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78.非常呼集
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朝一番、緊張感のある朝食を食べていた響は、御用商人『ロックフェル商会』のマ-ク・ロックフェルから、『急ぎ面会したい』と言う連絡が入り。
これ幸いと響は、『ロックフェル商会』に向かうのであった。
響は、食堂『サミット』奥の倉庫経由で、手土産の団子を持って、『ロックフェル商会』へと向かう。
その道すがら、王都の人の動きが慌ただしい事が、気になる響であった。
「おう! 響」
「ああ、ジュリアンさん」
「どうした? 何処か、行くのか?」
ジュリアン・コ-ンは、剣を数本持って響に近づいて来る。
「ええ、『ロックフェル商会』へ行く所です………。町の皆が忙しそうに、走り回っているのは、何かあったんですか?」
響が言うように、いつもとは違い人々が町中を走り回り色々な品物を買いあさる。荷馬車の往来もいつもより、あきらかに多かった。
「響は、まだ知らないのか。王都に『非常呼集』の触れが出された事を」
これは、大戦があるようだな。『非常呼集』とは、貴族だけでなく、平民の男達まで集めると言う事だよ。ランベル王国には、今それほど兵がいないと言う事だ。
魔王ベルランスの説明で内容を理解した響は、改めて町の人々を見てみると、貴族や金の有る者は武具を付け、武器を持っているが。町の住民や農夫達で、武具を付ける者は殆どいない。武器も錆び付いた武器やクワ、鎌などの農具を持つ者が多かった。
「『非常呼集』ですか………あぁ、だからジュリアンさん剣をそんなに、持っているんですか!」
「これは違うんだ。君も見ただろ。町の皆の装備を………真面な装備を持っている人がいないんだ。だから、手持ちの武器を知り合いに、届けに行く所なんだ」
「そうですか。所で俺達は、どうするんですか?」
響は、自分達冒険者に召集がかからない事を、不思議に思った。
普通に考えれば冒険者程、戦力になる者達は居ないはずである。
「響、何を言ってるんだ。冒険者は、国同士の争いには、干渉しない取り決めだ。君も、冒険者登録の時に教わっただろう」
「あぁ~そうでした!」
響は、人の話を聞いているようで、他の事を考えている事がある。
冒険者登録をしに組合に行った時、初めて見聞きする事が珍しく、まったく覚えていなかったのである。
その方、覚えておらなんだな!
ふん! ほっといてくれ。
魔王ベルランスは、あっさりと響の嘘を見透かしていた。
各国内にある冒険者組合は、依頼を受けて未開の地の捜索、危険な魔物の探索及び討伐等を、国を跨いで行う組織に属している。
その為、一国に属して戦う事が、禁じられていた。
もしも、その取り決めを破るような事があれば、冒険者協会より追手が掛かる事になるのだ。
「おう、それじゃ響、また後でな!」
ジュリアンに手を振る女に気付き、慌てたようにジュリアンは、その場から去って行く。
ジュリアンさんの彼女かな~
どう見ても、あ奴があの女を好きなのは、明らかではないか。
ジュリアンが、女性と嬉しそうに話している姿を見ても、ピンと来ない響であった。
『ロックフェル商会』の前に着くと、何時になく人の出入りが多い。しかし、働いているのは女ばかりで、男達の姿が殆ど無かった。
「響様、わざわざお越し頂きありがとうございます。ささ、中の方にお入り下さい」
店先で、響の姿を見付けたマ-ク・ロックフェルは、そのふくよかな体を揺らしながら、響に駆け寄って来る。
響は、マ-クの書斎に案内される。この書斎に、今までに入ったのは、娘のミオ・ロックフェルだけだった。マ-クは、それだけ響の事を、信頼していると言う事なのだろう。
響よ。その赤い本を開いてみよ!
だけど、お前。勝手に他人の物に手を出す訳に行かないだろう。
この書斎に案内したんだ。見ても構うまい。それにその本は、今後お前にとっても、必要になる事が書かれておるはずだ。
魔王ベルランスの誘惑に負けた響は、本棚からその赤い本を手に取り開いて行く。そこには、色々なサ-クルの図解や必要な材料等が、事細かく書かれていた。
しかし、響には理解出来なかった。何が書かれているのか分からないのだ。
「魔術書の時とは、違うな~」
前に、シ-ドル公爵家にあった古文書に書かれていた。魔術書の写しを見た時には、直ぐに理解出来たのに、この本の内容は、響には分からなかった。
その方は、理解出来ないようだな。それもそうであろう。その方には、錬金術の知識が無いからな。
だが、我が読み解けば、その方にも理解出来るようになる。
「錬金術?」
「響様。その本の内容が、理解出来るのですか?!」
書斎に戻って来たマ-クは、本を見開く響のつぶやきを聞き、慌てるのであった。
「………………」
「その本は、古の昔に失われた錬金術にまつわる内容が、書かれた書なのです。今では、読んでも理解出来る者がおりません。『宝の持ち腐れ』と言った代物です」
「そうですか。もしよければ、暫くこの本をお借り出来ませんか? もしかしたら、書かれている内容が、分かるかもしれません」
「どうぞ、お持ち下さい。他にも必要な物があれば、どうぞ」
マ-クは、幼い頃より魔術や錬金術に興味や憧れがあった。
しかし、マ-クには魔術や錬金術の内容を理解出来たとしても、マ-クには、それを扱う為の魔素量が少なかったゆえ扱う事は出来なかった。
だから、この書斎に並ぶ本達は、マ-クの知識欲を満たすための、コレクション品なのであった。
それでは、帰るぞ!
ちょっと、待てよぉ~!
用が済んだかのように急がせる魔王ベルランスを引き留めて、響は、思い出したかのように、マ-クに聞くのだった。
「それで、用とはなんですか?」
「そうでした。響様、今回の戦の事はご存知ですか?」
「先程聞きました」
「今回、『非常呼集』が掛かり、平民が集められているんですが、その殆んどの者が武具を持っておりません。この店にも、在庫が少なく。今、急ぎで造らせておりますが、なにぶん時間がありません。響様の所には、ドワ-フの村があると聞きました。武具と食料をあるだけお譲り下さい。町の者の装備を、出来るだけ揃えてやりたいのです。どうかお願い致します。金は幾らでも払いますので………」
王都サリュースに『ロックフェル商会』を開いて、これまで町の人々にどれだけ儲けさせてもらったか分からない。
マ-クは、そんな人々が真面な武器も持たずに、戦におもむこうとする姿に胸を痛めていた。
そこで、そんな人々の為に、武具を集めていたのだ。
「ドワ-フの村の事は、ミオさんから聞きましたね。それで、どれ程の数が必要なんです?」
「防具、槍、剣それぞれ五千は、欲しい所です」
「分かりました。任せて下さい。では」
響は書斎お出ると、そのまま亜空間ベース『レオン』へと向かった。
これ幸いと響は、『ロックフェル商会』に向かうのであった。
響は、食堂『サミット』奥の倉庫経由で、手土産の団子を持って、『ロックフェル商会』へと向かう。
その道すがら、王都の人の動きが慌ただしい事が、気になる響であった。
「おう! 響」
「ああ、ジュリアンさん」
「どうした? 何処か、行くのか?」
ジュリアン・コ-ンは、剣を数本持って響に近づいて来る。
「ええ、『ロックフェル商会』へ行く所です………。町の皆が忙しそうに、走り回っているのは、何かあったんですか?」
響が言うように、いつもとは違い人々が町中を走り回り色々な品物を買いあさる。荷馬車の往来もいつもより、あきらかに多かった。
「響は、まだ知らないのか。王都に『非常呼集』の触れが出された事を」
これは、大戦があるようだな。『非常呼集』とは、貴族だけでなく、平民の男達まで集めると言う事だよ。ランベル王国には、今それほど兵がいないと言う事だ。
魔王ベルランスの説明で内容を理解した響は、改めて町の人々を見てみると、貴族や金の有る者は武具を付け、武器を持っているが。町の住民や農夫達で、武具を付ける者は殆どいない。武器も錆び付いた武器やクワ、鎌などの農具を持つ者が多かった。
「『非常呼集』ですか………あぁ、だからジュリアンさん剣をそんなに、持っているんですか!」
「これは違うんだ。君も見ただろ。町の皆の装備を………真面な装備を持っている人がいないんだ。だから、手持ちの武器を知り合いに、届けに行く所なんだ」
「そうですか。所で俺達は、どうするんですか?」
響は、自分達冒険者に召集がかからない事を、不思議に思った。
普通に考えれば冒険者程、戦力になる者達は居ないはずである。
「響、何を言ってるんだ。冒険者は、国同士の争いには、干渉しない取り決めだ。君も、冒険者登録の時に教わっただろう」
「あぁ~そうでした!」
響は、人の話を聞いているようで、他の事を考えている事がある。
冒険者登録をしに組合に行った時、初めて見聞きする事が珍しく、まったく覚えていなかったのである。
その方、覚えておらなんだな!
ふん! ほっといてくれ。
魔王ベルランスは、あっさりと響の嘘を見透かしていた。
各国内にある冒険者組合は、依頼を受けて未開の地の捜索、危険な魔物の探索及び討伐等を、国を跨いで行う組織に属している。
その為、一国に属して戦う事が、禁じられていた。
もしも、その取り決めを破るような事があれば、冒険者協会より追手が掛かる事になるのだ。
「おう、それじゃ響、また後でな!」
ジュリアンに手を振る女に気付き、慌てたようにジュリアンは、その場から去って行く。
ジュリアンさんの彼女かな~
どう見ても、あ奴があの女を好きなのは、明らかではないか。
ジュリアンが、女性と嬉しそうに話している姿を見ても、ピンと来ない響であった。
『ロックフェル商会』の前に着くと、何時になく人の出入りが多い。しかし、働いているのは女ばかりで、男達の姿が殆ど無かった。
「響様、わざわざお越し頂きありがとうございます。ささ、中の方にお入り下さい」
店先で、響の姿を見付けたマ-ク・ロックフェルは、そのふくよかな体を揺らしながら、響に駆け寄って来る。
響は、マ-クの書斎に案内される。この書斎に、今までに入ったのは、娘のミオ・ロックフェルだけだった。マ-クは、それだけ響の事を、信頼していると言う事なのだろう。
響よ。その赤い本を開いてみよ!
だけど、お前。勝手に他人の物に手を出す訳に行かないだろう。
この書斎に案内したんだ。見ても構うまい。それにその本は、今後お前にとっても、必要になる事が書かれておるはずだ。
魔王ベルランスの誘惑に負けた響は、本棚からその赤い本を手に取り開いて行く。そこには、色々なサ-クルの図解や必要な材料等が、事細かく書かれていた。
しかし、響には理解出来なかった。何が書かれているのか分からないのだ。
「魔術書の時とは、違うな~」
前に、シ-ドル公爵家にあった古文書に書かれていた。魔術書の写しを見た時には、直ぐに理解出来たのに、この本の内容は、響には分からなかった。
その方は、理解出来ないようだな。それもそうであろう。その方には、錬金術の知識が無いからな。
だが、我が読み解けば、その方にも理解出来るようになる。
「錬金術?」
「響様。その本の内容が、理解出来るのですか?!」
書斎に戻って来たマ-クは、本を見開く響のつぶやきを聞き、慌てるのであった。
「………………」
「その本は、古の昔に失われた錬金術にまつわる内容が、書かれた書なのです。今では、読んでも理解出来る者がおりません。『宝の持ち腐れ』と言った代物です」
「そうですか。もしよければ、暫くこの本をお借り出来ませんか? もしかしたら、書かれている内容が、分かるかもしれません」
「どうぞ、お持ち下さい。他にも必要な物があれば、どうぞ」
マ-クは、幼い頃より魔術や錬金術に興味や憧れがあった。
しかし、マ-クには魔術や錬金術の内容を理解出来たとしても、マ-クには、それを扱う為の魔素量が少なかったゆえ扱う事は出来なかった。
だから、この書斎に並ぶ本達は、マ-クの知識欲を満たすための、コレクション品なのであった。
それでは、帰るぞ!
ちょっと、待てよぉ~!
用が済んだかのように急がせる魔王ベルランスを引き留めて、響は、思い出したかのように、マ-クに聞くのだった。
「それで、用とはなんですか?」
「そうでした。響様、今回の戦の事はご存知ですか?」
「先程聞きました」
「今回、『非常呼集』が掛かり、平民が集められているんですが、その殆んどの者が武具を持っておりません。この店にも、在庫が少なく。今、急ぎで造らせておりますが、なにぶん時間がありません。響様の所には、ドワ-フの村があると聞きました。武具と食料をあるだけお譲り下さい。町の者の装備を、出来るだけ揃えてやりたいのです。どうかお願い致します。金は幾らでも払いますので………」
王都サリュースに『ロックフェル商会』を開いて、これまで町の人々にどれだけ儲けさせてもらったか分からない。
マ-クは、そんな人々が真面な武器も持たずに、戦におもむこうとする姿に胸を痛めていた。
そこで、そんな人々の為に、武具を集めていたのだ。
「ドワ-フの村の事は、ミオさんから聞きましたね。それで、どれ程の数が必要なんです?」
「防具、槍、剣それぞれ五千は、欲しい所です」
「分かりました。任せて下さい。では」
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