ユニーク賢者の異世界大冒険

ハヤテ

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第14章 更なる「力」を求めて

第456話 春風編17 そして、「事件」は起きた

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 (……そうだ。今日が、『あの事件』が起きた日だ)

 と、春風がそう思い出した瞬間、黒く染まった景色が一瞬で変わった。

 自らを「ブレイン・ロードの使者」を名乗った若い男性達に連れられて、小学生時代の春風とその母・雪花は、王立科学研究所内の廊下を歩いていた。

 その後、大きな自動扉の前に着くと、扉はスッと開かれて、小学生時代の春風達はその扉の向こうへと入った。当然、春風も扉の向こうへと入った。

 中は大きな部屋になっていて、中央には大きな球体状のエネルギーを発生させている装置と、それに繋がっている数多くの機械があり、そのエネルギーを発生させている装置の周囲には、父・冬夜と愛染元作所長をはじめとする「愛研」のメンバー、そして、大勢の科学者達の姿があった。

 「す、凄いや……」

 と、小学生時代の春風が目の前の光景に見惚れていると、それまで少し歪んだその球体状のエネルギーが、綺麗な球体になり、それを見て、

 「実験、成功だ」

 と、元作が言ったのをきっかけに、周りの外国人科学者達も何かを言った後、皆、「わぁあっ!」と声を出して喜びあった。

 その時だ。

 「いやぁー、素晴らしい!」

 と、「ブレイン・ロードの使者」を名乗った若い男性ーー以降は「ブレイン・ロード」の使者と呼ぼうーーが、パチパチと拍手をしながら口を開いた。

 その声にビクッとなったのか、冬夜や元作ら科学者達が、一斉にブレイン・ロードの使者の方へと振り向いた。その最中に、

 「セっちゃん! 春風!」

 と、冬夜が驚きの声をあげていたが、小学生時代の春風の側に立っているブレイン・ロードの使者を見て、キッと睨みつけた。

 しかし、ブレイン・ロードの使者はそんな冬夜に構わず、

 「皆さま、中々素晴らしい実験でしたよ」

 と、穏やか口調でそう言った。そんな彼を見て、

 「……貴様ら、何故ここにいる!? 何しにここに来た!?」

 と、元作が怒鳴るように問い詰めてきた。

 しかし、そんな元作に対しても、

 「決まってるでしょ。改めて、皆さまをスカウトしに来たのですよ」

 と、ブレイン・ロードの使者は穏やかな口調を崩さずにそう答えたので、

 「前にも言った筈だ。『絶対に嫌だ』とな」

 と、元作は怒りを込めて静かにそう返した。

 その答えを聞いて、ブレイン・ロードの使者は「ふむ」と自身の顎をいじると、

 「では、でどうでしょうか?」

 と言って、指をパチンと鳴らした。

 次の瞬間、その音を合図に、周囲にいる複数の警備員達が、元作ら科学者達を取り囲み、彼らに

 「な、何……だと!?」

 突然のことに驚く元作と科学者達。

 更に、

 「そして、も……」

 と、ブレイン・ロードの使者が今度はパンパンと手を2回ほど叩くと、

 「な、ちょ、皆さん!?」

 と、冬夜が驚いたように、なんと科学者達の半数が、一斉にブレイン・ロードの使者のもとに集まったのだ。

 それを見て、元作達だけでなく小学生時代の春風も驚いていたが、

 「え? 何で、?」

 なんと、集まった科学者達の中に、アンディこと安土流の姿もあったので、小学生時代の春風は驚きのあまり目を大きく見開いた。

 この事態に対して元作は、

 「アンディ……いや、お前さんはそちらにいくのか?」

 と、落ち着いた表情でアンディこと安土流ーー以降は流と呼ぶことにしようーーに尋ねると、

 「……すみません、所長」

 と、流は本当に申し訳なさそうに謝罪した。その答えを聞いて、

 「……そうか」

 と、元作は悲しそうな表情になった。当然、元作だけでなく冬夜や他の「愛研」メンバー達、更に、

 「アンディさん……」

 と、小学生時代の春風も悲しそうな表情になった。

 だが、そんな小学生時代の春風達に構わず、

 「ご覧の通り、これほどの科学者達が、既に我々の『仲間』になっているのです。この状況を見ても、まだ『嫌だ』とおっしゃるのですか?」

 と、ブレイン・ロードの使者は穏やかな笑みを浮かべ、穏やかな口調でそう尋ねてきた。

 すると、

 「ーーーーっ!」

 「ーーーーーっ!」

 と、元作の近くに立っていた外国の科学者数人が、怒鳴りながら元作の前に立った。表情と口ぶりからして、「ふざけるな!」と言っているなと、小学生時代の春風はそう感じた。

 更に、

 「ーーー! ーーーーーっ!」

 と、何やらこの場に相応しくない立派な衣服に身を包んだ初老の男性が現れて、元作の前に立つ科学者達と共に怒鳴り散らした。その姿を見て、

 (あれ? あの人って、確かこの国のじゃ……)

 と、春風がそんなことを考えていると、

 「……やれやれですね」
 
 と言って、ブレイン・ロードの使者はスッと右手を上げると、

 「うるさい」

 と、上げた右手を素早く下ろした。

 次の瞬間……。

 ーーバァン!

 大きな音と共に、警備員の1人から放たれた1発の銃弾が、元作の前で怒鳴り散らす外国人科学者の胸を撃ち抜いた。
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