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第14章 更なる「力」を求めて
第451話 春風編12 「光国春風」と「不穏な影」
しおりを挟むちょっとした修羅場を経て、漸く次の通路へと進み始めた春風達。
その後、新たな部屋に着くと、また謎の火の玉が現れて、
(うぅ、なんだろう。なんか嫌な予感がするなぁ……)
と、春風は不安に思いながらも、その火の玉に触れた。
次の瞬間、また眩い光と共に景色が変わって、気がつくと、春風はかつて「光国春風」だった時に住んでいた自宅の前にいた。
(今度はどの『記憶』だろう)
と思って、春風は周囲を見回すと、
(あれ? あの車……)
自宅の前に、一台の白いワゴン車がとまっているのに気づいた。
一見どこにでもありそうなそのワゴン車をよく見ると、
(……あ、これって!)
そのワゴン車のドアに貼られている、とあるステッカーを見て、
「……そうだ。これ、あの時の記憶だ!」
と呟き、春風はギリっと歯軋りをした。
するとそこへ、ランドセルを背負った小学生時代の春風が、こちらに向かって走ってくるのが見えた。
そして、彼が自宅の前まで来たその時、玄関の扉が開かれて、そこから黒いスーツを着た3人の若い男性が出てきた。
「では、またお伺いします」
と、その中の1人がそう言うと、
「結構だ、2度と来ないでくれ」
と、何やら怖い表情をした冬夜がそう静かに返した。
そのやり取りを見た小学生時代の春風は、すぐに来た道を引き返して、曲がり角にある電柱へと隠れた。
その後、そこから自宅前の様子を覗くと、3人の男性達は自宅前にある白いワゴン車に乗り込み、そのまま走り去った。当然、男性達に見つからないようにしながら、だ。
ワゴン車が走り去った後、小学生時代の春風はすぐに自宅へと駆け出した。
「た、ただいま……」
と、小学生時代の春風が恐る恐るそう言うと、
「あぁ、おかえり春風」
と、いつもの穏やかな笑みをした冬夜がそこにいたので、小学生時代の春風はホッと胸を撫で下ろし、そのまま自宅に入った。
その様子を見て、
「そうだ。これは、『あの事件』が起きる前の記憶だ」
と、ボソリとそう呟いた。
すると次の瞬間、眩い光と共に再び景色が変わり、気がつくと、今度は「愛染総合科学研究所」の前に立っていた。
よく見ると、その門の前には、自宅前にとまっていた、あの白いワゴン車があった。
(そうだ、この記憶は……)
と、春風が心の中でそう呟いていると、自転車に乗った小学生時代の春風が、こちらに向かっているのが見えた。
そして、研究所の前で自転車をとめた後、後ろにつんだ荷物を持って研究所に入ろうとすると、
「帰れ! そして2度と、我々の前に現れるな!」
という所長の元作の怒鳴り声と共に、研究所の中からまた3人の黒いスーツを着た若い男性達が出てきた。
「どうしても考えを変えませんか?」
と、その中の1人が、同じく外に出てきた元作に向かってそう尋ねると、
「くどいぞ! 何度訪ねてきたところで、我々はお前達『ブレイン・ロード』に加わる気はない!」
と、元作は怒鳴りながらそう返した。
それを聞いて、若い男性達の1人が「やれやれ」と首を横に振ると、
「……おや?」
と、小学生時代の春風の存在に気づき、
「君は……」
と、近づいて来た。
すると、
「オイ」
という低い声が聞こえて、若い男性と小学生時代の春風はすぐに声がした方へと向くと、
「その子から離れろ」
そこには、見たこともないくらいの怖い形相をした冬夜がいた。
それを見て、先ほどの若い男性が何かを言おうとすると、
「離れろって言ってるんだ!」
と、冬夜は思いっきりその若い男性を怒鳴ったので、小学生時代の春風は思わず、
「ヒッ!」
と、悲鳴をあげて、持っていた荷物を落とした。
その後、若い男性達は小学生時代の春風から離れると、そのまま白いワゴン車に乗って、何処かへと去っていった。
そして、白いワゴン車が見えなくなると、
「春風……」
と、冬夜は放心状態の小学生時代の春風に駆け寄り、
「ごめん! ごめんね春風!」
と言って、ガバッと抱きしめた。
抱きしめられた小学生時代の春風は、
「お、お父……さん?」
と、ハッとなって冬夜を見ると、
「ごめんね、春風。お父さん、怖かっただろ? 本当に、ごめんね」
と、冬夜は何度も小学生時代の春風に謝罪していた。
その謝罪を聞いた小学生時代の春風は、ギュッと冬夜を抱きしめると、
「お、お父さぁん、うわぁあん!」
と、大声で泣き叫んだ。
春風はその様子を見て、
(……お父さん)
と、「辛さ」と「悲しみ」と「怒り」が入り混じったような表情を浮かべた。
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