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第14章 更なる「力」を求めて
第403話 リアナ編19 リアナの「更なる力」
しおりを挟む「試練」を終えたリアナと、「天使」となったアッシュと仲間達。
対峙する両者を、ギャレット、彩織、詩織、コール、ジェローム達が緊張した様子で見守る。そこへ、ヘリアテスやアデレード、シルビアにエルネスト、そして「獣人の修練場」に残っていた一部の村人も集まってきた。
睨み合うリアナとアッシュ達と、それを見守る者達。
その場がピリピリとした空気に包まれる中、リアナが口を開く。
「……ところで」
『?』
「あんた達、どちら様ですか?」
その瞬間、両者の間にヒュウと風が吹き抜けて、
『ズコーッ!』
と、リアナを除いた全員がずっこけた。
それからすぐに、
「お、オイオイ、リアナ嬢ちゃん! 攻撃しておいてそりゃねぇだろ!」
と、ガバッと起き上がったギャレットが怒鳴った。それに対してリアナは、
「いや、だって、ギャレットさんが危ないことになってたから、つい……」
と、視線をアッシュ達に向けたまま、気まずそうな感じで答えた。
それを聞いて、周囲の人達が「いや、『つい』って……」と突っ込みを入れようとしたが、それを遮るかのように、
「で、結局あいつらって何なの? 多分、敵だと思うんだけど」
と、リアナが尋ねてきた。
その質問に、彩織と詩織が答える。
「ほ、ほら、あの人だよ。私達がこの世界に召喚された日に、リアナちゃんとハル君がぶっ飛ばして……」
「で、その後帝国であたし達の親友星乃香に酷いことをして、ハルにアソコを燃やされた上にアマテラス様とヘファイストス様に裁かれた、セイクリア王国の騎士達だよ」
2人の言葉を聞いて、アッシュ達が「うぐ!」と呻いていると、リアナはハッとなって、
「え、あの人達なの!? でも、確かその人達って、ウォーリス帝国の牢屋の中じゃ……」
と、思い出したと同時にそう尋ねると、それにギャレットが答えた。
「なんでも、『神々』に助けられて、奴らに『天使』にされたんだそうだ。で、連中の目的は、リアナ嬢ちゃんをブッ殺して、春風を絶望させるんだとよ」
と、アッシュ達を見ながらそう説明すると、
「……へぇ、そうなんだ」
と、リアナはスゥっと無表情になり、
「じゃあ、やっぱり『敵』ってことでいいんだ」
と、静かにそう言い放った。その言葉に反応したのか、周囲の人達はビクッと震え上がった。
しかし、
「な、舐めるなよ悪魔がぁあああああああっ!」
と、アッシュは恐怖を消し去ろうとして叫んだ。
すると、焼かれていた白い翼が眩い光を放ち、みるみると焼かれた状態から、元の状態へと戻った。
その後、アッシュは光の槍を生み出し、それを手にとると、
「行くぞみんなぁ! 力を合わせて、あの『悪魔』を討ち滅ぼすんだ!」
と、声高々に叫んだ。
その叫びを聞いて、
『オオッ!』
と、アッシュの仲間達も声高々にそう返事をした。
そして、全員が叫び終わると、一斉にリアナに襲いかかった。
「あ、危ない……!」
と彩織が叫ぼうとしたが、
「大丈夫」
と、リアナは落ち着いた口調でそう返すと、その手に持つ燃え盛る薔薇をグッと握り、自身もアッシュ達のもとへ駆け出した。それも、フラフラと動き回らず、ただ素早く、真っ直ぐに。
そして、アッシュ達の懐に辿り着く。
『は、早い……!』
驚くアッシュ達だが、リアナはそれに構わず、握っていた燃え盛る薔薇を思いっきり振るった。
『グアアアアアアアッ!』
その衝撃があまりにも強かったのか、アッシュ達は何も出来ずに後に吹っ飛ばされたが、すぐに体勢を変えて地面に着地する。
そして、アッシュ達は全員また戦闘体勢になったが、そんな彼らよりも先に、
「いっけぇえええええええっ!」
と、リアナは彼らに向かって無数の火の玉を放った。
『ウグォオオオオオオオッ!』
こちらも一撃が大きかったのか、アッシュ達はまた吹っ飛ばされた。
1対多数だというのに、状況はリアナの方が圧倒的に優勢になっていたので、
「ス、スゲェ……」
と、それを見ていたギャレットはそう小さく呟いた。それに続くように、
「アレ、本当にリアナちゃんなの?」
「な、なんか滅茶苦茶強くなってない?」
と、彩織と詩織もそう呟くと、
「そう、アレがあの子が手に入れた、『更なる力』なのです」
と、それまで黙ってリアナを見守っていたヘリアテスがそう答えた。
その答えに彩織達が「え?」となっていると、
「これまでリアナは、自分の中にある『獣人の力』と『妖精の力』、どちらか一方しか使えませんでした。それは、あの子が持っている『スキル』が、その力を押さえ込んでいるというのもあるでしょう」
『……』
「ですが今回の『試練』によって、今、あの子はスキルに頼ることなく、ああして獣人の力と妖精の力、両方同時に使えるようになりました。あの『姿』は、その為の『証』でもあるのです」
「両方同時に……だと?」
「ええ、獣人の高い身体能力と、妖精の強大な魔力を扱うことが出来るその姿、名付けるなら、『混合形態』」
と、ヘリアテスがそう説明する中、リアナはというと、その姿ーー「混合形態」の力をフルに使って、アッシュ達を圧倒していった。
ある者には武器や体術を駆使して、ある者には強大な魔法でと、1人、また1人とアッシュの仲間達を倒した。当然、命までは奪ってはいない。
「そ、そんな……馬鹿な。『天使』となった我らが、こんな……」
目の前で起きてる出来事に、アッシュはショックを受けていた。当然だろう、「天使」になって、自分達は更に強くなったと思ってるのに、こうもあっさりと敗北しているのだから。
ただ、その前のギャレット達にも、あまり有利とは言えない状況だったのだが。
そして、最後の仲間が倒され、残りがアッシュだけになると、
「……確か、アッシュだったよね?」
リアナは燃え盛る薔薇の切っ先をアッシュに向けて、
「私を殺して、ハルを絶望させるんだっけ?」
と、ニヤリと笑いながら尋ねた。
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