NineRing~捕らわれし者たち~

吉備津 慶

文字の大きさ
24 / 95

24.家臣との別れ

しおりを挟む
 「待ちなさい! ガルニア」

 クロエは、飛び去るガルニアに追い付き、呼び止める。

 「誰だ、私呼ぶのは? おお、クロエではないか。久しいのう」

 悪魔ガルニアは、タバスコの影響で、よだれをらしながらクロエと対面する。

 「これは、魔王様のお指しずかい?」

 クロエは、現在の魔王の様子を知りたかった。魔王に憧れ、側近にまで上り詰めたクロエが、気にならない訳がない。

 「何を、言っているんですか……ああ、そうでしたね。貴方は、異界に使わされていたんでしたね」

 「魔王様は、今何処におられるのか?教えなさい!」

 話が長い悪魔ガルニアに、クロエの我慢も限界が近づく。

 「魔王様なら、千年前に我が主の手によって、お亡くなりになりました。貴方も……」

 クロエの目が赤く輝き、右手からは黒光りが沸き起こり、悪魔ガルニアに一撃を浴びせる。
 悪魔ガルニアは、クロエの攻撃で地面に叩き落されてしまう。
 クロエは、ゆっくりと地上に降りると、悪魔ガルニアに向かつて歩き始める。

 「お待ちなさい! ダ-クショット!」

 悪魔ガルニアは、クロエに話しかけたかと思うと、いきなり『ダ-クショット』を放つ。

 しかし、クロエは動じる事もなく、その攻撃を腕一本で跳ねのけてしまう。
 元四天王の一人だったクロエである。
 下級の悪魔ガルニア等には、負けるはずも無いのである。

 「ガルニア、あなたの主の名を教えなさい。そうすれば命は、助けてあげましょう。さもないと……」

 クロエが手を挙げると、空間に裂け目が現れる。
 これは、響にも内緒にしている『ブラックホ-ル』すべてを吸い込む裂け目である。 

 「わ分かった……我が主にの……名は……」

 悪魔ガルニアは、その黒い顔を引きつらせながら、一言一言を口にして行く。

 ドォーン! ドォーン!

 不意にクロエに向けて、火の玉が降り注ぎ、砂煙が巻き起こる。

 「ガァルル!」

 後方から、疾風の如く飛んで来たキメラが、悪魔ガルニアを連れ去って行くと同時に、砂煙の中から死人の群れが現れ、クロエに襲い掛かる。

 「クロエ、また会いましょう!」

 逃げ去る悪魔ガルニアの、遠吠えであった。

 クロエは、素手で死人の頭を砕いて、全て倒す。

 「逃がしたか……魔王様……」

 悪魔ガルニアが、言った事は事実なのか?
 魔王様を倒した相手が誰なのか?
 本当にあの強い魔王様が、倒されてしまったのか?
 悪魔ガルニアが逃げ去った方向を、見て立ち尽くすクロエであった。



 あの襲撃から二十日が過ぎた。
 公爵夫婦、騎士、メイド騎士、メイド合わせて三十七名が無くなり、アリス騎士団長、メイド騎士二名、メイド二名の計五名が、行方不明扱いとなっていた。
 屋敷に残された遺体は荼毘だびにふされ、アリシアの指図で、それぞれの故郷に送られた。

 昨日、王城では論功行賞が行われ。
 あの、他人のふんどしで手柄を手に入れた。
 タイリン男爵家の三男ヘン・タイリンが、今回一番の功労者として、男爵に取り立てられたのだ。
 『死人に口無し』と言わんばかりに、今回の被害の責任を全てシ-ドル公爵家に負わせ、男子がいなかったシ-ドル公爵家は、取り潰しが言い渡されたのだ。

 そして、シ-ドル公爵家の屋敷と領地の一部が、ヘン・タイリン男爵の物となったのだ。
 アリシアは気丈にも家臣達の為に、屋敷内の調度品を売り払い、給金を払う為の金策をしていた。

 「姫、ヘン・タイリン男爵がおみえです」

 「お通しして下さい」

 家具など売り払い、何も無くなった賓客ル-ムに、ヘン・タイリン男爵が通される。

 「アリシア殿、こ度は災難でありましたな。何かあれば私に言って下さい」

 「ありがとうございます。男爵様」

 アリシアを見るヘン・タイリン目は、嫌らしく下心いっぱいであった。

 「アリシア様、男爵からの申し入れなのですが『貴方様を妃に』との事、お喜びなされませ」

 ヘン・タイリン男爵に付き添う家臣が、とんでもない事を言い始める。

 「いいえ、私は……」

 「いまですぞ、この様な身に余る申し出は、この屋敷を出て行かなくても、良いのですぞ」

 「ありがたき、お申しでなのですが……」

 「もうよいは、この様な屋敷直ぐに潰してくれるわ! それが嫌なら、妃になるか、この屋敷をどこぞへ持って行くがよいわ!」

 ヘン・タイリン男爵は、捨て台詞を残して家臣と共に、去っていった。

 「とんでもない奴ですね!」

 響は隣室で、事の一部始終を聞いていた。

 「急に権力を持った者が、おちいる行動だと父が言っていました……」

 庭を見るアリシアの姿は、もの悲しくも美しい。

 その後、アリシアは家臣を集め、渡せるだけの金銭を渡し、ねぎらいの言葉伝えたのである。
 家臣たちは荷物をまとめ、故郷に帰る者、新しい主君に使える者、それぞれに屋敷を後にする。

 だが、ビクトル・デッカ-元副団長以下、騎士八名、メイド二名は、今後もアリシアと行動を共にすると言って、アリシアの言う事を聞かなかった。

 「姫、我らは側から離れませんぞ!」

 「ですが、屋敷も、貴方達に支払う給金も、何も無いのですよ」

 「かまいません、必要であれば我らが、何とか致します」

 アリシアを取り囲み、ビクトル・デッカ-が代表して、アリシアを説得する。
 その姿を見るアリシアの目には涙があふれ、両親を亡くして初めて感情をむき出しにして、泣き叫ぶアリシアの姿があった。

 この人達は、本当にアリシアを大切に、思っているんだな。
 ウン! 仕方ない、仕方ない!

 「あの~、お取込み中なんですが、もしよろしければ、俺の国にみんなで来ませんか?」

 響の思わぬ発言に、抱き合って泣いていた一同が、泣き顔のまま響に注目する。
 
 「響様それは、どう言うことでしょうか? 何処かの領主様なのですか?」

 ビクトル・デッカ-が、一番最初に響に尋ねてくる。
 それはそうであろう。この様な少年が、皆を引き受けようと言っているのだから。

 「ティス、アルン村のウルム村長に、ことの事情を説明してくれ。琴祢、建物を圧縮保存。俺達をアルン村の屋敷に転送してくれ」 

 独り言のように話し始める響を見て、少し不安顔の一同で会った。

 「響様……何を、言っているのですか?」

 アリシアも不安になったようである。

 「マスター、宿舎と厩舎は後でいい?」

 「いいよ」

 「じゃ、いきま~す」

 響は、アリシア達に近づくと、アリシア達と屋敷はその姿を消した。
 その後、響は宿舎と厩舎を圧縮保存して、アルン村へ転送されて行った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

処理中です...