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8 温度差にちょっとがっかり ~金子の強引な計画遂行
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月曜日、昼を一緒にとりながら記憶がないと言い出す友田。
何だと・・・。
本当に覚えてないのか?
1人浮かれてた俺はアホじゃないか。
まさか今更・・・・。
押し切ろう、このまま押し切ろう。
ちょうど露木さんが来るのが見えた。
1人だったので呼び寄せて声をかけた。
ここでつくしちゃんを誘ってもらって、めでたく金曜日の飲み会がセッティングされるはずだったのに。
なんでだ?
おかしいおかしい。
つくしちゃんが街中で友田に告白?
この微妙に確かめようのない話。
誰もはっきりとは言い切らないが、間違いないだろう。
でもこのまま進めることにした。
何とかしよう。
勢いで決めた。
つくしちゃんが良ければ金曜日。
お店は昨日藍と考えた。
二人の出会いの場だ・・・・再会の場なのかもしれないが、多分そうだろうが・・・・・、とりあえず女性目線で決めてもらった方がいい。
予約サイトもお気に入りに入ってる。
よし。
食事が終わった友田が逃げ出そうとするのを捕まえた。
休憩室に連れ込んで話をする。
やはり告白されたのは友田だ。
つくしちゃん、俺の紹介を待てなかったの?
とりあえず後はつくしちゃんだ。
友田に謝罪のチャンスを与えるということで来てもらおう・・・・。
ここは正直に言った方がいい。
何もかも知ったうえで紹介したいと。
午後の仕事も終わるころ、つくしちゃんに声をかけた。
「羽柴さん、ちょっと仕事が終わったら来てくれる?」
「・・・はい。」
何となく嫌がるような戸惑うようなそぶり。
笑顔を向けた。大丈夫だよという笑顔だ。
仕事上の失敗とかそんな話じゃないと思ってはくれるだろう。
あとは・・・・心当たりがいろいろあるだろうから。
皆がコールセンタールームから引き揚げて早々に帰り支度をする。
目の前につくしちゃんがやってきた。
やはり不安の色が見える。
「ごめん、呼んでおいてなんだけど、あと少しで終わるから。ちょっと後でいい?帰り支度していいから席で待っててくれる?」
「はい。」
もう少し人が減った方がうれしい。
仕事の切りのいい所までしたい。
彼女もトイレに行ったりするだろう。
さり気なく彼女の終わるのを待ってもう一度呼ぶ。
会議室に書類を持って入る。
一応仕事の用もあった。
椅子に座ってもらって関係ない書類は抱えたまま話をする。
「どう、仕事?」
「はい、なんとか対応もスムーズにできるようになったつもりですが。」
「そうだね、処理件数もほとんど平均的にできてるし、問題ないよ。」
「ありがとうございます、良かったです。」
「羽柴さんの時は同期がいなかったからね。可哀想だったね。」
「はい。でも弥生さんがいろいろと教えてくれました。」
「そうだね、仲いいよね。今日のランチ後に話した?」
「・・・・いいえ、特に。」
何も聞いてないらしい。
「う~ん、ちょっと言い出しにくいんだけど・・・・・。」
どう言えばいいのか始まりが分かりにくい。
でも顔をあげた彼女の表情が不安に曇ってきてしまって。
「あぁ、えっと隠さずに言うと。金曜日に友田と飲んで、彼女はいない、好きな人も。後輩を紹介する話はしたんだけど。OKももらったんだけど・・・・・。」
じっとこっちを見る。緊張が伝わる。
「覚えてないって言うんだ。確かにかなり酔いつぶしてしまったんだ。で、起きたら二日酔いがひどくて、眼鏡を踏んづけて壊した上に二日酔いで頭痛も酷かったらしくて。とりあえず眼鏡を買いに行ったけど、誰かに声かけられたけどさっぱり見えてなくて、その上気分も最悪で絶不調。」
あっ・・・・。
口が開いた。
やっぱりつくしちゃんか。
決まりだな。
「声かけたよね。誰が誰にとは言わなかったけど露木さんにどう思うか相談されて。一緒に聞いてた友田がお茶はこぼすはオロオロするし。友田にも確認した。睨んだつもりはないらしいし、本当に二日酔いと頭痛と見えない目ということで・・・・あいつに直接謝らせてくれる?」
無言。
でも見える肌が真っ赤で。そりゃそうだ。
街中でいきなり告白ってどんな行動力だ。
「金曜日に露木さんを含めて4人で飲みに行こう。お店も決めてるんだ。都合どうかな?」
「・・・・友田先輩は何て言ってるんですか?」
「とりあえず謝りたいって。羽柴さんの事はよく知らないから、まずは知り合ってから・・・・。」
「きっと呆れてますよね、いきなりですし。我ながら呆れてます。弥生さんは相手を知りません。会社の人だとはバレましたが。」
「うん、わかってる。友田はびっくりしたと言っただけだよ。そこは大丈夫。あと、露木さん抜きじゃ居心地悪いでしょう?露木さんにバレたら嫌かな?」
首を振る。
「じゃあ、いいかな?約束したし、僕はお互いを紹介したいんだけど。結果は僕は何とも言えない。僕が勝手にしたことだから。ごめんね、友田が全然鈍感で気が付いてないから。あんなに白衣姿にうっとりされても全然・・・・。」
顔をあげた表情がこの上情けなさそうで。
「あ、ごめん。だってあれはなかなか・・・・・・、友田しか見てなかったよね。さすがに声をかけたはずの自分が可哀想になったくらい。」
「・・・すみません。」
「いいよ。だからというか、あとはつくしちゃんの頑張り次第。友田も暇だと思うから、ちょっとデートの真似事して見て。思ったのと違うと思うのはつくしちゃんかもしれないし。」
「そんな・・・・・。」
「よし、決定。金曜日早く仕事終わらせるから。一緒に楽しく飲もうね。」
席を立った。
「ありがとうございます。」
顔を見ると嬉しそうで。
「楽しみにしてくれる?」
「・・・・はい、よろしくお願いします。」
「うん、僕も楽しみ。ごめんね、遅くなったけどそれ言いたかっただけ。詳しくは後日。」
「はい、よろしくお願いします。」
可愛い、やっぱり可愛いじゃないか。素直でいいじゃないか。
あんなによろしくと言われると頑張りたくなる。
早速予約を入れた。四人分。
友田の研究室に行く。
珍しく他には誰もいなかった。
ずかずかと入って行って後ろから声をかけた。
「白衣姿にうっとりされる友田君、金曜日飲みに行こうね、決定しました。」
「あ?」
「『あ?』じゃない、ちゃんと素面の時に約束しただろう。やっぱり土曜日の突撃はつくしちゃんだったから、お前はとりあえず謝って、あとは何度か一緒にデートして、あとは2人で話し合って決めてくれ。」
「お店も予約したから。金曜日、6時から4人ね。彼女がすごく楽しみにしてるって、よろしくお願いしますって言われたからさ。すっごく楽しみ。俺が紹介するって言ったのに、フライングするなんて面白い子だろう?その破壊的な行動力も可愛いよな。」
反応がない。
「いいだろう?ダメか?何か気になるか?」
ちょっと困るが、何かあるなら早めに言ってほしい。
真面目に聞いた。
「いや、じゃあ、謝る。」
「ああ、一緒に楽しく酒を飲もう!」
「ああ、分かった。金曜日、6時ね。」
「なあ、本当にうれしいとは思わないのか?正直に答えて欲しいんだけど。まったくの余計なおせっかいか?可愛い年下の彼女が出来るのさえ煩わしいとか思うのか?」
「・・・いや、想像がつかない。よくわからない。」
「なんだ、その恋愛偏差値低い男のセリフ。」
「だって知らない後輩にいきなり来られてみろ。ビビるって。」
「何でだよ、顔も声も存在も知ってるじゃん。何度も一緒のところ見てるし、お前こそいつもさり気なく背中を見てたじゃないかよ。」
「は?」
「だから何なんだよ、その間抜けな返事。見てたよ。焦点合ってなかったのか?彼女がいなくなった後お前を見ると、ほとんどお前は彼女の方を見てたよ。」
「は?」
「無自覚か?他はなんだ?そんなにぼんやりしてたのか?」
「わからん。あんまり考えてなかった。」
「まじか・・・・・。てっきりお前も少しはいいなあって思ってくれてると思って、喜んで期待してたのに。」
「わからん。」
「分かんないのは分かった。もういい。あああ・・・・つまんないなあ。うまくいく気満々だったのに。」
「なあ、何でそんなに勧めるんだ?」
「だって彼女が面白いくらい丸わかりだったから。お前もいい奴だしどうかなあって思ったんだけど。何だよ、変に勘繰るなよ。まさかお古とか思ってないよな。」
「思うか、馬鹿。ラブラブな奥さんがいるだろう。そんな嫌な奴じゃないだろうよ。」
「まあ、そうだな。」
「何か弱みでも握られてるのかと思ってさ・・・・。」
「つくしちゃんに?」
「ああ。」
「それも考え過ぎだ。そんな変な子じゃない。もっと普通の子だよ・・・・・多分。まあ、楽しもう。金曜日。いい店を二人のために藍と探したんだよ。」
「そりゃどうも。」
手を振られたので話を終わりにした。
帰ろう。
下準備は完璧。
後は明日、露木さんに決定のお知らせをするだけだ。
当然家に帰って一通り藍に報告した。
さすがにいきなりの街中告白には改めて驚いていた。
「やるね、つくしちゃん。」
「うん、びっくりだよね。」
「友田君の引き気味の姿勢もわかるね。」
「そうかな?」
「うん、まだ社内だと何となくわかるけど、本当に誰って感じだよね。ナンパかと思っちゃう。」
「あ~、なるほど。そうか。友田が言うには名前も言わなかったらしい。」
「じゃあ、引く。」
「そうか、謝れとか言ったけど、お互い様か。」
「うん、そうだと思う。」
「これが男女逆転だったら気持ち悪いかも。」
「・・・・まあね。」
「でもとりあえず行けるんでしょう?」
「うん、せっかくお店探したしね。今度行こうよ。」
「いいね、良かったら今度行きたい。」
「うん、いろいろチェックしてきます。」
「お願い。」
「うん。」
「は~、でもさあ、お願いしますって、真っ赤になって頼まれたからさあ、何とかしたいんだよねえ。友田との温度差が気になるんだけど。可愛いと思うし、お似合いだと思うんだけどなあ、でも前は美人秘書に一目ぼれだったからタイプは違うんだよなあ。どう思う?」
「う~ん、少し大人になったから可愛い年下もいいと思う。トモはどう?前は年下とか気になった?今回のつくしちゃんの事だけは、やたらと可愛いを連発してるけど。」
「あ、気になる~?」
バシッと音がして頭が揺れた。
「思いっきり叩いたよね、今。くらくらするよ。・・・・分かりやすいから本当に面白かわいいんだよ。ただの真面目だったらそうは思わなかったなあ。前に話したじゃん。ストーカーまがいでドン引きされたって歓迎会で披露してた子のこと。その子だよ。」
「あああ・・・・思い出した。尾行の下手な子ね。」
「まあね。」
「なるほど、思い込んだら直進タイプなんだ。」
「そうだろうね。ね、面白いでしょう。分かりやすいし。何だろう可愛いんだよ、そんなところが。友田も気に入ってくれると楽しいと思うけどなあ。」
「黒子よ黒子。」
「はいはい。」
何だと・・・。
本当に覚えてないのか?
1人浮かれてた俺はアホじゃないか。
まさか今更・・・・。
押し切ろう、このまま押し切ろう。
ちょうど露木さんが来るのが見えた。
1人だったので呼び寄せて声をかけた。
ここでつくしちゃんを誘ってもらって、めでたく金曜日の飲み会がセッティングされるはずだったのに。
なんでだ?
おかしいおかしい。
つくしちゃんが街中で友田に告白?
この微妙に確かめようのない話。
誰もはっきりとは言い切らないが、間違いないだろう。
でもこのまま進めることにした。
何とかしよう。
勢いで決めた。
つくしちゃんが良ければ金曜日。
お店は昨日藍と考えた。
二人の出会いの場だ・・・・再会の場なのかもしれないが、多分そうだろうが・・・・・、とりあえず女性目線で決めてもらった方がいい。
予約サイトもお気に入りに入ってる。
よし。
食事が終わった友田が逃げ出そうとするのを捕まえた。
休憩室に連れ込んで話をする。
やはり告白されたのは友田だ。
つくしちゃん、俺の紹介を待てなかったの?
とりあえず後はつくしちゃんだ。
友田に謝罪のチャンスを与えるということで来てもらおう・・・・。
ここは正直に言った方がいい。
何もかも知ったうえで紹介したいと。
午後の仕事も終わるころ、つくしちゃんに声をかけた。
「羽柴さん、ちょっと仕事が終わったら来てくれる?」
「・・・はい。」
何となく嫌がるような戸惑うようなそぶり。
笑顔を向けた。大丈夫だよという笑顔だ。
仕事上の失敗とかそんな話じゃないと思ってはくれるだろう。
あとは・・・・心当たりがいろいろあるだろうから。
皆がコールセンタールームから引き揚げて早々に帰り支度をする。
目の前につくしちゃんがやってきた。
やはり不安の色が見える。
「ごめん、呼んでおいてなんだけど、あと少しで終わるから。ちょっと後でいい?帰り支度していいから席で待っててくれる?」
「はい。」
もう少し人が減った方がうれしい。
仕事の切りのいい所までしたい。
彼女もトイレに行ったりするだろう。
さり気なく彼女の終わるのを待ってもう一度呼ぶ。
会議室に書類を持って入る。
一応仕事の用もあった。
椅子に座ってもらって関係ない書類は抱えたまま話をする。
「どう、仕事?」
「はい、なんとか対応もスムーズにできるようになったつもりですが。」
「そうだね、処理件数もほとんど平均的にできてるし、問題ないよ。」
「ありがとうございます、良かったです。」
「羽柴さんの時は同期がいなかったからね。可哀想だったね。」
「はい。でも弥生さんがいろいろと教えてくれました。」
「そうだね、仲いいよね。今日のランチ後に話した?」
「・・・・いいえ、特に。」
何も聞いてないらしい。
「う~ん、ちょっと言い出しにくいんだけど・・・・・。」
どう言えばいいのか始まりが分かりにくい。
でも顔をあげた彼女の表情が不安に曇ってきてしまって。
「あぁ、えっと隠さずに言うと。金曜日に友田と飲んで、彼女はいない、好きな人も。後輩を紹介する話はしたんだけど。OKももらったんだけど・・・・・。」
じっとこっちを見る。緊張が伝わる。
「覚えてないって言うんだ。確かにかなり酔いつぶしてしまったんだ。で、起きたら二日酔いがひどくて、眼鏡を踏んづけて壊した上に二日酔いで頭痛も酷かったらしくて。とりあえず眼鏡を買いに行ったけど、誰かに声かけられたけどさっぱり見えてなくて、その上気分も最悪で絶不調。」
あっ・・・・。
口が開いた。
やっぱりつくしちゃんか。
決まりだな。
「声かけたよね。誰が誰にとは言わなかったけど露木さんにどう思うか相談されて。一緒に聞いてた友田がお茶はこぼすはオロオロするし。友田にも確認した。睨んだつもりはないらしいし、本当に二日酔いと頭痛と見えない目ということで・・・・あいつに直接謝らせてくれる?」
無言。
でも見える肌が真っ赤で。そりゃそうだ。
街中でいきなり告白ってどんな行動力だ。
「金曜日に露木さんを含めて4人で飲みに行こう。お店も決めてるんだ。都合どうかな?」
「・・・・友田先輩は何て言ってるんですか?」
「とりあえず謝りたいって。羽柴さんの事はよく知らないから、まずは知り合ってから・・・・。」
「きっと呆れてますよね、いきなりですし。我ながら呆れてます。弥生さんは相手を知りません。会社の人だとはバレましたが。」
「うん、わかってる。友田はびっくりしたと言っただけだよ。そこは大丈夫。あと、露木さん抜きじゃ居心地悪いでしょう?露木さんにバレたら嫌かな?」
首を振る。
「じゃあ、いいかな?約束したし、僕はお互いを紹介したいんだけど。結果は僕は何とも言えない。僕が勝手にしたことだから。ごめんね、友田が全然鈍感で気が付いてないから。あんなに白衣姿にうっとりされても全然・・・・。」
顔をあげた表情がこの上情けなさそうで。
「あ、ごめん。だってあれはなかなか・・・・・・、友田しか見てなかったよね。さすがに声をかけたはずの自分が可哀想になったくらい。」
「・・・すみません。」
「いいよ。だからというか、あとはつくしちゃんの頑張り次第。友田も暇だと思うから、ちょっとデートの真似事して見て。思ったのと違うと思うのはつくしちゃんかもしれないし。」
「そんな・・・・・。」
「よし、決定。金曜日早く仕事終わらせるから。一緒に楽しく飲もうね。」
席を立った。
「ありがとうございます。」
顔を見ると嬉しそうで。
「楽しみにしてくれる?」
「・・・・はい、よろしくお願いします。」
「うん、僕も楽しみ。ごめんね、遅くなったけどそれ言いたかっただけ。詳しくは後日。」
「はい、よろしくお願いします。」
可愛い、やっぱり可愛いじゃないか。素直でいいじゃないか。
あんなによろしくと言われると頑張りたくなる。
早速予約を入れた。四人分。
友田の研究室に行く。
珍しく他には誰もいなかった。
ずかずかと入って行って後ろから声をかけた。
「白衣姿にうっとりされる友田君、金曜日飲みに行こうね、決定しました。」
「あ?」
「『あ?』じゃない、ちゃんと素面の時に約束しただろう。やっぱり土曜日の突撃はつくしちゃんだったから、お前はとりあえず謝って、あとは何度か一緒にデートして、あとは2人で話し合って決めてくれ。」
「お店も予約したから。金曜日、6時から4人ね。彼女がすごく楽しみにしてるって、よろしくお願いしますって言われたからさ。すっごく楽しみ。俺が紹介するって言ったのに、フライングするなんて面白い子だろう?その破壊的な行動力も可愛いよな。」
反応がない。
「いいだろう?ダメか?何か気になるか?」
ちょっと困るが、何かあるなら早めに言ってほしい。
真面目に聞いた。
「いや、じゃあ、謝る。」
「ああ、一緒に楽しく酒を飲もう!」
「ああ、分かった。金曜日、6時ね。」
「なあ、本当にうれしいとは思わないのか?正直に答えて欲しいんだけど。まったくの余計なおせっかいか?可愛い年下の彼女が出来るのさえ煩わしいとか思うのか?」
「・・・いや、想像がつかない。よくわからない。」
「なんだ、その恋愛偏差値低い男のセリフ。」
「だって知らない後輩にいきなり来られてみろ。ビビるって。」
「何でだよ、顔も声も存在も知ってるじゃん。何度も一緒のところ見てるし、お前こそいつもさり気なく背中を見てたじゃないかよ。」
「は?」
「だから何なんだよ、その間抜けな返事。見てたよ。焦点合ってなかったのか?彼女がいなくなった後お前を見ると、ほとんどお前は彼女の方を見てたよ。」
「は?」
「無自覚か?他はなんだ?そんなにぼんやりしてたのか?」
「わからん。あんまり考えてなかった。」
「まじか・・・・・。てっきりお前も少しはいいなあって思ってくれてると思って、喜んで期待してたのに。」
「わからん。」
「分かんないのは分かった。もういい。あああ・・・・つまんないなあ。うまくいく気満々だったのに。」
「なあ、何でそんなに勧めるんだ?」
「だって彼女が面白いくらい丸わかりだったから。お前もいい奴だしどうかなあって思ったんだけど。何だよ、変に勘繰るなよ。まさかお古とか思ってないよな。」
「思うか、馬鹿。ラブラブな奥さんがいるだろう。そんな嫌な奴じゃないだろうよ。」
「まあ、そうだな。」
「何か弱みでも握られてるのかと思ってさ・・・・。」
「つくしちゃんに?」
「ああ。」
「それも考え過ぎだ。そんな変な子じゃない。もっと普通の子だよ・・・・・多分。まあ、楽しもう。金曜日。いい店を二人のために藍と探したんだよ。」
「そりゃどうも。」
手を振られたので話を終わりにした。
帰ろう。
下準備は完璧。
後は明日、露木さんに決定のお知らせをするだけだ。
当然家に帰って一通り藍に報告した。
さすがにいきなりの街中告白には改めて驚いていた。
「やるね、つくしちゃん。」
「うん、びっくりだよね。」
「友田君の引き気味の姿勢もわかるね。」
「そうかな?」
「うん、まだ社内だと何となくわかるけど、本当に誰って感じだよね。ナンパかと思っちゃう。」
「あ~、なるほど。そうか。友田が言うには名前も言わなかったらしい。」
「じゃあ、引く。」
「そうか、謝れとか言ったけど、お互い様か。」
「うん、そうだと思う。」
「これが男女逆転だったら気持ち悪いかも。」
「・・・・まあね。」
「でもとりあえず行けるんでしょう?」
「うん、せっかくお店探したしね。今度行こうよ。」
「いいね、良かったら今度行きたい。」
「うん、いろいろチェックしてきます。」
「お願い。」
「うん。」
「は~、でもさあ、お願いしますって、真っ赤になって頼まれたからさあ、何とかしたいんだよねえ。友田との温度差が気になるんだけど。可愛いと思うし、お似合いだと思うんだけどなあ、でも前は美人秘書に一目ぼれだったからタイプは違うんだよなあ。どう思う?」
「う~ん、少し大人になったから可愛い年下もいいと思う。トモはどう?前は年下とか気になった?今回のつくしちゃんの事だけは、やたらと可愛いを連発してるけど。」
「あ、気になる~?」
バシッと音がして頭が揺れた。
「思いっきり叩いたよね、今。くらくらするよ。・・・・分かりやすいから本当に面白かわいいんだよ。ただの真面目だったらそうは思わなかったなあ。前に話したじゃん。ストーカーまがいでドン引きされたって歓迎会で披露してた子のこと。その子だよ。」
「あああ・・・・思い出した。尾行の下手な子ね。」
「まあね。」
「なるほど、思い込んだら直進タイプなんだ。」
「そうだろうね。ね、面白いでしょう。分かりやすいし。何だろう可愛いんだよ、そんなところが。友田も気に入ってくれると楽しいと思うけどなあ。」
「黒子よ黒子。」
「はいはい。」
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