ユニーク賢者の異世界大冒険

ハヤテ

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第14章 更なる「力」を求めて

第477話 春風編38 「アンディ博士」との戦い

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 突如現れた黒い戦術兵器ジャーベリン。その背中から現れたアンディこと流の姿を見て、中学3年の春風は絶句した。

 その後、中学3年の春風は流と同じようにハッチを開いて、その姿を流に見せた。

 「あ、アンディ博士……」

 と、中学3年の春風が口を開くと、

 「僕をその名で呼ぶってことは、君は本当に『光国春風』なんだね?」

 と、流は冷たい眼差しを中学3年の春風に向けながら尋ねた。

 その質問に対して、中学3年の春風は無言でコクリと頷くと、

 「おい、安土博士! よくも儂らを騙してくれたな!」

 と、ハッチを開けて外に出た丈治が、流に向かってそう怒鳴った。

 「騙すだって?」

 と、流が冷たい眼差しを丈治に向けると、

 「惚けるな! 春風から5年前ことは全て聞いたぞ! 子供達のこともだ! 何が『故郷を災害で亡くしたからこちらで保護した』だ! お前達が彼らの故郷を襲ったそうじゃないか!」

 と、丈治は怒りのままにそう叫んだ。

 すると、流は「ハァ」と溜め息を吐いて、

 「小田川博士、何かを成し得るには多少のはつきものですよ。そして、今回はあの『村』がその犠牲だった。ただそれだけのことです」

 と、冷たく言い放ったので、

 「貴様ぁ!」

 と、丈治は更に怒りに体を震わせた。

 しかし、流はそんな丈治から視線をずらして、

 「春風、悪いことは言わない。今すぐそこから降りて、小田川博士と子供達を置いてここから去るんだ。そうすればここで暴れたことついては何も言わないし、君のことは放っておくと約束しよう」

 と、提案してきた。

 その言葉に中学3年の春風は悲しそうな表情をしたが、真っ直ぐ流を見て、

 「……悪いけどそれは出来ないよ。アンディ博士達がしたことは許せないけど、ここへはこの子達を助けに来たんだ。だから、そこをどいてください」

 と言い返した。

 その言葉に流は「そうか」と呟くと、

 「だったら、ここで死んでもらう!」

 と、流は黒いジャーベリン中へと戻った。

 そして少しすると、黒いジャーベリンは動きだし、戦闘体勢に入った。

 「あ、アンディ博士ぇ!」

 と、中学3年の春風は叫んだが、

 「その名で呼ぶなと言った筈だ!」

 と、流が動かす黒いジャーベリンが中学3年の春風の前に迫り、チェーンソーが装着された右腕を振り上げた。

 しかし、

 「させんぞ!」

 と、丈治が動かす試作型ジャーベリン1号が、黒いジャーベリンにタックルをかました。

 それを受けて、黒いジャーベリンはバランスを崩しそうになったが、すぐに体勢を立て直した。

 そんな状況の中、

 「春風、戦うんじゃ! 奴はもう、お前の知ってる安土流ではない!」

 と、丈治が中学3年の春風に向かってそう怒鳴ると、

 「……ちくしょう!」

 と、中学3年の春風はすぐに内部に戻って、試作型ジャーベリン2号を動かした。

 「よし、春風よ! 力を合わせて、奴を無力化するんじゃ!」

 「はい!」

 2人が動かす2体の試作型ジャーベリンが、黒いジャーベリンに向かって突撃する。

 繰り出す攻撃は、2体同時パンチだ。

 だが、

 「く! 完成型ジャーベリンを舐めるなぁ!」

 と、流が動かす黒いジャーベリンは、その2体のパンチを難なく受け止めた。

 そして、動きを止めたその2体に向かって、背中のガトリングガンの隣にあるミサイルポッドから、2発のミサイルを発射した。

 ーーボォン!

 「くぅ!」

 「うわぁ!」

 思いっきりミサイル攻撃を受けた2体の試作型ジャーベリン。

 しかし、少々のダメージを受けただけで、大破するほどではなかった。

 「フン。流石試作型だけあって、頑丈さは高いか」

 黒いジャーベリンの内部で、流はそう悪態を吐くと、

 「なら、はどうかな?」

 と、ニヤリと笑った。

 次の瞬間、黒いジャーベリンが真っ直ぐ突進してきた。目的は、中学3年の春風が動かす2号だ。

 「やらせんぞ!」

 と、丈治の1号が止めに入ったが、

 「邪魔をするな!」

 と、黒いジャーベリンの両腕のチェーンソーが、1号のボディを切り裂いた。

 その後、攻撃を受けてよろける1号の両足に、黒いジャーベリンの右足から発射された小さなミサイルが撃ち込まれた。

 結果、1号はバランスを崩して地面に倒れたが、それでも動こうとしたため、黒いジャーベリンはトドメとばかりに背中のガトリングガンを撃った。

 「グアアアアアアア!」

 という丈治の悲鳴と共に、強力な攻撃を受けた1号はそのまま動かなくなった。

 「小田川博士!」

 と、中学3年の春風が向かおうとしたが、

 「何処を見ている!」

 「っ!」

 それより早く、黒いジャーベリンが2号の両腕を掴むと、漆黒のボディの中央が開いて、そこから大きな筒が現れた。

 それを見て何かを感じたのか、中学3年の春風は必死に逃れようとしたが、思うように動かすことが出来なかった。

 そして、

 「くらえ!」

 と、流がそう叫ぶと、筒の内部が白く光り出した。

 その光を見て、

 「や、やばい!」

 と、中学3年の春風はすぐにハッチを開いて、2号から脱出した。

 そのすぐに、大きな筒から太いビームが放たれて、2号を一瞬で破壊した。

 「う、うわわぁ!」

 その衝撃を受けた為か、春風は吹き飛ばされる形で地面に落ちた。受け身を取っていた為、大したダメージは受けていないが。

 その姿を見て、

 「ち、生きていたか。だが……」

 と、流がそう呟くと、再び黒いジャーベリンの腹部の筒ーービーム砲を中学3年の春風に向けた。

 その様子を見た丈治とサンディが、

 「い、いかん! 逃げるんじゃ春風ぁ!」

 「は、春風ちゃん! 逃げてぇ!」

 と、中学3年の春風に向かってそう叫んだが、それでも流は止まらず、

 「これで終わりだぁ! 死ねぇ春風ぁ!」

 と、今にも攻撃しようとした。

 すると、

 「……まだだ」

 と、中学3年の春風はスッと立ち上がると、背中に背負った布袋を開けた。

 「僕は、俺は、まだここで死ぬわけには……いかないんだ!」

 そして、そこから出てきた刀ーー彼岸花の柄をグッと握った。

 次の瞬間、彼岸花の柄からいくつもの触手が伸びて、中学3年の春風の右腕に絡みついた。

 「う、ぐ、グアアアアアアアッ!」

 と、中学3年の春風がそう悲鳴をあげると、短い黒髪が腰まで届くくらい長くなって真っ赤に染まり、右目が髪の色と同じ赤い炎に包まれた。

 そして、悲鳴と共に彼岸花の刀身が鞘から抜き放たれた。

 その刀身は、伸びた髪と右目の炎と同じ、真っ赤に輝いていた。

 「な、なんだ、なんだその刀はぁあああああ!?」

 と、流が叫ぶと、異形の姿となった中学3年の春風に向かってビーム砲を撃った。

 砲身から放たれたビームが、中学3年の春風を飲み込もうとしたが、彼はそれに臆することなく、

 「アアンディイイイイイイイッ!」

 と、両手で力いっぱい彼岸花を振るうと、そのビーム諸共、黒いジャーベリンを切り裂いた。
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