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第14章 更なる「力」を求めて
第404話 リアナ編20 そして、最後に◯が勝った
しおりを挟む(な、何故だ? 何故、こんなことに?)
目の前で起きた出来事を、アッシュは理解出来ないでいた。
確かに、自分と仲間達は「神」によって「天使」となった。その「天使」の力で、自分達を酷い目に遭わせた人物である幸村春風に復讐しようとも考えていた。
しかし今、その企みは、目の前にいる少女、「白き悪魔」ことリアナ・フィアンマによって潰されようとしていた。
「こ、こんな……こんなこと……許されて、いいものかぁあああああっ!」
と、アッシュが恐怖と怒りが入り混じった感情のままにそう叫ぶと、アッシュの全身から天使の翼と同じ白いオーラと、禍々しい赤黒いオーラが噴出した。
そして、アッシュが右手を空に掲げると、2つのオーラがその手に集まり、やがて1本の長剣になった。
「死ねぇええ悪魔めぇえええええっ!」
神々しさと禍々しさを混ぜ合わせたかのような異形の長剣を手に、アッシュがリアナに突進する。
しかし、それに対して、リアナは落ち着いた表情をしていた。
やがてアッシュがリアナの目の前に止まり、長剣を勢いよく振り下ろしたが、
「フン!」
リアナは魔力を込めた燃え盛る薔薇を振るって、その一撃を弾いた。
「な?」
あまりの出来事にポカンとなったアッシュを前に、リアナはボソリと呟く。
「あんた達は、絶対に許されないことをした」
その後、リアナは燃え盛る薔薇を地面に突き立てて、
「1度は滅んだけど、漸くここまで復興してきたこの村を……私の『生まれ故郷』を滅茶苦茶にして、ギャレットさんをいっぱい傷つけた」
着地はしたが未だ呆けてるアッシュにゆっくりと近づき、
「それはすっごく許さないけど、それ以上に……」
怒りのオーラを全身に纏わせて、
「ハルに……私達のハニーに、酷いことをしようなんて企んだことが、ものすっごく許せない!」
と、アッシュをギロリと睨みつけながら叫んだ。
「あ……あぁ……」
その姿に恐怖を感じたアッシュは、思わず1歩後ろに下がったが、リアナはそれに構わず、
「受けろ! 9連……」
怒りのオーラを全身から9本の尻尾に移して、
「尻尾ビンタァ!」
ペシペシペシペシペシペシペシペシペシと、それでアッシュを優しくビンタした。
「ア……」
もの凄い攻撃を受けたアッシュは、
「も……モフ、モフゥ」
と、何処か幸せそうな表情で地面に倒れた。
その状況を見て、
「えぇ? それが最後の一撃なの?」
「ていうかリアナ、ハルのこと『ハニー』って呼んでたね。『ダーリン』じゃないんだ」
「いやぁ、あいつならそう呼ばれるのもわかる気がするぜ」
と、彩織達がそんなことを言い合っていた。
すると、
「ぐ、グオオ……」
と、アッシュが弱々しく立ち上がった。それに続くように、アッシュの仲間達も弱々しく立ち上がった。
まだ来るのかと、彩織達が警戒すると、
「お、教えてくれ、白き悪魔よ……」
と、アッシュが苦しそうに口を開いた。
リアナはそれを聞いて、
「何?」
と、落ち着いた様子でそう返すと、
「こ……この『天使』となった我々を、ここまで酷い姿にしたその『強さ』、一体、どのようにして手に入れた?」
と、アッシュはやはり苦しそうな感じでそう尋ねてきた。
その質問を聞いて、リアナは「うーん」と考え込むと、
「ちょっと長くなるから、全部話すのは面倒だけど、まぁ敢えて言うなら……」
ーーゴクリ。
「『愛』だよ!」
『愛ぃ!?』
「そう、まさに『愛』のおかげで、私はこの『強さ』を手に入れることが出来たんだよ!」
と、リアナは自身の胸をバンと叩きながら、自信満々にそう答えた。
その答えを聞いて、開いた口が塞がらない周囲の人達。普通ならここで、
「ふ、ふざけるなぁ!」
と怒鳴り散らすだろう。
だが、
『……そうか、それなら仕方ないか』
と、アッシュ達は全員そう納得すると、
『我々の、完敗だ』
と、全員、その場に倒れ伏した。
その様子に、リアナを除いた人達は、
『えぇ? それで納得しちゃうのぉ?』
と、皆、なんとも言えない表情になった。
すると、
「……あれ?」
リアナの全身が淡い光に包まれた。
そして次の瞬間、長く伸びた白髪が短くなり、ぴょこんと出てきた狐の耳が消えて、代わりに普段の少し尖った耳が現れて、9本あった尻尾は、1本のみを残して全て消えた。
「アハハ、時間切れみたい……」
と、リアナが力無くその場に倒れようとしたその時、
「リアナ」
「え?」
いつの間にか側にいたアデレードに支えられて、リアナは倒れずに済んだ。
そして、
「お疲れ様」
とアデレードが穏やかな笑みを浮かべてそう言うと、
「エヘヘ、ありがとう」
と、リアナは笑顔でそう返した。それをきっかけに、彩織達も次々と2人に駆け寄った。
そんな状況の中、リアナは空を見上げて、
(ハル。水音。どうやらこっちは終わったみたい。そっちはどうかな?)
と、そんなことを考えていた。
そして、そう考えていた一方で、
「だ、駄目だ水音! 落ち着けぇ!」
「うわあああああっ! ぼ、僕は! 僕はぁあああああああっ!」
今、水音はとんでもないことになっていた。
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