ユニーク賢者の異世界大冒険

ハヤテ

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第14章 更なる「力」を求めて

第429話 水音編25 2人の「水音」と……

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 ループスと分身1号が真っ暗な空間で助けた、青い人型の「何か」に襲われていた者達。

 その正体は、何とだった。

 1人は顔と背丈こそ水音だが、髪の色も着ている服も真っ白で、左右の瞳の色は、今いるこの真っ暗な空間と同じ真っ黒だった。

 そして、もう1人は分身1号が言ってたように「小さい水音」なのだが、これは、顔つきは水音だが、体は10歳以下の幼い子供という意味だ。因みに、服装も年相応の子供服を着ていた。

 ループス達が驚いていると、白い水音が口を開く。

 「こうして話すのは初めてでしたね、邪神……失礼、『月光と牙の神ループス』様と、その分身様」

 その言葉を聞いて、ループスは警戒しながら尋ねる。

 「……お前、何者だ?」

 白い水音が答える。

 「申し遅れました。僕は、あなたが言う『偽物の神々』によって、桜庭水音君に植え付けられた擬似人格です」

 「擬似人格だと?」

 「はい。水音君やクラスメイト達がこの世界に召喚された時、『偽物の神々』は職能と共に僕達擬似人格も植え付けていたのです。そして、本人に万が一のことが起きた時、彼らによって目覚めさせられ、以降は本人として生きることになるのです」

 「アイツらぁ、他所の世界の人間になんてことを!」

 白い水音の説明を聞き終えて、ループスは怒りで体を震わせた。その後、どうにか落ち着きを取り戻すと、白い水音に尋ねる。

 「……ってことは、お前はの水音ってことじゃねぇんだな?」

 「そうですね。『偽物か?』って問われたら、その通りでしょう」

 と、何処か悲しそうな表情で答えた白い水音。

 そんな中、今度は分身1号が尋ねる。

 「それじゃあ、そっちの小さい水音君は?」

 と、ちらりと小さい方の水音に視線を向けると、

 「っ!」

 と、小さい水音はビクッとなって白い方の水音の背後に隠れた。

 それを見たループスが「何だぁ?」と首を傾げると、再び白い水音が答えた。

 「ああ、大丈夫です。彼は本物の水音君なのですが、ちょっとが起きてしまって……」

 「「困ったこと?」」

 「ええ。もうわかってると思ってますが、今、水音君は『天使』となったルイーズの一撃によって瀕死の重症を負ってます」

 「ああ、それはわかってる」

 「そしてその後は、体から出てきた青い炎に包まれたのですが、あれはいわば『自己修復』の為の防御膜みたいなもので、今、水音君はその膜の中で傷を癒してる最中なのです」

 「そうなのか!?」

 「じゃあ、水音君助かるの!?」

 白い水音の説明に、ループスと分身1号は顔をパァッと明るくしたが、それとは対照的に、

 「ですが……」

 と、白い水音は表情を暗くした。

 「? オイ、どうしたんだよ?」

 と、ループスが尋ねると、白い水音はゆっくりと口を開いた。

 「先ほどループス様達が倒した、あの青い巨人のようなものですが、あれは水音君の『記憶』の一部が、姿形を得たものなんです」

 「なんと、記憶とな!?」
 
 「ええ、あれに触れて記憶を取り戻せば、その分復活にかかる時間を短縮出来るのですが、どういうわけかこの水音君が、その記憶に触れるのをしているんです」

 と、白い水音が小さい水音を見ながらそう説明した。

 「ええ!? ど、どうして!?」

 と、驚いた分身1号が問い詰めると、

 「どうも、記憶に触れることで、この子に何かがあるみたいなんです。まるで、思い出すことを怖がっているかのように」

 と、白い水音は答えた。それと同時に、小さい水音もコクリと頷きながら体を震わせていた。

 すると、ここでループスは「あ!」となって、

 「ど、どうしよう。お、俺達、そいつ思いっきり消しちまったんだけど?」

 と、恐る恐る尋ねたが、

 「ああ、それでしたら問題ありませんよ。を見てください」

 「「後ろ?」」

 白い水音に言われて、ループスと分身1号が後ろを向くと、

 「「げぇっ!」」

 そこには、消滅したはずの青い大きな人型の「何か」が立っていた。

 因みにその「何か」をよく見ると、頭に2本の角が生えているのが見えた。

 それを見て、小さい水音はビクッとなって体を震わせながら、白い方の水音にしがみついた。

 その姿を見て、分身1号は何かを感じたのか、小さい水音に近づくと、

 「ね、ねぇ、そんなにに触れるのが怖いの?」

 と、小さい水音にそう尋ねると、小さい水音はコクリと大きく頷いた。

 分身1号はその答えを聞いて、「うーんと」と考え込むと、

 「じゃ、じゃあさ、僕と一緒にあれに触れようよ。そ、それなら、怖くないでしょ?」

 と、ニコリと笑って小さい水音に向かってそう提案した。

 それを聞いた小さい水音は、体震えをなんとか止めると、

 「……うん」

 と、分身1号の提案に賛成した。

 その後、小さい水音は白い水音から手を離すと、分身1号と一緒に青い「何か」に近づいた。

 青い何かはジッと小さい水音を見つめると、スッと自身右手を差し出した。

 小さい水音はそれを見てビクッとなったが、側にいる分身1号に「大丈夫だよ」と優しく言われたので、小さい水音は「うん」と頷いて、その青い「何か」の手を取った。

 すると次の瞬間、真っ暗闇だった周囲の景色が変わった。

 気がつくと、ループス達の目の前には、数人の子供達に囲まれた幼い水音がいた。

 子供達から何か罵られている様子の幼い水音だったが、その後、自身の体から青い炎が噴き出て、暫くするとその形が変わった。

 それは、先ほどの大きな青い人型の「何か」だった。

 (そうか、あれは水音の『力』が姿を得たものだったのか!)

 と、水音から出てきた青い人型の「何か」を見て、そう納得したループス。

 その後、子供達のリーダーと思われる少年が、

 「ーーーーー!」

 と、水音を見てそう罵ると、他の子供達と共にその場から逃げ出した。

 そして、残された水音はというと、青い人型の「何か」を自分の体に戻した。

 その様子を見て、

 「水音……」

 「水音君……」

 と、ループスと分身1号は悲しげな表情を浮かべた。

 しかし、白い水音はというと、
 
 (何だろう? 何かが気がする)

 と、まるでを見るような表情になった。
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