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第14章 更なる「力」を求めて
第406話 水音編2 登場、女鍛治師アビー
しおりを挟むウォーリス帝国帝都は、かつて春風達「七色の綺羅星」が暮らしていた「中立都市シャーサル」のように、いくつかの区画に分かれている。
その中の1つ、数多くの生産職能の職能保持者が暮らす「職人区」の中を、セレスティアを先頭に水音達は歩いていた。
それから暫く歩いていると、
「さぁ、着いたぞ」
と、セレスティアがとある大きな建物の前で立ち止まった。
どうやらそこは鍛冶屋のようで、入り口の上に掲げられた看板には、「鍛冶屋ガリアン」と書かれていた。
煌良、学、麗生、ループスが建物の外観に「ホウ」と見惚れていると、セレスティア、水音、リネットが入り口の扉に近づき、
「おーい、いるかぁー!? 愛しのセレスが来たぞぉ!」
と、バァンと乱暴にその扉を蹴破った。
突然の事に水音とリネットを除いた面々がビクッとなると、
「うるっせーぞ、デケェ声出すんじゃねぇ! あと、ドア蹴破んなっつってんだろが!」
と、奥の方から乱暴な口調の女性らしき声が飛んできた。
水音とリネットを除いた面々が、
『な、なんだなんだ?』
と、一斉に水音の背中越しに建物の中を見ると、奥の方からセレスティアとリネットと同じ年頃ぐらいかを思わせる、かなり露出度の高い衣服に身を包んだちょっと不良っぽい印象の茶色いショートヘアの女性が出てきた。
よく見ると、かなりダイナマイトボディの持ち主のようで、煌良と学はその姿に見惚れたが、側に立つ麗生に「オイ」と睨まれて、2人は思わずそっぽを向いた。
そんな彼らを前に、
「まったく、仕事を終えたばっかなのにいきなり来るんじゃねぇよ」
と、女性は皇女であるセレスティアに対して乱暴かつ不機嫌な口調でそう言うと、
「いやぁ、すまんすまん……」
と、セレスティアは特に気にしてない様子で女性の目の前に近づいた。
「ちょ、おい、やめろ! アタシは今スッゲェ汗くせぇんだぞ!」
と、女性は一歩下がろうとしたが、セレスティアは「知るか」と言わんばかりに、
「いいじゃないか、お前と私達の仲だろう? おお、確かにこの臭いはひと仕事を終えた時のものだな」
と、クンカクンカと女性の全身の臭いを嗅いだ。時に汗をかいている部分を、だ。
「ああ。この臭い、たまらん」
と、セレスティアがそう言うと、
「く、この変態皇女が……」
と、女性は恥ずかしそうに顔を赤くしながら、セレスティアに向かってそう悪態を吐いた。
すると、
「セレスティア様、アビーをあまり困らせないでください」
と、リネットが呆れ顔でセレスティアを注意し、
「アビーさん、ただいま戻りました」
と、水音がアビーと呼んだ女性に向かってそう言ったので、
「お、おぉリネット、それに水音も来てたのか! ん、水音、その後ろにいるの誰だ?」
と、アビーと呼ばれた女性は水音に向かってそう尋ねた。
その後、水音は一歩横に動いて、
「紹介します、僕と同じ異世界人の、力石煌良君に、渡世学君と白銀麗生さん。そして、ループス様です」
と、アビーに煌良達を紹介した。それに続くように、煌良達が「どうも」と挨拶すると、
「へぇ、お前らが水音と同じ異世界の『勇者』。そして、今世間を騒がせている『邪神ループス』ってわけか」
と、アビーは値踏みするような目つきで煌良達を見つめた。その際ループスは、
「やかましいわ!」
とプンスカ怒っていたが。
そして、全員を見つめ終えると、
「……と、自己紹介がまだだったな。アタシは……」
と、アビーが自己紹介しようとしたその時、
「紹介しよう。彼女はここの主人である、鍛治師のアビゲイル・ガリアン。愛称は『アビー』な」
と、セレスティアが遮るように、代わりにアビーを紹介した。
「あ、テメェ! 勝手にアタシを紹介すんじゃねぇ!」
と、アビーことアビゲイルがセレスティアをそう怒鳴ると、
「えー? いいだろ? さっきも言ったように私達とお前の仲じゃないか」
と、こちらも負けじとプンスカとしながらそう言い返した。
その後、
「だーから! それが余計だっつの! あ、コラ! どさくさに紛れてアタシの胸を揉むな! アタシの頬にキスをしようとすんな! このド変態皇女がぁ!」
「なーにおう!」
と、そんなやりとりをする2人と、そんな2人を見て、
「「ハァ、やれやれ」」
と、ため息を吐く水音とリネット。
そして、そんな彼女達を見て、
「「「「……何、このカオス?」」」」
と、煌良達はなんとも言えない表情になった。
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