今頃楽しく盛り上がってるかなあ?
誰がいるんだろう。
私だけがいない四人かもしれない、もしかしたら全く違う子が誘われたかもしれない。
楽しかったら今度からその子も誘われるかもしれない。
皆が横一列に飲めるくらいの子かもしれない。
矢田君も安心して油断できるくらいに。
「優、どうかしたの?」
またぼんやりとしてた。テレビを見てたはずなのに。
誰が何をしゃべってたか全く覚えてない。
「疲れてるみたい。新しい人が入るとちょっとづついろんなしわ寄せがくるみたい。」
「そんな事言って、去年の今頃三人分大きなしわを寄せてたんでしょう?」
「そうだよね。今年は一人だしね。」
「何か報告したいことはない?」
「ないよ。」
「うれしいことは、ちょっとくらい恥ずかしくて内緒にしたいって気持ちも分かるからいいけど、悲しいことは内緒にしないでね。全然知らされないと親として寂しいからね。」
何か感じてる?
「うん、今はどっちもないよ。」
そう言った。
晴れた空に独り言を聞いてもらった週末。
それでも午後は散歩した。
携帯はポケットに入ってる。
飲み会の報告は全くないから、どんな風だったのかは知らない。
『いないんだな。』ってちょっとホッとされたんだろうか?
それとも、少し言い過ぎたかなって思ってくれただろうか?
途中の公園のベンチに座った。
野良猫の住みついてる公園。
餌を与えないでくださいと書かれてて、残念だけどあげてない。
だから近寄っても来てくれない。
今もどこかの藪の中から見てるかもしれない。
邪魔だ!なんて思わないでね。少し休憩してるだけだから。
餌をもらわなくても逞しくて痩せてもいない野良猫たち。
色んな野良がいて、家系図が難しいくらいの毛色ミックスの猫がいる。
毛の色と尻尾の形。
時々綺麗な猫が生まれてるみたい。
斑の毛色のミックスもなく、尻尾もまっすく伸びてる子。
愛想が良かったら誰か連れて帰ってくれるかもしれない。
家はどうだろう?
今まで犬猫を飼ったことがない。
昼間は誰もいないから、やっぱり寂しいかもしれない。
家に帰ってから癒される手触りと、カーテンや部屋の中がぐちゃぐちゃの現実と。
やっぱり大変だと思う。
誰かが家にいる家の方がいいのは確実だ。
のんびり公園の周りも歩いて、緑の影の中を横切る小さな生き物を呼び止めて、失敗して、今日も撫でるのは諦めて帰ってきた。
「ただいま。」
「お帰り、優。」
お母さんが首を伸ばしてこっちを見て、じっと見てきた。
「もう少し部屋にいる。夕飯の準備は呼んでね。」
「分かった。」
部屋にいても特にすることはない。
相変わらずごろんとなり、空と会話をするくらい。
伏せていた携帯が鳴った。
マコトからだった。
「もしもし。」
大きく仰向けのごろんとした姿勢だった。
『優、家?』
「そう、部屋。」
一人でのんびり休日を過ごしてます。
「マコト・・・・楽しかった?金曜日。」
「金曜日?・・・・ああ、中止したよ。もう、協力してよ。せっかく聖と佐島君を寄せてるのに、優がいないとバランスが悪いじゃん。」
もう放っといても大丈夫だと思うのに。
まだ安心できない状態なの?
だって他にサジーなんて呼んでる人知らないけど。
「マコト、聖はもういいでしょう?」
「後少し位手伝ってよ。」
無理かも。それは私には無理かも。
「ねえ、優、聖は話してくれるまで待つって言ってたけど、私は隣だからさ、気になって仕方ないんだよね。」
「何?」
「優が隠してる事。」
「別に隠してることはないよ。」言ってないだけ。
「今週元気なかったし。」
「ちょっと週末から睡眠のペースを乱して、それが尾を引いてたの、それだけだよ。」
「どうしても、言いたくないんだ。」
「別に。」
「矢田君に優の連絡先教えたから。」
「どうして?」
「頼まれたから。」
だからって。
でもいつ?
知らない相手から連絡はない。
そんなことを言われたら携帯が鳴るたびに・・もしかしてって思うじゃない。
「謝りたいって言ってた。」
「逆だと思う。私が謝り過ぎたから、もういいよって、そんな事じゃない?」
空とぼけてみた。
「まだ連絡ないんだね。」
「・・・・別にない。」
「そうか、分かった。じゃあね。来週聞くから。」
「別に何もないよ。」
「その時は矢田君に聞く。」
嘘でしょう?
でも知らない。私は知らない。
マコトとの電話を終わりにしてからもずっと手にしていた携帯。
気になって来るじゃない。
ずっとこんな感じで明日も連絡を待つの?
そんなのはやめて欲しい。
謝っても、だから何?
迷惑だと思われてたんだから、もう隣では飲まない、一緒には飲まない、多分そんな機会はないから。
聖と佐島君は自分達で何とかなってください!
携帯は手放した。
「優、食事よ。降りてきて。」
「は~い。」
起き上がって携帯を見る。
どうしようかと迷って、手にしてポケットに入れた。
お母さんを手伝い、夕食の準備をして。
「お腹空いてないから少しでいい。ご町内の散歩くらいじゃあお腹空かなかった。」
「どうせ部屋でもゴロゴロしてたんじゃないの?」
「だって何もすることないんだもん。空がきれいだから、空を見てた。」
「だったらお父さんの相手をすればいいのに。」
「そうだね。」
でも、そんな気分じゃない事だってあるの。
お父さんが悪い訳じゃないのに。
本当にお腹空かなくて、おかずだけにした。
ポケットの携帯は静かなまま。
お風呂に入ってベッドに入っても何も伝えてくれないままだった。
自由な週末を持て余す。
ゴロンと横になって電気を消して目を閉じても眠気が来ない。
まだ早い時間だから、しょうがない。
話し相手の空はもう真っ暗で、カーテンを開けても何も見えないだろう。
私も目は閉じてるし。
真っ暗な部屋、いきなり光と音が存在を放った。
ちょっとびっくりした。
表示されたのは知らない人からの電話番号だった。
いきなり電話だったらしい。
それを教えられたんだろう、それしかないか・・・・。
「はい。」
『いきなりでごめん、矢田ですが、赤城さんですか?』
そうだった。
「はい、赤城です。」
『矢田です。番号は親切な友達に教えてもらったんだ。このまま少し話をしてもらっても大丈夫?』
「はい。大丈夫です。」
目を閉じたまま。横になったまま。
『この間は言い過ぎた、ごめん。』
「大丈夫です。当然だし、気にしないで。私も気をつけようと思ってるし。」
そう言ったら黙られた。
目を開けた。暗い部屋しか見えない。
そのまま静かに時間が過ぎて。
電話中なのを忘れそうなくらい。
「あの・・・・本当に気にしないで。この間は本当にお酒の料金しか置いて来なかったけど、足りなかったよね。すみません、そこに思い至らなくて。」
あのクラッカーの料金が入ってないと思う、ついでに消費税はどうなってたんだろう?
まあ、いいか。足りないのは同じだ。
『僕が誘ったから、いい。怒らせたんだし、お金も返すべきだから。』
「怒ってはないです。大丈夫です。怒るのは矢田君だし。私は反省するのみ。」
明るく言ってみた。
冗談に聞こえたらそれでもいいって思った。
でもまた会話が途切れて。
「本当に大丈夫。マコトが何か言ったの?ちょっと勝手にいろいろ考えてるみたいだから、気にしないでね。もう・・・・本当にお節介なの。」
やっぱり冗談にした。
息苦しい。
終わりにしたい。
「あの、もう寝てたの。ごめん、このまま寝そう・・・・・。」
『ごめん。本当に。』
「ううん、じゃあ、お休み。楽しい週末を。」
『うん。お休み。』
そう言われたのを聞いて、電話を終わりにした。
目は閉じたまま、ちょっと力が入る。
大丈夫。謝ってもらえたから、それで満足する、そして気を付ける、それは言った通り。
大きく息をついて、携帯を頭の上に置いた。
眠気はゆっくりやってきた。
「あ~、お腹空いた。」
目が覚めて一番にそう思った。
やっぱりご飯を食べないとお腹が空くみたい。
今日は出かけよう。
何でもいい、どこでもいい、出かけよう。
いつもより早めに下に降りて一人で準備した。
コーヒーの香りに誘われてお父さんが起きてきた。
いつもよりは早い。
「おはよう、お父さん。昨日ご飯食べなかったからお腹空いた~。」
お父さんの分のパンも焼いてあげる。
コーヒーが落ち切ったタイミングでお母さんも起きてきた。
「優、出かけるの?」
「うん。お昼もいらない。夕方には戻ってくるから。」
「はいはい。」
結局いつものように皆が揃って朝ごはんになった。
お腹空いたと言っても普通にいつもの分で満足はする。
どこに行くか、決めずに行ってもいいだろう。
それでも定期の範囲で、どこかで降りる。
ゆっくりと買う気のない物を見ている。
洋服だと店員さんが話しかけて来るけど、そうじゃないお店では遠巻きに見てもらえる。
買う気がないお客様は分かるんだろう。
だって本当に無い。
家具なんて、自宅暮らしの私には本当に必要がない。
お兄ちゃんの部屋はどうなってるんだろう?
元々最小限で一人暮らしを始めたから、さなえさんと一緒に選んだものが並んでるんだろう。一度も招待されたことがない。だから全然分からない。
大きなダイニングテーブルに手をついて周りを見たら、やっぱり二人組のお客様が多いのに気がついた。一人暮らし用だったらもっと違うお店でもいいのかもしれない。
ソファもテーブルも、大きな家族仕様だった。
だったらそうなるよね。
それでもクッションカバーやエアプランツなどの植物やちょっとしたアクセントの物だったら私の部屋でも全然いける。
その辺りもサラリと見て、でも本気買いの人の邪魔をしないように、そっと隣の店舗に移動する。
お腹を空かせるために歩いてるみたい。
ぐるぐる回って、ゆっくりフロアを移動して、上から降りてくる。
荷物は増えないまま。
結局お腹は空かないのに足が疲れたので、デザートを買って早めに帰ることにした。
電車の中でお母さんに連絡をする。
『楽しみに待ってる。』
そう言われたからいい。
「ただいま~。」
「お帰り~、待ってたのよ~。」
「私じゃなくてデザートでしょう?」
「デザートを持って帰ってくる優をよ。」
そう言ってお母さんと箱を空けて、さっそく紅茶を入れてもらう。
三種類の見た目も綺麗なデザートを買ってきた。
じゃんけんで好きなものを選ぶけど、結局スプーンを持った手は交差して、ちょっとづつ食べ合う。そんな感じがいい。
「もう、余計なカロリーが足されたから、遠回りして買い物しなきゃ。」
「一緒に行く。散歩と買い物にしよう。」
荷物持ちに立候補した。
お昼は食べてない。
それでもデザートを食べたし、夕食も美味しく食べられそうだった。
また昨日の公園に行った。
遠回りと言いながらベンチで休憩したお母さん。
やっぱり今日も猫たちは姿を隠してる。
「ねえ、優。最近元気ない。お父さんも心配してるわよ。」
「大丈夫、先週だけちょっと元気なかっただけ。もう元気でしょう?」
「男の子は単純で良かったなあ、優はお兄ちゃんより分かりにくい。」
「お兄ちゃんが分かりやすいだけだよ。」
一緒にしないでよと笑って言う。
丸わかりのお兄ちゃんだったから。
「必要なら友達でも、先輩でも、お父さんでもお母さんでも、誰でもいいから相談してね。」
「何もないよ。順調です。あ、何もなさ過ぎて、何もないのか。」
「じゃあ、何かあったら相談してね、報告でもいいけど。」
「もちろん、私も隠せないかもよ、丸わかりかもよ。」
「そうかもね。」
両手いっぱいの荷物を買いこんだ。
私が立候補しなかったらお父さんを付き合わせるつもりだったらしい。
お米と牛乳と、洗剤などの液体と、ずっしりとくるものが両手にぶら下がる。
本当に生活するって大変。
特別なことはなくても、生きてるだけでもいろんなものが必要だ。
お母さんはずっと大学の頃からこんなことをやっているんだから。
お父さんだってそう。
田舎から出てきて一人暮らしをして、ずっと結婚するまでは一人でやっていた。
でも皆もそうだ。
私だけがちょっと甘えてるくらい。
お祖母ちゃんも一人でやってるのに。
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