591 / 608
第15章 激闘、セイクリア王国
第530話 ルール無視、再び
しおりを挟む『勇者召喚、発動!』
切嗣達がそう唱えた瞬間、彼らが描いた白い輪ーー否、最早「魔法陣」と呼ぶべきものが、激しく光り出した。
「う、うわ!」
「きゃあ!」
そのあまりの眩しさに、春風達は思わず腕で顔を覆い、その場から動けなくなった。
その状況の中、
「ゆ、勇者……召喚だって!?」
と、水音が口を開き、それに続くように、
「ど、どうして? どうして彼らが勇者召喚を!?」
と、クラリッサはショックを受けた。
すると、クラリッサの言葉に反応したのか、
「クックック。お忘れですかクラリッサ様? あなたがかつて行った勇者召喚の術式は、誰が用意したのかを」
と、勇者召喚を実行中の切嗣がそう答えた。
その答えを聞いて、クラリッサは「え?」となった後、
「誰……って、ま、まさか!」
と、何かを思い出したかのような表情になったので、それを見た切嗣は、
「そうです。この術式は僕達が天使になった時に、神々から授かったものですよ。『必要になった時が来たら、いつでも使ってくれて構わない』ってね」
と、ニヤリと笑いながら言った。
「そんな……」
切嗣の言葉に、クラリッサはその場に膝から崩れ落ちそうになったが、
「ああ、クラリッサ様!」
と、そうなる直前に翔輝に抱き止められた。
そんな2人をよそに、
「……ループス様、ヘリアテス様」
と、春風が静かに口を開いた。
「な、何だ春風?」
「あいつらが使った勇者召喚も、『ルール』を無視したものなんですよね?」
春風のその質問に対して、
「……はい。彼らが使ったのは、守らなきゃいけない『ルール』を無視した、絶対にやってはいけない異世界召喚の儀式です」
と、顔を真っ青にしたヘリアテスが答えた。
「それって、つまり……」
「はい。『次元の壁』に空いた穴が広がったか、新たに穴が空いてしまったということになります。どちらにしても、この世界は……」
そう言って、顔を更に青くしたヘリアテス。その様子を見て、
「そんな。切嗣! お前、この世界を消滅させる気か!?」
と、翔輝が怒鳴るように切嗣に向かって尋ねた。
すると、切嗣は「アハハ……!」と狂ったように笑い出し、
「ああ、そうさ! 裏切り者の幸村なんかを認めるようなこんな世界は間違ってるんだ! 地球と一緒に消えて無くなればいい!」
と言い放った。
その答えを聞いた瞬間、
「……っ!」
と、春風は歯をギリッとさせた。それと同時に、
「切嗣、お前ぇえええええ!」
「許せない!」
と、翔輝だけでなくリアナも怒りに満ちた表情になった。
しかし、そんな翔輝達を無視して、
「さぁ、来るぞ来るぞ! 一体どんな奴が僕達の前に現れるのかなぁ!?」
と、切嗣が笑いながら言うと、描かれた白い魔法陣から、3つの光の塊が飛び出した。
その光の塊を見て、
「おお、来たか! 僕達の『勇者』が……!」
と、喜んだ切嗣だったが、
「……あ、あれ?」
3つの光の塊は、何故か切嗣達の前に降りず、そのまま春風達のもとへと飛んでいき、そのうちの2つは春風の方へ、残った1つは水音の方へと分かれた。
「え、ちょ、え!?」
「な、な、何!?」
突然のことに驚く春風と水音。2人が戸惑っていると、光の塊はスゥッと消えて、春風の方へ飛んだ2つは、
「春風ぁ!」
「せーんぱーいっ!」
という声と共に春風にぶつかり、水音の方へ飛んだ残りの1つは、
「お兄ちゃあん!」
という声と共に水音にぶつかった。
「「う、うわぁ!」」
驚いた春風と水音は、光の塊だったものがぶつかった勢いで、その場にドスンと倒れた。
「あいたた……」
「な、何だ?」
春風と水音は、ゆっくりと上半身を起こして、その光の塊だったものの正体を見た。
そして、それを見た瞬間、
「……え? 明華さんに、ミネルヴァさん?」
「はい! 春風先輩!」
「ああ、そうだよ。私の愛しい春風」
「え、嘘!? 陽菜!? 陽菜なのか!?」
「うん、そうだよお兄ちゃん」
その正体は、春風と水音がよく知ってる人物達だった。
そして、目の前の状況を見て、
『……ハァ?』
と、リアナ達だけじゃなく、勇者召喚を行なった切嗣達も、一斉に首を傾げた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
185
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる