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第14章 更なる「力」を求めて
第412話 水音編8 トラブル発生からの……
しおりを挟む分身1号に関する事情を聞き終えて、水音達はどうしたものかと悩んだ。
当然だろう。ここへは水音のパワーアップの為に、肝心のターゲットである分身1号がもの凄く臆病なうえに、保護区の住人達とも仲良くしているという話を聞いてしまったのだ。
『これから一体どうすりゃ良いんだ?』
と、誰もが困った表情になっていたが、
「駄目だ、ここで悩んでも何も始まらない!」
と、セレスティアは考えるのをやめて、
「おい、1号とやら! お前がそんなんだから、我々はこんな困った状況に陥ったんだぞ! 責任とってお前も何か良い案がないか考えろ!」
と、未だに壁際で震える分身1号にそう命令した。
しかし、分身1号はセレスティアの顔をチラリと見て、
「ヒィ、怖い! 肉食女子の顔ぉお!」
と、「食べられちゃう!」と言わんばかりに更に怯えてしまい、
「おい待て! それは怖いものなのかぁ!?」
と、そんな1号に向かってループスはそう突っ込みを入れて、
(『肉食女子』って……)
(まぁ、ある意味その通りではありますが……)
(いやぁ、こいつはただの『ど変態』だ)
リネット、水音、アビゲイルは心の中でそう呟いた。
そして、「肉食女子」と言われたセレスティアはというと、
「ほほう、だったら水音に代わって……」
分身1号に少しずつ近づいて、
「私が貴様を屠ってやろうかぁ!?」
と、女性にあるまじきもの凄く怖い顔でそう尋ねた。
その言葉に分身1号が「ヒィ!」と悲鳴をあげた、まさにその時、
「待ってぇ!」
『ん?』
背後から聞こえた叫び声の後に、何かが水音らの横を駆け抜けて、セレスティアと分身1号の間に入ってきた。
それは、見た目的に10歳以下くらいの幼い少女だった。
「うぉ! 何だ!?」
突然のことに驚くセレスティアに向かって、少女が口を開く。
「お願い、ワンちゃんをいじめないで! 大切なお友達なの!」
と、背後の分身1号を庇うように、セレスティアにそうお願いした少女。その少女を見て、
「……ハ! ミュリィ! ミュリィじゃないか!」
「あぁ!? マジでミュリィか!?」
と、ハッとなったグレアムとアビゲイルがその少女の名前を言った。
その言葉を聞いて、
「……誰だ?」
と、煌良が尋ねると、
「彼女はミュリィ。グレアムさんの孫よ」
と、リネットがそう答えた。
「ミュリィ、何故ここに居るんだ? 留守番をしてるようにと……」
と、グレアムが少女ーーミュリィに近づくと、
「近づかないで!」
と、ミュリィは分身1号を守るかのように、両腕を広げながらグレアムに怒鳴った。
その様子を見てグレアムが困ったような表情になると、
「落ち着けってミュリィ。あたしらは別にいじめようとかそんなんじゃねぇから。それにこいつは変態だけどこの国のお姫様だから……」
と、アビゲイルがミュリィを落ち着かせようと近づいた。
しかし、それが逆効果になったのか、
「来ないで!」
と、驚いたミュリィがアビゲイルに手を伸ばした。
次の瞬間、フニっとミュリィの手が何か柔らかいものを掴んだ。
それは、アビゲイルの大きな胸だった。
「ちょ、コラ! どこ掴んでんだよ!?」
と、アビゲイルが顔を赤くすると、
「ワンちゃんいじめちゃ駄目ぇ!」
と、ミュリィはアビゲイルの胸を掴むその手を動かした。
「うは! お、おい、やめろっての……!」
と、アビゲイルが何やら辛そうというか気持ちよさそうにしていると、
「……おい、小娘」
と、何やら表情を暗くしたセレスティアが、ゆっくりとミュリィに近づき、
「貴様ぁ! 私の許可なくアビーのステキな胸に触れるとは何事だぁ!」
と、目をギラリと輝かせて、
「アビーの素敵な胸は私とリネットと水音のものだぁ!」
と、ミュリィに掴みかかる勢いでそう怒鳴った。その際に、
「オイコラ! 勝手なこと言ってんじゃねぇ!」
「「誤解を招くようなこと言わないでください!」」
と、アビゲイル、リネット、水音にそう突っ込まれた。
そして、その声にビビったのか、
「キャア!」
と、ミュリィが悲鳴をあげた次の瞬間、
「や、やめろぉ!」
と、それまで怯えていた分身1号が、セレスティアに向かって飛びかかった。
それを見た水音は、
「セレスティア様!」
と、ダッシュでセレスティアの前に立ち、彼女を庇った。
その結果……。
ーーカプリ。
分身1号が、水音の腕に噛み付いた。
勿論、鎧を付けてない部分を、だ。
「……あ」
それに気付いた分身1号は、すぐに水音から離れて、
『水音(君)!』
と、ハッとなったセレスティア達が、水音の側に駆け寄った。
「だ、だいじょ……」
と、水音が噛まれた部分をおさえながら「大丈夫です」と言おうとしたその時……。
ーードクン。
「ぐっ!」
体内部が何か衝撃を受けたかのような痛みだし、水音は地面に両膝をついた。
「ど、どうした水音!?」
「お、おい! しっかりしろ!」
「水音君!」
と、心配したセレスティア達がが声をかけたが、その声は水音に届いてない様子だった。
そんな中、水音はというと、
(ち、違う、僕は……)
突如脳裏に浮かんだ、ある「記憶」を思い出していた。
(僕は……僕はぁ!)
それは嘗て、自身の「力」を暴走させた、「あの日」の記憶だった。
そして、次の瞬間、
(僕はそんなつもりじゃなかったんだぁあああああっ!)
「うあああああああっ!」
水音の全身から、青い「炎」のようなエネルギーが噴き出した。
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