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79.ロックフェル商会からの依頼

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 現在、亜空間ベース『レオン』内にある『オートモジュールジェネレーター』は、フル稼働で防具、槍、剣等を製造している。
 特に武芸に秀でた人間が使う物ではなく、数が数なのでドワ-フに依頼するのはやめた。
 材料はドワ-フの村にあった。
 鉱山から出た必要のない鉱石が山積みされて、その処理をどうするかドワ-フ達を悩ませていた。
 それを、全て引き取ったのだから、ドワ-フ達も大喜びだ。
 防具は、あまり体力が無い平民が使う。ケブラー繊維とポリカーボネート、鎖帷子くさりかたびらを使った軽量で装着しやすい、防刃ベスト型の物にした。
 剣は、突くタイプと斬るタイプの、ブロードソードとサ-ベルの二種類にした。
 槍は、敵を寄せ付けないように、五メ-トルと二メ-トルの物にした。
 このままのぺ-スなら、明日の朝には『ロックフェル商会』に、全て納品出来るだろう。

 「琴祢、出来た物からいつものように、『ロックフェル商会』の倉庫に転送してくれ」

 「了解~!」

 これは………。あの工作物から流れるように出て来る所を見ると、錬金術なのか?

 そうだな。そう言われると、そうかも知れないな。未来の錬金術って言うところかな。

 マジックサ-クルから物を生み出す錬金術と、『オートモジュールジェネレーター』に材料を入れて、物を作り出すやり方は、ある意味似たようなものだった。

 「響さん! ガズール帝国のコタン村で、騎士とワーウルフの戦闘が起きています」

 「ティス、直ぐにアクラ族長を呼んでくれ!」

 響は、判断しかねていた。襲われている騎士が、敵なのか味方なのか。
 敵であれば、十匹のワーウルフに襲われている騎士達を、危険を冒して助ける必要はない。
 ワーウルフに対して、騎士達は四人一組が連携して戦っていた。
 よく訓練された騎士達だ。
 ランベル王国の民兵など、この戦い方を見る限り敵ではない。戦が始まれば、多くの死傷者が出る事になるだろう。
 王都で知り合いになった人達の多くも、この騎士達と戦えば命を失うのは確実だ。 
 それならば、ここでこの騎士達の数が減る事は、ランベル王国の民兵達にとっては、好ましい事かもしれない。

 響が、そうこう考えている所に、アクラ族長は年老いた体で、響の前に現れる。

 「響様、遅くなりました。我らの土地で戦だとか」

 「アクラ族長、呼び立ててすみません。これなんですが………この騎士の集団を、ご存知ですか?」

 「………………あの紋章は! 雷のゾンネル。エスタニア侯爵家の紋章です。エスタニア侯爵家には、我が手の者が仕えております。直ぐに助けに行かねば」

 アクラ族長は、慌てた素振りで響に、『助けて欲しい』と言った顔をする。
 響は、その様子を見て即決する。

 「ティス、後を頼む」

 「今回は、私も付いて行きます! 琴祢、戦いが治まったらアクラ族長を転送して」

 ティスは、エプロンを脱ぎながら、響に近づいて来る。

 「だけど、ティスはメイドなんだから、危ない事はしない方がいい!」

 ただでさえ、ティスのメイド服姿は刺激的なのに、エプロンを取るとより一層胸の大きさが強調されて、響は目のやり場に困る。

 響はティスの事を、いまだに『メイドロイドだ』と思っている。
 『宇宙戦艦メモリア』で、響の近くにいたメイド達は、全てメイドロイドだった。
 だから、響がティスの事をメイドロイドだと思うのも、成り行き上仕方ない事なのかもしれない。
 だが、ティスは十七歳の人間の少女なのだ。
 ただ、幼い頃より王家に使えていたため。
 表に感情を表さず。
 落ち着いている所が、響には余計ロボットのように、感じていたのかもしれない。

 ティスのメイド服が、一瞬で響と同じコンバットス-ツに変わる。
 武器も、背中に『ソ-ドブレ-ド』、腰にレイピアと短剣。
 このレイピアと短剣は、ドワーフが鍛え上げエンチャントした魔剣だった。

 そして、もう一つ。
 響が失った『クリスタルガン』が、ティスの腰にぶら下がっていた。
 しかし、このティスが装備する『クリスタルガン』は、響の物ではないため。
 響が手にしても、トリガ-の生体認証サーチで弾かれて、撃つ事は出来ない。

 「えっ! その装備は………」

 響は、ティスを見て驚く。
 今までティスを、オペレ-タ兼調整役として見ていたため、戦闘要員としての頭数に入れていなかった。
 しかし、目の前にいるティスは、装備だけを見ても明らかに、クロエに並ぶ戦闘力を持っている。

 そして、響の目には、今、ティスの腰にぶら下がる。『クリスタルガン』しか、映っていなかった。
 羨ましいのである。

 そんな響をよそに、ティスは響と向き合うと、響の腰に両手を回し抱き着いて来る。
 
 「響さん、行きますよ!」

 ティスは、上目使いに響を見上げると、ニッコリと笑顔を見せて、促すのであった。

 「………………はい」

 響は、もう何も言えない。
 アリシアとの一件以来、ティスは明らかに変わっていた。
 
 響は、ティスの肩を抱きしめると、『テレポート』を使い現場へと向かうのであった。
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