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第14章 更なる「力」を求めて
第431話 水音編27 「記憶」を集めて2
しおりを挟む「こ、こいつは!?」
「ヒィッ!」
「……っ」
と驚いたループス達の前に現れたもの。
それは、水音の「記憶」に関わる青い人型の「何か」なのだが、その「何か」はそれまで出会った「何か」達よりもかなり異質だった。
その見た目は、まるで黒に近い青い炎が、かろうじて人の形を成しているかのように歪で、大きさは幼い子供と同じくらいだった。
そして顔の部分はというと、大き見開いた白い両目に小さく開いた口があり、それがかなりの不気味さを出していた。
そんな不気味な「何か」が、ループス達の元へとゆっくり近づいてくるのを見て、思わずループスは身構えたが、
「待ってください。恐らく、あれも水音君の記憶に関わるものでしょう」
と、白い水音が「待った」をかけたので、ハッとなったループスは、
「わ、悪い」
と、謝罪して警戒を解くと、
「ど、どうしたの!?」
と、背後の分身1号の声を聞いて、ループスは「ん?」とすぐに振り向くと、そこには尋常じゃないくらいに蹲って体を激しく震わせた、更に大きなった水音がいた。
「お、おい、どうしたんだよ水音!?」
と、驚いたループスが尋ねると、
「嫌だ……嫌だ……嫌だ……」
と、更に大きなった水音は、体を震わせ、歯をガチガチと鳴らしながらそう答えた。
そのあまりの様子を見て、
「どうなってんだ、こりゃ?」
と、ループスが頭上に「?」を浮かべると、
「恐らく、アレが水音君が、『最も向き合いたくないもの』か、それに関わるものなのでしょう」
と、白い水音が目の前の青黒い「何か」を見ながらそう答えた。
震える更に大きくなった水音を見て、
「ね、ねぇ水音君。君、アレが何か知ってるの?」
と、分身1号が尋ねると、
「わ、わかりません。で、でも、何故かわかりませんけど、アレは、触れちゃいけない、見ちゃいけない、そんな気がするんです」
と、更に大きなった水音は両手で頭を抱えながらそう答えた。
その答えを聞いて、ループスは心配そうに更に大きくなった水音を見たが、
「このままじゃいけねぇよな」
と、小さく呟いて、
「オイ、そこの青黒いの! ちょいとコッチ来い!」
と、青黒い「何か」に向かってそう言った。
それに反応したのか、青黒い「何か」はヒタヒタと小走りでループス達に駆け寄ると、スッと右手を差し出した。
それを見て、ループスが「よし、いい子だ」と言うと、
「悪りぃな、水音」
と、更に大きなった水音の右手を軽く咥えて、差し出された青黒い「何か」の右手に置いた。
その瞬間、
「い、嫌だぁあああああああっ!」
という更に大きなった水音の悲鳴と共に、周囲の景色が変わった。
そこは、どうやら大きな古い建物の中のようで、そこには1人の少年と戦う水音と、複数の少年達に取り押さえられていた陽菜の姿があった。
その様子を見て、
「なぁ、あの水音と戦ってるのって……」
「ええ、確か水音君の従兄弟の航士君でしたね」
「もしかして、ここって水音君が話してた、3年前の……」
「ああ、そうだ。水音が『力』を暴走させたっていう……」
と、ループス達は、今自分達が見てるのは3、年前に水音が母・清光を傷つけてしまった時の『記憶』だと理解した。
だが、
「なぁ、なんかここ、おかしくないか?」
と、ループスが頭上に「?」を浮かべながら口を開いた。
確かにそこは大きな建物の中なのだが、ところどころが酷く歪んでいて、今にも壊れてしまうのではないかという感じだった。
そんなループスの言葉に、分身1号と白い水音も、「確かに……」という表情をすると、
「やめて!」
という声が聞こえたので、ループス達は「何事?」と目の前を見ると、そこには航士にしがみつく陽菜の姿があった。その様子を見て、どうやら2人の戦いを止めようとしているのだと、ループス達は理解した。
そして、
「邪魔をするな!」
と、陽菜が航士に突き飛ばされ、複数の少年達に再び取り押さえられたのを見て、
「止めろ、陽菜ーーーー!」
と、途中から何を言ってるのかわからない水音の叫びの後……。
ーーブツン!
という音と共に、その場が一瞬で黒く染まった。
「うぉ! な、何だ!?」
「なになに!?」
「これは……」
突然のことに驚いたループス達だったが、すぐに違う景色になった。
そこは、先ほどまでいた大きな古い建物の中のようだが、そこにいたのは、自身を支える父・優誓に、1人の女性、泣きじゃくる陽菜と、倒れ伏した航士や少年達、そして、血を流して倒れる母・清光がいた。
「ど、どうして、母さんが?」
ゆっくりと清光と陽菜に近づく水音。
それに気づいたのか、
「お、お兄ちゃん。お母さんが、お母さんがぁ……」
と、陽菜が水音の方へと振り向いた。
その瞬間、
「ま、まさか……僕がやったの?」
と、水音は尋ねたが、陽菜は涙を流すだけで答えようとはしなかった。
その様子を見て、
「そ、そんな……嘘だ、母さん、僕はただ……僕はただ……」
と、水音はショックを受けたかのような表情になると、
「母さん! うわぁあああああああっ!」
と、絶望したかのような悲鳴をあげた。
その様子に、ループスと分身1号は顔を青くし、更に大きなった水音は、
「ごめんなさい、ごめんなさい」
と蹲って謝罪していたが、白い水音はというと、
「……やっぱり、何かがおかしい」
と、小さく呟きながら、目の前の光景をジッと見つめていた。
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