公園のベンチで出会ったのはかこちゃんと・・・・。(仮)

羽月☆

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21 お試しなのは何?

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お試しと言ったけど、何を?
荷物を数日分バッグに入れて外泊の準備しながら考える。
粘土も持っていく。良平さんと一緒に作った(つもりの)看板を今朝今日子さんに見てもらった。
中に文字を書いて、周りを少し粘土で飾り付けて、キャンペーン中お店の前に飾っていいって言われた。ちゃんと風で飛んで行かないようにしなくては。雨の日はカフェの方においてもいいって言われた。

そして週末のお休みを自分からお願いする。

「いいよ、ずっと聞いてたから、師匠に会いに行くときはうんたらかんたらほいほいって。やっと会いに行けるって喜んでるでしょう?佐野君。」

「今日子さん、うんたらかんたらほいほいって?」

「そこは聞いてないの?」

「・・・なんだろう?場所もうっすらとしか聞いてないくらいです。」

「まあ、いいんじゃない。真奈ちゃんも佐野君の両親に会いに行く予行練習と思って行ってらっしゃい。」

「え、ご両親・・・・。」

それは、そういうことになるの?
確かに指輪貰って、私の両親に挨拶とか言ってもいたけど。そういえば私はよく知らない。ご両親、家族、実家。また知らないことが出てきた。

「今日子さんは佐野さんの家族に会ったことあるんですか?」

まさかそんな付き合い?つながり?

「え~、何で、そこまで世話焼いてないし。あんまり家族のこと聞いたことがないわね、そういえば。・・・あ、いらっしゃいませ。」

お客さんが入ってきたので話はそこまでになった。

ちょっと聞いてみようかな、変じゃないよね。
それに私の家族の事もあんまり話してないか。
だって本当に話をする時間なんてあんまりない。
ほとんどくっついてる時間になってる。

お腹空いた。スープだけだったから。
お腹をさすりながら仕事をする。
空いてる時間でキャンペーンの予告のチラシを追加したり、イラストを貼ったりして。
お店がにぎやかになってきた。

途中、今日子さんにお願いして少し食事をした。落ち着いた~。

そういえば朝ごはん用のパン頼まれたんだった。午後になったらお願いしよう。
こうしてパンも買い、着替えも持ち佐野さんのマンションへ行く。
1人でドアの鍵を開けて入る。
ドキドキする。まだ慣れない、匂い。
そのままリビングに入ってバッグを隅に下ろす。

「ただいま、サノマル。」

サノマルの写真を撫でる。その横にある写真は見ないように。
剥がしてないんだ、佐野さん。
お茶をいれてソファに座り込む。いいなあ、このソファ。寝そう・・・。
テーブルに紙があるのに気がついた。佐野さんからの手紙だった。

『食事は冷蔵庫に作ってあるから食べてね。』と。

1人で食べるのも寂しいけど佐野さんは早めに食べたらしい。
冷蔵庫を開けて書かれたものを取り出してテーブルに運ぶ。
1人で手を合わせていただきます。
結局私よりずっと料理も出来る佐野さん。
私は何をすればいいのだろう。勿論片づけ担当でいい。
でもキッチンは料理した痕跡がない様にきれいだった。素直に教えてもらおう。
美味しくいただき、それとなく片づけをする。
いつもならお風呂に入るけど・・・・。
いいよね。先にシャワーを浴びて着替える。
持ってきた服はバッグの横に積まれている。

どうしたらいいのか分からない。
1人だとほんとにまだまだこの部屋がよそよそしく感じられる。
お茶をもう一杯いれてマグカップをテーブルに置く。
ラグに直接座り膝を抱えて体育座り。寂しい、落ち着かない。佐野さん、早く帰ってきて。
ガチャッという音に反応する、玄関に走る。

「お帰りなさい。」

「ただいま、真奈。どうした?」

「だって佐野さんがいないのにここで一人でいると、何だか知らないところにいるみたいで。」

「ごめんね。何してたの?」

「何にもしてないです。あ、夕ご飯有難うございました。美味しかったです。」

「うん、一緒に食べたいけど、遅いときは僕も先に食べるから。」

「片づけしたんですけどどうですか?」

「ありがとう。」

「佐野さん、見てください!」もう、大きな声が出る。

「えっ、何?」

「片付け、これでいいですか?」

「洗ってくれたんだよね?で?」

「だってあんまりきれいだからやり方とか、いろいろあると思うんです。」

「ないよ、そんなの。」

「そう・・・なんですか?」

「そんなに気をつかわなくても、疲れるから。」

「こだわりというなら、仕事の後は基本的にすぐシャワー浴びたいんだ。汗もかくし。じゃあ、シャワー浴びてくるから待ってて。」

頭を撫でられて佐野さんがお風呂へ。
ソファにもたれてのんびりする。
さっきまであんなに寂しかったのにほっと安心してちょっとドキドキして。
しばらくして佐野さんがパジャマを肩にかけて出てきた。
そのまま冷蔵庫へ。ペットボトルを開けながらこっちに来る。

「真奈、パン買ってきてくれたんだ、ありがとう。」

隣に座ってクスッって笑う。

「なんだか全然リラックスできてないね。」

肩を寄せられる。

「お茶もらいました。」

マグカップを指して言う。

「うん、何でもどこでも自由に使って。あとで洋服置くところも教えるし、後は?」

「洗濯物は、どうしよう。」

「今の仕事だと別に洗いたいけど、普段は一緒に洗おう。」

あれこれいろいろ教えてもらってやっと少し落ち着いた気分。

「佐野さん、今まで聞いたことなかったんですけど、実家はどこなんですか?」

「千葉だよ。今度一緒に行こうね。」

「・・・・えっと・・・・。」

「僕の両親に紹介したいし、真奈のご両親にも会わせてほしい。」

ちゃんと座ってこっちを見る。

「お願いします。」

「お願いされます、なんて、こちらこそお願いします。」

「真奈、ご両親とか家族とかに僕のこと言った?」

「まさか、だって昨日の今日。」

「全然?」

そんなに驚かれても困る。

「全然言ってないです。だって佐野さんだって・・・・。」

「僕は言える人には今日皆に言いました。実家にも、良平さんにも、今日子さんと務さんにも、お世話になった少年にまで。」

「え~、今日子さん何にも言ってなかったです。朝一番に日曜日のお休みをお願いした時も。」

「今日子さんと務さんにはさっきの仕事の合間だったから、何か来るなら明日かもね。」

「あの・・・えっと、ご両親には何と?」

「普通に付き合ってる子にプロポーズして了解してもらったって。喜んでたよ、心配かけたからね。会いたいって、早く連れて来いって。夏には行こうね。」

「私でっ」いいんですか?

続く言葉は胸に押しつけられて言葉にならないままどこかに行った。

「良平さんも喜んでた。勿論今日子さんもさやかちゃんまで。」

「はい。」

腕の力がゆるんで見せられた携帯の画面にはかなりテンションの高いおめでとうの文章があった。

「これ、直樹っていう小学生の子ね。一番世話になったかも。さすがに皆びっくりしてたみたい。」

それはそうでしょう?電撃発表じゃないですか。
どうしたらそんな、見えない未来に確信が持てるの?だって今まだまだお試し期間って。
お試しっていろんな意味で言ったつもりなんだけど。
いいの?本当に?

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