ユニーク賢者の異世界大冒険

ハヤテ

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第15章 激闘、セイクリア王国

第512話 「前原翔輝」という少年4

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 その後、翔輝を含む残された「勇者」ことクラスメイト達(勿論、担任教師の小夜子も含まれる)は、セイクリア王国王城で「勇者」としての訓練に励んだ。

 しかし、召喚初日に自分達のもとを去った春風を巡って、彼らは3つのグループに別れた。

 1つは春風を、

 「あいつは自分達を裏切った裏切り者だ!」

 と、非難するグループ。当然、翔輝もこのグループに入ってる。

 もう1つは、

 「違う! 彼には何か『理由』があるんだ!」

 と、擁護するグループ。これは、1年生の時に春風と同じクラスだった者達だ。そして、彼らは後に春風の仲間となるのだが、今はまだ記さないでおこう。

 そして最後に、

 「あいつがどういう人間だろうと興味はない」

 と、無関心を装うグループだ。彼らもまた、一部が後に春風の仲間になるのだが、それもここでは記さないでおくとしよう。

 とまぁこんな感じで、クラスメイト達の雰囲気はかなり最悪なものになっていた。

 (く、まさかこんなにバラバラになってしまうなんて。幸村春風、お前はなんて罪作りな奴なんだ!)

 と、翔輝は心の中で春風を恨んだ。

 この話を聞いて、

 「いや、ほんとすみませんでした」

 と、後に本人が頭を下げて謝罪することになるのだが、それはまた別の話。

 その後、小夜子の説得もあって一旦はおさまったが、数日後、今度は水音が訓練に参加しなくなったのをきっかけに、またクラスの雰囲気が悪くなってしまう。

 (く、まさか、桜庭君が訓練に来なくなってしまうなんて……って、あれ? でも待てよ? 彼は確か幸村君のこと『春風』って呼んでたような?)

 と、翔輝が心の中で「?」を浮かべていると、

 「みんな、聞いてくれ。今夜、桜庭に幸村のことを聞こうと思う」

 と、小夜子がそう提案してきたので、翔輝は迷わずその案に乗った。

 そしてその夜、厨房に現れた水音に、春風について問い詰めると、

 「僕と幸村君……いえ、春風は、同じ『師匠』を持つ弟子なんです」

 と、自身と春風が、女性冒険家の間凛依冴の弟子であることが明かされた。
 
 (まさか、あいつがあの女性冒険家の弟子だなんて!)

 翔輝も勿論、凛依冴のことは知っていた。というのも、彼の妹である千智が凛依冴の大ファンなのだ。

 その後も明かされる、凛依冴、水音、そして春風のを聞いて、翔輝は表情には出さなかったが、心の中では「す、凄い!」と感動していた。

 そして、水音の話が終わって、その場が解散になった後、

 「え、春風のことをもっと聞かせてほしいって?」

 「ああ」

 翔輝は1人、水音に向かってそう言った。なのは、自身が春風を非難しているグループの1人の為、表立って聞くことが出来なかったからだ。

 突然のことに困惑する水音だったが、

 「頼む!」

 という翔輝の勢いに負けたのか、

 「わ、わかったよ」

 と、水音は話すことにした。

 それから水音は、先程の話をより詳しく、翔輝に説明した。

 初めての出会いから、弟子になった後に彼らと行った「旅行」と、そこで春風がどんなことをしてきたかを、細かいところまで話すと、

 「す、凄いな……」

 と、翔輝はちょっとドン引きしながらも、目をキラキラと輝かせていた。

 「ほ、他には!? 他にはないのか!?」

 と、翔輝が水音に詰め寄ると、

 「え……う、うーん……あ、そうだ!」

 「うわ!」

 水音が突然大きな声をあげたので、驚いた翔輝は、

 「ど、どうしたんだ桜庭君? 何か思い出したのか?」

 と、尋ねると、

 「いや、これ『冒険』とは無関係だと思うんだけど……」

 「な、何だ?」

 翔輝はそう言ってゴクリと固唾を飲むと、

 「実は僕、こっそり師匠と春風のやり取りを聞いちゃったんだけど……師匠、春風のこと『ハニー』って呼んでた」

 と、水音はかなり真剣な表情でそう答えた。

 「……ハニー?」

 「そう、『マイスウィートハニー』だ」

 それから、4秒の沈黙後、

 「は、ハニー!? じゃなくって、ハニー!?」

 と、問い詰める翔輝に、

 「ああ、間違いない、確かに『ハニー』と呼ばれていた! でも、わかる気がする! だって、春風、可愛すぎるんだもの! 『ダーリン』と呼ぶには可愛いすぎるんだもの! これは僕のだけど、師匠と春風は、間違いなくラブラブな関係にあると思う!」

 と、水音は更に真剣な表情でそう答えた。

 その答えを聞いて、翔輝は「そんな……」と顔を真っ青にしたが、

 「ゆ、許さーん! 許さんぞ幸村春風! 年上の女性ってだけでも許さないのに、『師匠』と『弟子』の、だと!? お前は、どんだけ罪作りな男なんだぁっ!」

 と、両目にメラメラと炎を宿しながらそう叫んだ。

 後にこの話を聞いて、

 「すみません! ほんとうにすみません!」

 と、当の本人は何度も頭を下げて謝罪したのだが、それはまた、別の話だ。
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