街中で偶然出会えたら、それは運命だと思います!

羽月☆

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10 何かの間違いだとしたら、いつどこで誰が何を????? ~友田史上初の土曜日の朝

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「誰だ、飲ませ過ぎたのは?」

「分かんないよ。本当にさっきまで楽しそうに喋ってたのに。」

「すごいね、電池入ってるみたい。電池切れみたいにコテン。」

「だから、そんなことどうでもいいよ。起きないよ。どうするんだよ。」

「決まってるよ、俺と露木さんは相棒がいて部屋が狭い、ラッキーなことに友田君とこのソファはとても寝やすいベッドになっていて、しかも一人暮らし。決定だね。一番うれしいパターン。」

金子が言い放つ。

「お前、俺のところで目が覚めたら、パニック起こして泣きだすよ。」

「別にお前はベッドで寝るだろう。目覚めて目の前にお前の顔があったりしたら、まあびっくりだけど。大丈夫だよ。俺もついて行くから。一緒に運んでやるよ。安心しろ。これでも上司だ。」

薄い胸を張って反りかえる。
そうなるのか・・・、まあいい。
目が覚めるまで一緒に付き合ってもらおう。



そう言ったよな、そのつもりで一緒に来たよな?



タクシーまで抱えて乗せて、一緒に三人で乗り込んで俺の部屋に来て。
タクシーを残したのはお金のことじゃないのか?
まさかタクシーの中で手紙を書いてたとは。


俺の部屋を開けてくれて電気をつけてくれて。ソファに寝かして、手紙を置いて、玄関へ。

「じゃあな、頼んだぞ。」

そう言って、本当に帰ってこなかった。

タクシーの走り去る音が聞こえた後も。



シーン。



あまりに静かで彼女の寝息さえ聞こえてきそうだ。
勘弁してくれ。こっちがパニックだ。
寝室に入り金子に電話をする。


「お前、一緒に行くって言いながら、帰ったのか?」

『行っただろう。1人で連れ込むのはなんとなく気まずいだろうから。ちゃんと彼女宛に手紙も書いたし。ペットボトルでも置いて、お前も寝ろ。邪魔はしないから、報告は月曜日のお昼な。タクシー代は奢ってやるよ。一応上司だし。可愛い俺の部下をよろしく。じゃあな、おやすみ、いい夢見ろよ。明日はちゃんとつくしちゃんのお世話しろよ。バイバイ。』

切れた、切りやがった。


むかつく。ここは怒るところだろう。
目が覚めるまで一緒にいてくれると思ってたのに。


取りあえず自分はいつも通りシャワーを浴びて、着替えて。
彼女の見えるところに手紙とペットボトルを置いて、電気を小さくして、寝室に入った。


知らない。彼女が目覚めた時にどう思うか。
責任持たないぞ。泣かれたらどうする?
まあ、それはないか。


もう寝よう。
二日酔いを待たずに頭が痛い。


すべて忘れて・・・・・。とりあえず今日は終わった。
明日は明日。

そうつぶやいて、寝た。







朝、ゆっくり目が覚めた。
良く寝た。
何だか、何か考えなきゃいけないような、忘れてるような。
ぼんやりした頭を掻きながら寝室を出て・・・・・。

ん?

何だ?

いや、知ってる。・・・忘れてた。

ボサボサの起き抜けを見られた。
思わず寝室に引っ込んで、扉を閉めて、一呼吸。

さすがに失礼かと思う。



「ごめん、すっかり起き抜けでぼんやりし過ぎたから。着替えて、顔を洗うまで待っててくれる。すっかり寝坊して、ごめんね。」

自分の部屋でこんなに声を張ることもなかった。
はい。と聞こえた気もした。

取りあえずだらしないパジャマを着替えて、部屋をでて洗面台に。顔を洗ってスッキリする、自分だけ。

あ・・・・。

「ごめん、顔洗ったりしたいよね。何にもないんだけど、歯磨きのセットは使い捨てがあるから、これ使う?」

「すみません。お借りします。」

彼女を洗面台に案内する。

「顔を洗うものとか、必要な物、コンビニで買って来ようか?」

「いえ、大丈夫です。」

「これ使って。」

タオルを差し出す。

顔は見ないようにして、服はしわが寄っている。申し訳ない。脱がすわけにはいかなかったから。

髪を適当に整えてリビングでコーヒーを入れる。


歯磨き直後だと違うものがいいだろうか?
紅茶とお茶くらいならある。
後はビールと水。

取りあえず日常を。
テレビをつけて朝の番組を適当に選ぶ。

声がすると少し落ち着く。



しばらくして彼女が戻ってきた。


「おはよう、つくしちゃん。」

「おはようございます。友田さん、ご迷惑かけました。」

「ああ、話をしてたら、いきなり寝たからみんなびっくりしたんだ。金子もここまで一緒に来たんだけど、目が覚めないようだったからそのまま帰ったよ。」

「はい手紙に書いてあって。」

「読んでいいかな?」

「・・・・・はい。」


テーブルの手紙を読む。
タクシーの中で書いた文字で見にくいが。


『びっくりした。突然寝るんだね。友田のところが一番広いので連れてきました。ゆっくり朝まで寝れたら良かったけど。びっくりしてるだろうけど、友田を信じてる、というか絶対何も出来ないタイプだから。だから勝手に帰らないでね。せっかくだからゆっくり話ができたらいいね。月曜日に謝るから。ごめんね。後は友田に託します。何かあったら電話してね、いつでもいいよ。』

電話番号が書いてあった。

俺がかけたい、朝から遠慮なく起こして、一言いいたいくらいだから。

「あ、ごめん、座って。俺は朝はコーヒー飲むんだけど、何か飲む?コーヒーと緑茶と紅茶と水とビールしかないけど。」

「じゃあ、コーヒーをお願いします。」

キッチンでカップに満たしたコーヒーを持ってくる。

テーブルに置いて離れて座る。



「よく眠れた?」

「はい。」

「ごめんね。すっかり寝すぎて。大分待ってた?」

「いいえ、三十分くらい。びっくりして一人でバタバタしてたので、落ち着くまで時間は必要でした。」

「本当に金子も一緒だったし、俺もすぐ寝たから。」

だから何もしてないから心配しなくていいと言いたい。

「本当に、すみませんでした、この間のことも。昨日も思いっきりからかわれて、こんなことになって。全部私の責任です。巻き込んでしまって。」

「ああ、そうだね。巻き込まれてるかも。でも、別に気にしないでいいよ。」

彼女がこっちを見てる気配に顔を向けるとゆっくり俯かれた。
これはどういう状態なんだろう。


はっきり好きだと言われたという前提で話をしていいんだろうか?
自分はというと・・・どう言ったらいいか、何とも言えない。
中途半端だ。
昨日初めて話をしたくらいだし。


「ちょっと、どうすればいいか分からないんだけど。どうしたい?」

「あの、迷惑をかけるつもりはないです。コーヒーを頂いたら帰ります。タクシー代は?」

「ああ、それは上司のおごりだって。気にしなくていいと思うよ。」

このまま帰したら絶対大馬鹿呼ばわりだ。
罵られておしまいだ。

「ねえ、明日一緒に食事でもどう?」

うれしそうな顔になったのを見たけど、そのあとちょっと困る顔になる。

「あ、ごめん、何か用事があったら来週でもいいし。」

「いえ、ないです。空いてます。いいんですか?」

「うん、せっかく知り合えたから。お互いまだ知らない同士だし。ちょっと話しようか?」

「はい。あの、すごくうれしいです。」

あ。・・・泣かないでくれ。

泣きそうな顔から笑顔になって泣かれはしなかった。
確かに可愛いか。
ほぼすっぴん?顔洗ったのかな?

さて、じゃあ今日は?

「今日、急いで帰る必要ある?」

「いいえ。」

元気に言われる。

「じゃあ、服を貸すし、シャワーー浴びてもいいし、せめてジャケットは脱がせた方が良かったね。アイロンかけた方がいいよね。」

立ち上がり自分の恰好を改めてみる彼女。
ため息をついている。

寝室から適当に服を選んで持ってくる。

「アイロン準備しておくから、シャワーどうする?バスタオル貸そうか?」

思いっきり首を振られた。

「じゃあ、着替えてきたらいいよ。」



彼女がアイロンをかける間ソファにもたれて話をする。


「最初は金子が何か言ったの?」

「何をですか?」

「いきなり一緒に飲もうって話になったのかなって?」

「・・・・・金子さんと2人で休んでるときにこっそり聞かれました。友田さんの事を見てるんじゃないかと。」

「・・・・そう。なんて答えたの?」


彼女がこっちを見て、またすぐにそらす。


「はっきり答えてませんが、バレたみたいで、勝手に納得されて協力するって言われて。何故か無謀な行動まですぐにばれて。」

「ああ、それは偶然。露木さんが金子に聞いてきて、全く同じ体験談の話が目の前で繰り広げられて、僕がびっくりして反応したから、金子にバレた。露木さんは全然気が付いてなかった。ただそこに居合わせたから聞いてみただけだったし。」

「そうですか。」

「全部情報をつなげたのが金子で、うっかりばれたのが俺で。露木さんにも協力を申し出て、ああなったみたい。」


他人事のように話してしまう。
彼女の顔に悲しそうな表情が張り付いてるのに気が付いてやばいと思った。


「でも、楽しかったね。露木さんと話をするのも初めてなくらい。つくしちゃんの声は聞いたことはあってもちゃんと見てなかったから。だいたい、俺が横にいる時に何で部下を呼ぶんだろうって不思議だったし、あんまり見ても悪いかと思って意識的に視線は外してたから。」


「だから気が付かなくて本当にごめんね。眼鏡があったら多分気が付いたとは思うけど、さすがに会社なら自信あるけど、どうだろう、あの雑踏の中。変なデート商法かと思ったりしたし。」

「友田先輩って、名前はちゃんと言いましたよ。」

「うん、でも、いきなりだったし、体調悪かったし。理解できるほど頭が回ってなかった。冷たくして悪かった。そんなつもりはなかったけど、ごめんね。」

「いえ。本当に忘れてください。」

「人生で一回あればいい方だよ。忘れられないと思うけど。」

「じゃあ、忘れないでください。」

「いいの?」

「・・・はい。」


「変わってるね。つくしちゃんって、名前も変わってるね。あの時言ってくれれば回ってない頭でも覚えたのに。」

「そうですか?」

「多分。」

「何でつくしちゃんなの?何かいわれのある名前?」

アイロンはとっくにかけ終わり。コードを丸めてアイロン台も畳まれて。

「母親がつけてくれました。何となく響きが似合うということで。春生まれなんです。『桜』でも良かったのに。ブチブチ切れたらどうするんでしょうか?『つくし』って確かに珍しいので覚えてもらえます。今では気に入ってます。」

「うん、可愛いよ。似合ってる。」

真っ赤になったのも可愛い。
確かに金子が可愛いを連発してたのもわかる。ちょっとくすぐりながら笑わせたり、からかったりしたくなるタイプかも。


「ねえ、同期の男の子たちとは?」

「とは?・・・・とは? 何を聞かれたか分かりませんが。」

「ああ、仲がいい男の子とかいないのかなって。」

「いません。」

「うちの研究室の新人は・・・・いたけど、一人。段田君。」

「話したことないです。」

「そう。あんまり飲み会もないの?同期会みたいなもの。」

「ない・・・・のかな。誘われません。今のところの配属1人だし、弥生さんが仲良くしてくれてるから何とか寂しくないですけど。他の人が集まってるかはわかりません。たまに他の子ともランチしたりしますが、聞いたことないので。」

「ふ~ん、金子みたいな陽気でおせっかいがいるとまとまるんだけど、いなかったのかな?」

「いなかった気もします。どうしよう、自分だけハブられてたら。悲しくなってきました。」

「大丈夫だよ、そんなタイプじゃないでしょう?」

顔をあげてこっちを見る。

首をかしげる。変な事言った?

ちょっと遅れて真っ赤になり視線を落とす。

何か気になった?

ダラダラと会話をして、ちょっと距離感を探るような。
自分の心の動きもわからないまま。

本当に微妙な関係。

いっそ。触れて見たらわかるのだろうか?
触れたいとは、まだ・・・・思わない・・・・けど。
可愛いとは思う。

ぼんやり見る。

スーツを広げてきれいにアイロンがかかったことに満足するような笑顔になっている。

今なら触れたいと思うかも。
そんな瞬間なら昨日もあった気がする。

頭を撫でるくらいの事ならやってあげたいとか、思ったかも。


立ち上がりアイロンを回収に行く。

「きれいにできて満足そうだよね。嬉しそうな顔になってるよ。」

「はい。きれいになりました。」

立ったままその笑顔を見下ろして。

「良かったね。」

そう言って頭を撫でた手でアイロン台とアイロンを持って寝室に行く。
真っ赤になったのは分かった。

なんなんだ、これは。
ほぼ術中にハマる・・・・みたいな気がしてきた。
自分の気持ちなのか自信がないのに。
金子による、洗脳?刷り込み?のような・・・・。
そこを間違うわけにはいかないから。
むしろゆっくり様子を見たいとすら思う。

あんな子を間違って傷つけるわけにはいかないから。
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