ユニーク賢者の異世界大冒険

ハヤテ

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第14章 更なる「力」を求めて

第465話 春風編26 そして、少年は「弟子」になった

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 「こいつを、あんたの『弟子』にしたらいいんじゃねぇか?」

 『……え?』

 男性客が言ったその提案に、小学生時代の春風をはじめとした店内にいる誰もが首を傾げていると、

 「あのぉ、それってどういう意味でしょうか?」

 と、凛依冴が「はい」と手を上げながら、男性客に向かってそう尋ねた。

 すると、男性客は「ああ、ええっとだな……」と気まずそうに頭をかきながら答える。

 「あんたの名前を聞いて思い出したんだが、あんた女性冒険家の間凛依冴だったよな? テレビや雑誌で見たことあるぜ」

 「あら、私ってそこまで有名になってたんだ」

 「ああ。何を隠そう、俺の娘もあんたの大ファンなんだ」

 「へ、へぇそうなんだぁ」

 と、凛依冴が「エヘヘ」と顔を真っ赤にしていると、すぐにハッとなって、

 「コホン。で、話は戻すけど、春風を私の『弟子』にっていうのはどういう意味なの?」

 と、男性客に向かってそう尋ねた。

 その質問に対して男性客は

 「あーそれはだな。あんた、冒険家として世界中を飛び回ってんだろ? なら、その時に身につけた『知識(?)』とか『技術(?)』とか、『心構え(?)』みたいなものを、こいつに教えるっていう意味なんだが……駄目か、な?」

 と、「ハハ」と不安そうに笑いながら答えた。

 その答えを聞いて、涼司は「いや、何言ってんだ……」と言おうとした、まさにその時、

 「そ……」

 『?』

 「それだ! それそれ! そうよその手があったじゃないの!」

 と、凛依冴は表情を明るくした。
 
 そして、凛依冴は男性客の手を両手で掴むと、

 「ありがとう! とても素晴らしい案だわ!」

 と、目に涙を浮かべながらお礼を言った。

 凛依冴のその勢いに、男性客が「お、おお……」と驚いていると、

 「あのぉ……」

 と、小学生時代の春風が口を開いた。

 「ん? どうしたの春風?」

 と、凛依冴が尋ねると、小学生時代の春風は男性客に向かって、

 「あなたのお話はわかりましたが、その、どうして……?」

 と途中で途切れる形でそう尋ねた。

 その質問を聞いて、男性客は真剣な表情で答える。

 「俺はここに通い始めて日は浅いが、息子さんよぉ、俺はお前さんがかってのはわかってるつもりだ」

 「どういう人間って?」

 と、小学生時代の春風が警戒しながら尋ねると、男性客は更に真剣な表情で答える。

 「俺にはわかる。お前さんは近い将来、何かとてつもなくをやる人間になる。が、今のお前さんには、圧倒的に『力』がない」

 「……だから、マリーさんの弟子になれ、と?」

 その質問に対して、男性客は黙ってコクリと頷いた。

 それを見て、小学生時代の春風は困ったような表情になると、「どうしよう」と助けを求めるように涼司を見た。

 視線を向けられた涼司は「うぅ!」と唸って少し考え込んだが、やがて意を決したかのように口を開く。

 「……正直、俺は反対だ。大事な息子を、変な女に渡したくねぇって気持ちもある。だけど、決めるのは春風、お前だ。お前は、どうしたいんだ?」

 涼司にそう尋ねられて、小学生時代の春風は「それは……」と顔を下に向けると、自身の両手を見ながら、

 「マリーさん……」

 と、凛依冴に話しかけた。

 「なに、春風?」

 「俺、オヤジに引き取られる前に、『大切なもの』を失いました。あなたの弟子になれば、いつかまた『大切なもの』が出来た時に、それを守ることが出来るようになれますか?」

 そう言って、顔を上げて凛依冴を見る小学生時代の春風。そんな彼を見て、凛依冴は答える。

 「ええ、勿論よ。私が、あなたを強くするわ」

 その答えを聞いて、小学生時代の春風は再び涼司を見て口を開く。

 「オヤジ、ごめん。俺……」

 と言いかけると、涼司は「やれやれ……」と頭をかいて、

 「オーケーだ春風、思いっきり強くなってこい」

 と、親指を立てながら言った。

 「オヤジ!」

 「ただし、条件がある!」

 「?」

 「お前がどんな道を歩むことになっても、お前はこの俺、幸村涼司の大事な『息子』だってこと、忘れないでくれ」

 と、涼司が言ったその言葉に、小学生時代の春風は目に涙を浮かべたが、すぐにそれを拭って、

 「うん、わかった」

 と頷いた。

 その後、真っ直ぐ凛依冴を見て、

 「あの、マリーさん」

 「な、何かな?」

 「あなたの『弟子』になるってことなんですが、えっと、それじゃあ、あなたのことはなんて呼べば良いのでしょうか?」

 と、ちょっと不安そうにそう尋ねると、凛依冴は「あ……」となったが、すぐにニヤリと笑って、

 「決まってるでしょ? 『師匠』と呼びなさい」

 と、カッコよくポーズをとりながらそう答えた。

 その答えを聞いて、小学生時代の春風は「ハハ」と小さく笑うと、また真っ直ぐ凛依冴を見て、

 「よろしくお願いします、!」

 と、元気よく深々と頭を下げた。

 その言葉を聞いて、凛依冴は何かがのか、

 「わーい! よろしくね春風! いえ、!」

 と、大喜びで春風を抱きしめた。

 「うわ! ちょ、ちょっと、なんですかその呼び名! あ、コラ! どさくさに紛れてどこ触ってんですか!?」

 と、春風がそう叫ぶと、ブチっとなった涼司は、

 「やっぱ反対だぁー! テメェ、俺の大事な息子から離れるや、このど変態女がぁーっ!」

 と、小学生時代の春風から凛依冴を引き剥がそうとしたが、

 「やーだよー! 離れないもーん!」

 と、春風を更にギュッと抱きしめた。

 「ぐえ! ぐ、ぐるしいぃ! だ、だずげてぇ!」

 「は、春風ぁ! は、離れろ! 離れやがれってんだぁ!」

 「やーだもーん! 絶対に離さないもーん!」

 と、じゃれ合う3人を見て、男性客は勿論、他のお客さん達も、皆、「アハハ」と笑うのだった。
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