ユニーク賢者の異世界大冒険

ハヤテ

文字の大きさ
上 下
502 / 608
第14章 更なる「力」を求めて

第451話 春風編12 「光国春風」と「不穏な影」

しおりを挟む

 ちょっとしたを経て、漸く次の通路へと進み始めた春風達。

 その後、新たな部屋に着くと、また謎の火の玉が現れて、

 (うぅ、なんだろう。なんか予感がするなぁ……)

 と、春風は不安に思いながらも、その火の玉に触れた。

 次の瞬間、また眩い光と共に景色が変わって、気がつくと、春風はかつて「光国春風」だった時に住んでいた自宅の前にいた。

 (今度はどの『記憶』だろう)

 と思って、春風は周囲を見回すと、

 (あれ? あの車……)

 自宅の前に、一台の白いワゴン車がとまっているのに気づいた。

 一見どこにでもありそうなそのワゴン車をよく見ると、

 (……あ、これって!)

 そのワゴン車のドアに貼られている、を見て、

 「……そうだ。これ、の記憶だ!」

 と呟き、春風はギリっと歯軋りをした。

 するとそこへ、ランドセルを背負った小学生時代の春風が、こちらに向かって走ってくるのが見えた。

 そして、彼が自宅の前まで来たその時、玄関の扉が開かれて、そこから黒いスーツを着た3人の若い男性が出てきた。

 「では、またお伺いします」

 と、その中の1人がそう言うと、

 「結構だ、2度と来ないでくれ」

 と、何やら怖い表情をした冬夜がそう静かに返した。

 そのやり取りを見た小学生時代の春風は、すぐに来た道を引き返して、曲がり角にある電柱へと隠れた。

 その後、そこから自宅前の様子を覗くと、3人の男性達は自宅前にある白いワゴン車に乗り込み、そのまま走り去った。当然、男性達に見つからないようにしながら、だ。

 ワゴン車が走り去った後、小学生時代の春風はすぐに自宅へと駆け出した。

 「た、ただいま……」

 と、小学生時代の春風が恐る恐るそう言うと、

 「あぁ、おかえり春風」

 と、いつもの穏やかな笑みをした冬夜がそこにいたので、小学生時代の春風はホッと胸を撫で下ろし、そのまま自宅に入った。

 その様子を見て、

 「そうだ。これは、『あの事件』が起きる前の記憶だ」

 と、ボソリとそう呟いた。

 すると次の瞬間、眩い光と共に再び景色が変わり、気がつくと、今度は「愛染総合科学研究所」の前に立っていた。

 よく見ると、その門の前には、自宅前にとまっていた、あの白いワゴン車があった。

 (そうだ、この記憶は……)

 と、春風が心の中でそう呟いていると、自転車に乗った小学生時代の春風が、こちらに向かっているのが見えた。

 そして、研究所の前で自転車をとめた後、後ろにつんだ荷物を持って研究所に入ろうとすると、

 「帰れ! そして2度と、我々の前に現れるな!」

 という所長の元作の怒鳴り声と共に、研究所の中からまた3人の黒いスーツを着た若い男性達が出てきた。

 「どうしても考えを変えませんか?」

 と、その中の1人が、同じく外に出てきた元作に向かってそう尋ねると、

 「くどいぞ! 何度訪ねてきたところで、我々はお前達『ブレイン・ロード』に加わる気はない!」

 と、元作は怒鳴りながらそう返した。

 それを聞いて、若い男性達の1人が「やれやれ」と首を横に振ると、

 「……おや?」

 と、小学生時代の春風の存在に気づき、

 「君は……」

 と、近づいて来た。

 すると、

 「オイ」

 という低い声が聞こえて、若い男性と小学生時代の春風はすぐに声がした方へと向くと、

 「その子から離れろ」

 そこには、見たこともないくらいのをした冬夜がいた。

 それを見て、先ほどの若い男性が何かを言おうとすると、

 「離れろって言ってるんだ!」

 と、冬夜は思いっきりその若い男性を怒鳴ったので、小学生時代の春風は思わず、

 「ヒッ!」

 と、悲鳴をあげて、持っていた荷物を落とした。

 その後、若い男性達は小学生時代の春風から離れると、そのまま白いワゴン車に乗って、何処かへと去っていった。

 そして、白いワゴン車が見えなくなると、

 「春風……」

 と、冬夜は放心状態の小学生時代の春風に駆け寄り、

 「ごめん! ごめんね春風!」

 と言って、ガバッと抱きしめた。

 抱きしめられた小学生時代の春風は、

 「お、お父……さん?」

 と、ハッとなって冬夜を見ると、

 「ごめんね、春風。お父さん、怖かっただろ? 本当に、ごめんね」

 と、冬夜は何度も小学生時代の春風に謝罪していた。

 その謝罪を聞いた小学生時代の春風は、ギュッと冬夜を抱きしめると、

 「お、お父さぁん、うわぁあん!」

 と、大声で泣き叫んだ。

 春風はその様子を見て、

 (……お父さん)

 と、「辛さ」と「悲しみ」と「怒り」が入り混じったような表情を浮かべた。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

聖女の姉ですが、宰相閣下は無能な妹より私がお好きなようですよ?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:19,290pt お気に入り:11,950

神に捧げる贄の祝詞

BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:133

異世界じゃスローライフはままならない~聖獣の主人は島育ち~

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:10,990pt お気に入り:9,024

奇跡の街と青いペンダント

児童書・童話 / 完結 24h.ポイント:85pt お気に入り:1

ただ、好きなことをしたいだけ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:42

プラトニックな事実婚から始めませんか?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:6,109pt お気に入り:22

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:846pt お気に入り:3,917

特別な人

BL / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:73

処理中です...